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0:ある少女の一幕

色々な小説を読むうちに、自分でも書いてみたいと思いまして、筆を取りました。拙いですが、よろしくお願い致します。

 瓦礫と灰で覆われた床。半壊した壁。面積の半分は穴の空いている天井を仰げば、途切れ途切れの空と剥き出しの煤けた梁が見える。私が少し動けば埃が舞い、室内の空気と混じり合う。


 何処かの廃墟。名も知らない教会。崩れた街の中、かろうじて原型を留めていたこの建物に、私はふらりと足を踏み入れた。


 死体がないことだけは幸いだった。そんな所で、祈りたくはない。それなら、その骸に対してまず祈りを捧げるべきであるし、でも、私は自分のことで精一杯で。他のヒトに気を遣える程、私の心に余裕はなかったから。


 何人も、何十人も、何百人も。私の仲間は死んでゆく。

 私は彼らの想いを背負い、志を継ぎ、戦わなければならない。それは望まれたことでもあり、また、私が自ら決めたことでもある。


 それでも。


「女神様、私はもうダメなのかもしれません」


 こんなこと、仲間の前ではとても言えない。


 入口から続く乱れ倒れた長椅子の群れの、その奥側。ぽつんと置かれた教台と女神様の像の亡骸に向かって、私は歩く。半身が崩れ、立っていることが不思議なほど無惨な姿の女神様は、それでもなお、微笑んでいた。羨ましい。そんなに強くあれたら、どれだけ楽になるだろう。膝を落とし、私は跪いた。もう、自分で立つことにも疲れた。


「女神様。私は、私は――」


 情けない。涙が止まらない。そんな自分に少しでも抵抗したくて、きゅっと目を閉じる。

無駄だった。後ろ向きの感情ばかりが頭の中を蹂躙して、私のちっぽけな誇りや使命感は目からどんどん溶け出ていた。


 私は無力。例え皆から支えられていようと、そんな支えの上に立つ私はこんなにも矮小な一人の人間でしかないのだから。単純に悔しかった。そんな自分が、ではなくて、それを理解してしまっている自分が。


「……助けて、ください」


 理性で留めていた筈の感情が堰を切ったように流れ出す。もう、止められなかった。


 本当は知っている。路を切り拓くのは、祈りみたいな他人任せの儀式なんかじゃなくて、自分の行動と強いチカラ。知らない訳がない。だけど、理屈じゃないでしょう? 何かの戯曲なら、こんな時女神様が手を差し伸べてくれるのかもしれないけれど、でも、ここは現実で。女神様の像を見上げても、やっぱり何も変わらなかった。



   ◆ ◆ ◆



 そして、ここで祈っていてもやっぱり何も変わらない。それに気付くまでどれだけの間こうしていただろう。現状を客観視して、どんどん気が滅入ってしまうだけなのに。


「ふぅ……」


 裾で涙を拭いて、ゆっくりと立ち上がる。埃で服も汚れていたから、目の周りが黒くなってしまったかもしれない。でも、赤くなった目を隠すにはちょうどいいのかな。そんなことを考えると、少しだけ気が楽になったような気がした。弱音を吐くだけ吐いたからかもしれないけれど。


「ありがとうございました」


 どんなに私が泣いていても、女神様は手を差し伸べてはくれない。でも、微笑んでいてはくれた。それがとても嬉しくて、私は無意識にお礼を述べていた。


 行くしかない。やるしかないんだ。


 悩んでいたって、いつかはその時が来る。それを選んだのは自分なのだから。悩んでもしょうがないのだと、今更ながらに気付いた。晴れやか、とまでは言えないけれど、随分気持ちが落ち着いた。何一つ変わらない現状に、ほんの少し風穴があいたような、そんな感じがする。


 もう一度女神様にお礼を述べて、さらに一礼。欲を言えば誰かに言いつけて修繕したいところだけれど、そんな余裕もない。これだけで許していただくことにする。


いざという時は頼るくせして、解決した途端にこれかと、私ですら思ってしまう。女神様はたいそうご立腹かもしれない。ちょっぴり罪悪感を抱きながら、私は入口まで続く瓦礫の路を歩く。きっと、女神様はそれでも微笑んでいるんだろう。




 そんなことを考えていたものだから、私はこれが、女神様が下した天罰なのでは、と本気で思ってしまった。


 突然の出来事だった。


 女神様、ではなく穴の空いた天井からまばゆいばかりの光が溢れ出し、音もなく室内を覆いつくしたのだ。雪よりもなお白く、どんな宝石にも勝る気品を備えた白光は、あっという間に私の視界を奪い取ってしまった。


 私は、只々祈る。


 これが、キッカケになれば、と。

 破滅への予兆ではなく、希望への光であれ、とーー。



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