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第十三話 検索中

 賢者の石とは何か?


 数日たっても僕は答えを見つけられないでいた。


 これは少し考え方を変えてみたほうがいいかもしれない。賢者の石がどんなものであるかということより、夢前さんがどうしてこんなお題を出したのか、夢前さんにとっての賢者の石とはなんなのかという観点から考えてみるんだ。


 友人たちはムリゲーだというけれど、夢前さんは答えがないお題を出したわけじゃないと思う。それはお題を出した時の真剣な表情を見れば分かる。答えはあるはずなんだ。そしてそのヒントも。


「ヒント………」


 口に出した途端、頭の中に閃きが走った気がした。賢者の石という単語にとらわれすぎて今まで僕がしていなかったこと。


 僕はもう一度パソコンに改めて向き合い、キーボードをたたく。


「賢者の石」


 スペースキーを押す。


「………エリシア」


 駄目だ。なんかよくわからんRPGのキャラが出てきた。人物名では検索しにくいか。


 ………僕が今探そうとしているのはいわば夢前さんの原点、もっと砕けた言葉で言えば元ネタだった。


 夢前さんのあの四重人格設定の元ネタだ。あれがもし既存の作品から出てきたものなら、そこに夢前さんにとっての賢者の石がどんなものかのヒントがあるかも知れない。


 もちろん全て夢前さんの創作である可能性もあるけど、もう僕は藁にもすがる気持ちだった。

 祈るように画面を見つめ検索を続けていく。


「賢者の石」


 エリシアをバックスペースキーで消去し、しばし思案する。あの設定において夢前さんはどんな役回りだったか。


「………お姫様」


 その単語を打ち込んだ瞬間、一つの作品名がヒットした。


『孤島の王女と賢者の石』


「ふむ………」


 とりあえず今まで検索したことのない作品であることは確かだ。内容を見てみることにする。wikiもあるみたいだね。


 とりあえず僕はwikiのページに飛んでみる。


 なになに? この作品は絵本なのか。


 さらに登場人物という項目があったのでクリックしてみた。すると、


『エリシア』

 賢者の石によって呼び出された高潔な女性騎士。剣術を得意としその力で王女を守る。非常に生真面目な性格であるため融通が利かない部分があり、同じ三騎士のダリアによくからかわれている。


「これだ!!」


 思わず椅子から立ち上がり叫んでいた。直後にここが兄の部屋であることを思い出して「ごっ、ごめん兄さん大声出して」と謝るが、兄は膝に乗せたノーパソから顔を上げてにっこり微笑んだだけだった。やだ兄さん優しい。


 パソコンに戻ってさらに人物紹介を読んでいく。そこに並ぶ名前。ダリア、エノク。

 もう間違いない。この作品が夢前さんの元ネタだ。


 早速アマゾンのページに飛んで孤島の王女と賢者の石という絵本を探してみた。新品は無かったが、古本の在庫を一冊発見。兄さんに絵本を購入すること、代金は後で払うことを告げてから即座にカートに入れる。クレジットカード払いで入金。到着は二日後になるらしい。


 よし、これであとは絵本の到着を待つばかりだな。

 これが第三の試練を突破する糸口になればいいんだけど………。



「郵便でーす」


 二日後アマゾンから小包が届いた。


 僕は包装を解くのももどかしい気持ちで小包を開け、中から絵本を取り出した。


 孤島の王女と賢者の石。タイトル間違いなし。一応作者名もチェック。これも間違いなし。ちなみに代金もすでに兄さんに渡してある。


 自室に運んでじっくり読み込む。


 なるほどそんなに三騎士人格の夢前さんと接したわけではないけど、確かに彼女はこの絵本の影響を受けているようだ。


 でも何度読んでもこれだけでは賢者の石が何であるのか分からなかった。


 ただおぼろげに見えてきたものはある。このピンボケの写真のような想像をさらに鮮明にするためには………。


「これはしょうがないかな………」


 僕は独り呟き覚悟を決めた。できれば使いたくなかった最終手段。


 すなわち家宅捜査である。





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