あしおと
「あの子、幽霊みたい。」
生理前になると下っ腹がズンズンと重く痛む。高校に入って更にひどくなるようだ。
保健室でバファリンを貰って飲み、1時間眠っただけで私は死人扱いだ。
机の上に花が飾ってあったりして。教室の入り口で入るタイミングを逃して突っ立っていると、
「川原、邪魔。」
すぐ後ろに両手にプリントを抱えた委員長が立っていた。いつも通り無表情な彼に慌てて道を譲るが、
委員長は動かずに目線だけで開けろと訴えてくる。そうか、両手がふさがってるんだった。
「ああ、ごめん」
そう言って引き戸を開けると教室のざわめきの中、入り口近くの席で3人の女子がこちらに気づきもせず話しているのが目に入ってきた。同じクラスではあるけれど特に仲が良い訳ではない女の子たち。
会話はすでに、隣のクラスの女子に移っている。
大した意味などないのかもしれない。でも、刺さる、言葉が。
治まったはずの痛みがぶり返した気がする。遠くからズンズンと、足音のように。
突然、私の視界が黒い物体で遮られた。男子の制服。委員長のことすっかり忘れてた。
横を通り過ぎる一瞬に、目が合う。やけにゆっくりと聞こえた気がした。
「気にすんな」
低い声が下っ腹に響く。あれ、委員長ってこんなに声低かったっけ?
思わずその背中を目で追ってしまう。その日からずっと。
初めての小説投稿で緊張しております。
ここまで読んで下さりありがとうございました。