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第六話 【夜の夢】

私用で忙しく3カ月近く空けてしまいました。

申し訳ございません。


物語もクライマックスです。






-----もう一度だけ、逢いたかったんです--------



++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++



「お祭りですか?」


「あぁ、藍夜祭といってね。青い月が欠けるその瞬間を見届ける祭りなんだ。

 その祭りで、君たちの新作ケーキの試食会を開くからね」



オーナーは作業をしながら、弟子であり右腕であるマカとラントに話す。


「よーっしゃ!頑張るぞ」


張りきるラントをよそにマカの表情は曇る。



「マカ?元気がないね、なにか悩みごとかい?」



「あの・・オーナー?その藍夜祭・・月が消えるまで開かれてるんですよね。」



「あぁ、陽が昇るまで行われるお祭りだからね。」



「じゃぁ・・町中に灯りが・・」



「何の話だよマカ」


ラントが首をかしげる。



マカはハッと我に返り、ぶんぶんと首を横に振る。



「何でもありません、新作ケーキ・・頑張って完成させなくちゃ」



オーナーとラントにはそういって誤魔化したが、マカの頭の中は


ある男のことでいっぱいだった。





----藍夜祭2日前--------------------------



「うん、これでいこう。よく頑張ったね2人とも」



「「やったぁ~~」」




ついにマカとラントの新作ケーキが完成した。



あとは藍夜祭の試食会に出してから店に並べられる。



「やったなマカ!」


「ラントぉ~」



マカは涙目でラントに抱きついた。



「っ・・ちょ・・マカ」


ラントは驚き、思わず両手を振り上げて硬直。


「やっと完成したよ~2人で本当に試行錯誤して何度も何度も頑張って頑張って」


「う・・うん」


「やったねラント~嬉しい~」


「マ・・マカ」


ラントはそっとマカの肩に触れようとする。




(あ・・あと少しで・・)




あと数センチで触れようとしたその時・・




「よし!気持ちを切り替えて、明日の仕込みしよっかラント!」


マカは晴れやかな表情で、ラントからさっと離れた。


「おっ・・お、おう・・」



ラントは茫然として両手をさっと降ろし、返事をする。






そして明日の仕込みも終わり、2人は仕事を終え帰宅の準備を始める。



「なぁ、マカ?俺聞きたいことあったんだ」


「なぁに?」


「その・・・好きな人、いるのか?」



「え・・」



「いるんだろ、誰か好きな人」



ラントはいたって冷静にマカに問い質す。



「・・・うん、いたよ?」



「いたよって・・」


マカは優しく微笑んだ。


「フラれちゃったんだ。失恋ってやつ?だから、もういいの。

 向こうも、私ともう逢いたくなんて・・ないだろうから」



「・・・そっか」


「で?私にそれ聞いてどうするつもりだったのよ、ラントくん?」



マカはラントに近寄って悪戯に笑った。


「っ・・気っ、気になっただけだよ!なんか妙に吹っ切れたみたいに見えたから・・だから」


「心配してくれたんだ、ありがとっ」


「っ・・」


ラントは顔を真っ赤にして俯く。


「もう大丈夫だから。じゃぁ先帰るね。明日の藍夜祭の準備、遅刻するんじゃないわよ」


「分かってるっつの!」



マカは荷物を持ち、早々と帰って行った。









店の灯りを全て消し終え、ラントも帰宅しようと店の門に向かうと


マカを見つめる人影が。



「誰だよアンタ」


不審に思いラントは人影に近づき声をかける。


「・・・・」


その人影はゆっくりと振り返った。



「マ・・マカの事見てただろ!アンタ何者だよ」



「お化け・・とでも言っておきましょうか」



暗くて姿がよく見えないが、男性だということは分かった。


口調から、微笑んでいるようにラントには見えた。


「おっ・・お化けがマカに何の用だ」


ラントは警戒しながらも男に問う。


「これといった用はございません、ただ・・元気に過ごしているか、気がかりだったんです」


そうポツリと呟くと、またマカの帰路を見つめた。


見つめたまま、男は静かにラントに問いかける。


「彼女は・・マカさんは笑っていますか?」


「は!?・・あぁ、ちゃんと笑ってるよ」


「泣いたり、していませんか?」


「大丈夫だよ」


男は再びラントと向き合う。



「貴方は、彼女と親しい仲でいらっしゃるんですよね?」


「えっ・・あ・・まぁ同僚だけど」


「愛していらっしゃるんでしょう?」


男は優しく問いかけた。


「しょっ・・初対面でなんなんだよアンタ」



「申し訳ありません」


「・・マカは俺の事なんて・・なんとも思っちゃいないよ」


「そんなこと」


「アイツ・・最近まで好きな人いたんだってさ。きっとまだ忘れられてないんだよ。

 忘れたなんて笑ってたけど。あんなの意地張ってるだけだから」



「よく・・見ていらっしゃるんですね。マカさんのこと」


ラントはまた顔を赤くする。


「ご安心ください、彼女はまだ、夢から覚めていないだけです。」


「夢・・」



男は寂しそうに呟いた。



「そう、青い夜の夢。それも月が消えれば終わる。彼女もすぐに忘れてしまう。

 長い夜の夢だったんだと思う時がすぐにきます。」


「青い夜の・・夢?」


「もう一度だけ、逢いたかったんです。でも、出来なかった。」



「なぁアンタ一体」


そう問い質そうとした瞬間、突風がラントに吹き付けた。


思わず目を閉じたラント。


再び目を開いた時には、もう男は姿を消していた。


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