六話
部屋は静まり返った。
処刑を阻止するということは、つまり将軍の命令に背くということだ。
計画がバレてしまえば、罰を与えられるのは確実だろう。
しばらくの沈黙を破ったのは海蘭だった。
「俺はずっとアンタについて行くって決めてんだ。協力するぜ。」
茅の前へ行き跪く海蘭に、茅は笑いかけた。
「君ならそう言ってくれると信じていたよ、海蘭。」
行き場を無くし、ただ死ぬことを待つだけだった海蘭を救ったのは茅だった。彼に命を救われた時から、海蘭は一生彼について行くのだと決めていた。
「私も乗るわよ。茅のことだから上手くやってくれるだろうし。」
「ああ、茅の頼みだしな。俺も乗ろう。」
海蘭に続き、菖蒲と木蓮も声を上げた。
二人を見つめ、茅は笑う。
「ありがとう、木蓮、菖蒲。」
礼を言った茅は、まだ何も言わない柊をそっと見た。
茅と目が合った柊は、困ったように笑う。
「僕も乗るよ。」
茅が安心したように息を吐く。そんな茅を見て、柊はさらに笑った。
二人を見ていた青桐が突然声を上げる。
「お、俺ものるぜ!」
柊から笑顔が消えた。
青桐の肩が揺れる。
「ダメだ、青桐。君がこの計画に参加することは僕が許さない。」
「…は?何でだよ柊!」
柊は青桐を正面から見つめた。
それは、柊が青桐を叱る時によくする行動で、青桐は息を飲んだ。
「いいかい。茅が上手くやってくれるとはいえ、絶対に将軍様にバレないとは限らない。
君はまだ子供なんだ。こんな危険なことさせるわけにはいかない。
棗、君もだ。君も、青桐よりは年上だとしても子供なんだから。」
心の中で、自分も計画に乗ろうと考えていた棗は肩を揺らした。
柊の言っていることは間違っていない。
それでも納得のいかない青桐は、引き下がろうとしなかった。
「俺は確かにまだ16だけど、この店の用心棒なんだぜ?アンタらを守るのが仕事なんだろ!?だったら…」
「君は人間なんだ!僕と違う、お金さえあれば人間としての権利を持てる!それがどれだけ幸せなことか、君はわかってない!この計画がバレてしまえば、きっと君は一生僕と同じ汚人だ。僕は君に、僕と同じになって欲しくない…青桐…。棗は体を売ってしまっているから、もう人としての権利を持てないけど、それでも幼い君が傷つくのは耐えられない。」
青桐の言葉を遮るようにはなった柊の言葉は、請願だった。
棗と青桐を大切に思っているからこその言葉。青桐はそうとわかっていても、引き下がりたくなかった。
「じゃあ…じゃあ木蓮はなんなんだよ!木蓮だって体を売ってねぇだろ!人としての権利だって持てるんじゃねぇのかよ!なんで木蓮はよくて、俺は駄目なんだよ!」
「…!木蓮は…!」
「柊、俺が言う。」
言葉がつまってしまった柊の代わりに、木蓮が前出てきた。
そっと、青桐の頭を撫で目線を合わせる。少し動揺していた青桐は、木蓮の優しげな瞳を見て、落ち着きを取り戻した。
「いいか、青桐。俺はお前とは違う。もう人としての権利を持つことは出来ない。体を売っていなくてもな。
俺も柊と同じで、お前と棗には危険なことはして欲しくない。だけど、仲間はずれは嫌だよな。だから、茅にお願いして万が一バレてもお咎めのないような事をしてもらおう。な?いいよな?茅。」
木蓮の問いに茅は頷く。
その様子を見た木蓮は、よかったなと青桐に笑いかけた。
ずっと、青桐の横で息を詰めていた棗も安心して息を吐く。
「柊、これでいいだろ?」
「……うん。ごめんね、木蓮。」
「いいって。お前の気持ちもよくわかるさ。」
木蓮が元の位置に戻ると、部屋に再び平穏が戻った。
待ってましたとばかりに、茅が口を開く。
「ここにいる全員が協力者となったわけだ。
計画を説明しよう。くれぐれも口外しないように。」
皆が茅の話に耳を傾けた。




