あの時のあいつ
「山手線パーンチ!」
「ガガガガガガ!(人間ってこんな強かったけ?)」
俺は霧雨大樹、昔から憧れていた『山手線マン』というヒーローに憧れて深い森林の中で右と左の両方の拳で幅二メートルくらい有る大木相手に修行をしていた。そしてその時に偶然、身長が二十mくらいありそうな鋼鉄の巨人のゴーレムと戦い、あろうことかその機体を一撃で粉砕してしまった男だ。あ、やべ、動物愛護団体に見つかったら怒られるな。今日もいい汗かいたなぁ。さっきの奴自身の縄張りに侵入されたことに対しての防衛反応か?。あんなのも居るん何てな......。
「やっとゴーレムを殺せるくらい強くなったのか......」
個人的なヒーロー活動を初めて五年か、周りは結婚とかしてんのに俺だけまだ子供頃の夢を追っている。自分の想像していた怪物とは違うけど。数年前に異世界の扉が開いて大勢惨殺された。幸い自衛隊とか国連軍が来て解決したけど。何やってんだろうな。いい歳したおっさんが。さて、帰るか、ごみはきちんとかたずけないとな。さて今日の夕飯は何にしようか。
「あの、私を助けてくれた方ですよね?」
「えっとー貴方は?」
「申し遅れました。私、『自衛隊怪生物対策班』引鉄美咲です」
「あぁ、あの時かぁ」
「忘れてしまいました?」
「気が付いたらテントの中に居たので......」
「お名前は?」
「霧雨大樹です」
「霧雨さん、今日は伝えたい事が有ってきました」
「伝えたい事?」
「私と結婚を前提に付合ってください!」
目の前には白銀のショートカットヘア若い自衛官の女性がいきなり俺に告白された。昔はポニーテールだったような......。というわけで成り行きで同棲することになった。異世界から『魔力』ってのが流れたことで俺以外の皆アニメみたいな髪色になってるな。「ヒーローは独身で無ければいけない」それがおれの座右の銘だった。結婚は薄々考えていたけどこの人滅茶苦茶料理上手いからなぁ。けど頼りっぱなしも良くないと思い、今の職場を辞め就職活動を再開した。
「カップラーメンだけ食べちゃ駄目!」
「俺の独身時代の楽しみだぞ...」
「体よく壊さなかったな......」
数週間前まで優しくなったのに冷たくなったなぁ美咲。これがいわゆるツンデレって奴か?そうだ、最近『超人協会』ってのが出来るらしい。え、給料出るの?。そこは無給とかじゃないの?。ヒーローもお金貰う時代なのか?。そこは後で交渉してみるか。けど時給二〇〇〇円かぁ。今のバイトよりも高いじゃないか。悩むなぁ。
「何をそんなに悩んでるの?」
「このパンフレットにさ『時給二〇〇〇円』てあるけど貰うべきかな?」
「貴方はどうしたいの?」
「ヒーローって報酬無しでボランティアで悪い奴をやっつけるのが仕事なんだよ。俺が時代遅れなのか?」
「時代遅れかどうかは分からないよ、それに一般企業じゃ人でしょ?」
「まぁ、一応に公務員扱いだし...就職じゃなくて、入ったら交渉してくるよ」
「そうだね子供の未来もあるし」
「え?子供って何?」
「私のお腹の中に貴方との子供居るんだよ」
「嘘だろぉぉぉぉぉ!」
「よろしくね、貴方」
もしかして、あの時か?大好物のカレーライスを食べてる途中に急に眠くなってた。朝起きたら布団中ですっぽんぽんの素っ裸の美咲が何故か居た。睡眠薬か?それとも魔術か?
「私も転職しよっかな?」
「転職って『超人協会』に?」
「そうすれば、貴方の給料養育費に回せるでしょ?」
「もう、全部養育費に回していいよ......」
そして、翌朝『超人協会』の試験会場に歩いて向かった。想像以上の行列が出来ていて驚いていた。けど、何か皆柄悪そうだなぁ。俺より体格良い奴しかいないじゃないか......。真後ろにスーツを着た美咲が並んでいた。こいつも就職活動か。時給二〇〇〇円どうしようかな。そうか、自分の欲望のためじゃなくて子供の未来に使えばいいんだ!
「おい、場所違うぞ」
「私は別の所で試験受けるから、頑張ってね」
「お、おう」
同じ職場でも部署によって試験会場が違う感じかな?最初は筆記試験か、一応通信制の大学にいってるけど不安だなぁと思って問題用紙を見てみたらたった三つしか答える項目が無く、内容は小学生でも分かる内容だった。続いて身体能力検査では水泳に一〇式戦車(自衛隊)持ち上げ、パンチの威力などをやって周りの挑戦者が怯えた表情で帰ってしまった。
「結果どうだった?」
「何か合格できたよ」
「そう、貴方の事皆噂してたよ」
「噂?どんなだ?」
「期待の超新人って」
「どういうこと?」
「戦車を片腕で持ち上げたでしょ?」
「駄目だったかな?」
「一体どんなトレーニングしたらそんな怪力得られるの?」
「それは...ところで美咲合格か?」
「一週間後に結果が届くって」
そして一週間後美咲の試験の結果が届き見てみたら合格判定だった。身体能力はともかく、筆記は俺より高いんだなぁ。俺も負けてられないな。
「合格おめでとう、お互い頑張ろうな!」




