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-18- 転生

朝山太陽は、スマートフォンの画面を眺めながら舌打ちした。


「……マジかよ」


ニュース速報の文字が、画面いっぱいに広がっている。


〈元総理大臣、応援演説中に銃撃され死亡〉

〈容疑者は現行犯逮捕〉

〈供述「河合教の教えに従った」〉


河合教。

その言葉を見た瞬間、胸の奥がわずかにざわついた。


——あの時の。


ファミレスでの“仕事”。

女が苦しんでいるのを、ただ眺めていただけの夜。

自分は何もしていないはずなのに、確かにそこに居た。


「……すげえな」


朝山はそう呟いた。


政治家を殺した。

それだけ聞けば、普通なら恐ろしい話のはずだった。

だが朝山の胸に浮かんだのは、嫌悪でも恐怖でもなかった。


——やったじゃん。


そんな感情だった。


政治家。

テレビの向こうで綺麗事を言い、裏で金を回し、

自分たちみたいな人間を置き去りにする存在。


そいつを殺した。

しかも「教義に従った」だなんて。


朝山は、いつの間にか検索欄に「河合教」と打ち込んでいた。


いくつかのまとめサイト、過去ログ、断片的な書き込み。

読んでいくうちに、ある一文が目に留まった。


〈強きを力で挫き、弱きを力で助ける〉


「……これ」


朝山は、その言葉を何度も読み返した。


強き。

消費者金融。

取り立ての電話。

逃げ場のない利息。

どれだけ働いても減らない借金。


弱き。

自分だ。


女と遊んで、金を使って、どうしようもない人生を送ってきた。

それでも、ここまで追い詰められるほどの罰を受けるようなことをした覚えはない。


——なのに。


「……俺、弱い側じゃん」


朝山は、そう思った。


誰かにそう言ってほしかった言葉だった。

自分はクズかもしれないが、踏み潰されていい存在じゃない、と。


河合教は、そう言ってくれているように見えた。


政治家を殺した男は、きっと英雄なんだ。

強い者に刃向かった、正義の実行者。


そう考えると、胸が妙に軽くなった。


「……入るか」


誰に言うでもなく、朝山は呟いた。


世界は変わらない。

自分も変わらない。


でも、何かに“属する”ことで、

自分の人生に意味が生まれる気がした。


それだけで、十分だった。

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