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完璧侯爵様、恋するとお腹が痛いんです —恋すると腹がキリキリする侯爵様の100連敗—  作者: ヨーヨー
第10章 魔法使い ティナ

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93/100

第93話 勇者一行、フェス開催!?

お読みいただきありがとうございます!

今回の物語は――まさかの「悪の侯爵退治フェス開催」!?

顔が怖いだけで悪扱いされ続けるライが、ついに町ぐるみの誤解イベントに巻き込まれます。

勇者はマイクで叫び、侍女は屋台を出そうとし、執事は平然と紅茶を飲む。

一方で、魔法使いティナの胸の奥では、小さな“何か”が動きはじめる……。


「続きが気になる!」「この騒がしさがクセになる!」と思ってもらえたら、

ぜひブックマークしておいてください! 更新のたびにすぐ読めますし、

作者の“やる気メーター”も一気にMAXになります。


それでは――誤解と笑いとちょっぴり恋の香り漂う、“正義フェス”の開幕です!

朝の王都は、いつもよりもやけに騒がしかった。

パン屋の前には行列、広場では太鼓の音、空には「正義フェス開催!」の旗が舞っている。


 


「……フェス?」


 


グランツ侯爵邸の玄関前で、ライオネルは首をかしげた。

手には数枚のポスター。どれもやたら派手で、赤文字でこう書かれている。


 


> 『悪の侯爵退治フェス!

参加無料! 正義ポイント2倍! 勇者レオン主催!』




 


横にはライの似顔絵――いや、悪のボスみたいに角と黒マントが描かれていた。

目の下にはなぜかクマ。しかもポスターのすみに小さく「悪そう」とまで書いてある。


 


「……僕、今日も安定して誤解されてるな」


 


後ろから、バルドが静かに現れた。


「若様。印刷技術の進歩とは恐ろしいものでございますな。顔が勝手に“デーモン仕様”に。」


「悪魔じゃない。“経済で街を救った人”だ。」


「ですが民はもう“フェス”に夢中でございます。いっそ参加してしまっては?」


「参加する理由がない。」


「見た目の改善PRでございます。」


「……顔の改善は無理だろう。」


 


 バルドは「ごもっとも」と小さくうなずいた。


 


 そこへ、いつものようにミーナがドタドタと駆けてきた。

「ライ様ぁー! 市場がすごいことになってます! 屋台がいっぱいで! あと勇者レオン様がマイクみたいなの持って演説してます!!」


「マイク?」


「なんか魔法で声がでかくなる石です! “聞けぇぇ!正義の民よぉぉ!”って!!」


 


 ライとバルドの視線が、同時に遠くの広場へ向く。

そこには、赤マントをなびかせた青年――勇者レオンがいた。

目をキラキラさせながら、両手を広げている。


 


「聞け! 悪の侯爵ライオネルを討つ日が来た!

だが暴力ではなく、フェスで決着をつける!

我こそは正義と思う者は、今ここに集えぇぇ!!」


 


 周囲から「おおー!」と歓声が上がる。

子どもたちはワクワク、商人たちは商売チャンスとばかりに準備を始めていた。


 


 ミーナが目を輝かせて言った。


「お祭りです! お祭りですよライ様! 屋台出しましょう!」


「出さない。」


「グランツ侯爵家名物“恋腹まんじゅう”とか!」


「そんなまんじゅうは存在しない。」


「じゃあ“完璧クッキー”!」


「もっと存在しない。」


 


 ミーナがしょんぼりしていると、バルドがポスターをもう一枚持ってきた。

「若様。裏面をご覧ください。」


 


 裏には――


『第一競技:悪を見抜け! “どっちが悪人”クイズ』

『第二競技:闇を暴け! 影踏み合戦!』

『第三競技:悪をこらしめろ! 水風船バトル!』




 


「……これは、ただの町内運動会だな。」


「はい。悪の要素はタイトルだけでございます。」


「民が楽しんでいるなら、それでいい。問題は、勝手に僕の顔が看板になっていることだ。」


「若様、角が見事に似合っておられます。」


「褒めてないだろう。」


 


 そのとき、また広場からレオンの声が響いた。


「まずは“悪を見抜けクイズ”だぁぁ! こちらに映る三つの顔のうち、悪いのはどれ!?

 一つ、子犬を助けたおじさん! 二つ、笑顔の商人! 三つ……こいつだ! 悪の侯爵ライオネル!!」


 


「また僕か。」


 


 観客の子どもたちが首をかしげる。


「でもこの人、悪い顔してるけど、去年うちの村の橋直してくれたよ?」

「おれもだ!あの人のパン配りのとき、笑ってた!」

「……笑ってたかは分かんないけど!」


 


 レオンが一瞬たじろぐ。

ミリアがすかさずフォローする。


「れ、レオン様! あれは“悪の笑み”です! きっと!」


「そ、そうか! 笑ってるだけで悪いとは……! やはり深い!」


「いや、浅いだろ。」とライ。


 


 バルドが紅茶を飲みながらつぶやく。


「若様、悪評という名の人気投票が始まりましたな。おや、一位になりそうですぞ」


「……そう聞くと悲しいな。」


 


 やがて、第二競技「影踏み合戦」が始まる。

ルールは簡単――相手の影を踏んだら勝ち。

ただし今回は“悪の影”を探す、という無茶なテーマがついていた。


 


 ライは安全面が気になり、こっそり広場に魔法陣を展開した。

転倒防止と、ぶつかったときの衝撃をやわらげる小規模魔法だ。

(これでケガは防げる。)


 


 その光景を見たレオンが、青ざめた。


「な、なんだあの結界!? 悪の加護が広場を包んでいる!」


「いや、安全対策だ。」


「悪の安全対策!? 新しい!」


 


 ミリアは手を組んで叫ぶ。


「レオン様! やっぱりあの人、悪の貴族です! 安全すら支配してます!!」


「支配って何だ!」


 


 ミーナが旗を持って飛び出した。


「がんばれライ様ー! 安全の魔王ー!!」


「なんだそれは…一番ひどいぞ…」


 


 観客の子どもたちは笑いながら遊び、

ライの防御魔法で誰もケガをしなかった。


 


 ティナが人混みの中で、小さくつぶやく。


「……なんか、平和すぎない?」


 


 彼女の視線の先では、ライが子どもの靴ひもを直してやっていた。

その姿を見た瞬間、ティナは少しだけ笑った。

ライも気づいて、ほんの一瞬だけ視線が交わる。


 


 懐中時計の針が――“チリッ”と音を立てて動いた。

ミーナが横から望遠鏡でのぞき込み、声を上げる。


「ライ様、恋腹メーター1メモリ上昇ですー!」


「実況するな!」


 


 モフドラがライのお腹の上で「ぷしゅ〜」と湯気を吐いた。

……朝の空気に、その湯気だけが静かに漂っていた。


夕方。広場の熱気は最高潮だった。

 屋台の匂い、子どもたちの笑い声、そして――魔法スピーカーから響くレオンの絶叫。


 


「ついに最終競技だぁぁぁ!! 悪の侯爵を――裁けッ!!」


 


 ざわめく観客たち。

 広場中央には即席の木製ステージ。

 その上に立たされたのは、もちろんライオネルだった。


 


「……なぜ僕が被告席にいるんだ?」


 


 ライの手にはなぜか“紙の鎖”が巻かれている。

 フェス用の安全アイテムだが、見た目だけは完全に囚人。


 


「若様、堂々たる悪人ぶりでございます」とバルド。

「褒め言葉じゃないぞ。」


 


 ステージ前ではレオンが胸を張っていた。

 その隣には補佐役のミリア。

 二人は観客に向けて大げさにポーズを取る。


 


「見よ民よ! この男こそ、笑顔の裏に悪を隠す侯爵だ!」

「証拠はこちらです!」とミリアが掲げたのは――帳簿だった。


 


 ライは一瞬で見覚えを悟る。

(あれは……領地支援金の会計帳簿だ。昨日、広場の募金箱に寄付した分だな。)


 


「その紙に何が書かれているのか、読んでみろ」とライ。


 


 ミリアがドヤ顔で読み上げる。

「“支出:孤児院支援、橋修繕費、農村の井戸整備金――”……あれ? 全部いいこと書いてあります?」


「はい、良いことしかしておりませんな」とバルド。

「若様、犯罪の才能も欠落しておられる。」


「誇らしい欠落だ。」


 


 レオンが慌てて次の証拠を持ち出す。

「じゃ、じゃあ次はこれだ! “魔力反応の記録書”! 彼は常に強力な魔法を放っている! つまり危険人物だ!」


「戦闘訓練の記録だ。」


「……民の前で筋トレしてるようなもんだな……」

「安全第一だ」とライ。


 


 観客たちは笑い始めた。


「悪いっていうより、なんかマメだな」

「うちの亭主より働いてるじゃん!」

「ていうか勇者より人気あるぞ!」


 


 レオンの額に汗がにじむ。

 ティナが後ろで心配そうに見ていた。


 


 だがミリアは諦めない。

 ポケットから最後のカードを取り出した。

「レオン様、これです! “女性に近づくと倒れる呪い”――つまり恋の呪い! それって闇の儀式では!?」


 


 会場「おおおー!!」


 


 ライ「違う。体質だ。」


 


 バルドが咳払いして補足する。

「若様は“恋腹”でございます。恋の感情を抱くと腹痛が発生いたします。」


「……それも十分呪いじゃないか?」とレオン。

「いいえ、むしろ呪われるほど誠実です!」

とミーナが割り込む。

「好きになったらお腹が痛いって、心も体もピュアすぎるでしょう!」ミリアが叫ぶ。


「……フォローのようで全然嬉しくない。」


 


 観客が爆笑する。

 レオンの立てた「悪の侯爵フェス」は、完全に“グランツ家応援フェス”と化していた。


 


 子どもたちが「ライさまー!」「安全の魔王ー!」と叫ぶ。

 パン屋が「グランツまん」なる新商品を売り出す。

 そして――屋台の売り上げは軒並み倍増。


 


 レオンは頭を抱えた。

「おかしい……これは正義の祭りのはずだ……」


「正義と人気は別物ですな」とバルド。

「若様、もはや“顔が怖い”どころか、“顔が効く”レベルでございます。」


「洒落てるけど複雑だな。」


 


 そのとき、ティナがステージに上がった。

 勇者パーティーの中でも、彼女だけが落ち着いていた。


「ライ様。さっき、橋を直してくれた村の子が言ってました。

“怖い顔でも、優しい人だよ”って。」


 


 静まり返る広場。

 レオンが何か言いかけたが、ライが先に口を開いた。


「……顔は変えられない。でも、怖い顔でも笑える場を作ることはできる。

 だからこのフェス、悪くない。……ただし。」


「ただし?」とティナ。


「次からは、名前を“悪の”じゃなく“安全のフェス”にしてくれ。」


 


 会場から大歓声が起きた。

 レオンは呆然とし、ミリアはメモ帳を握りつぶした。

 バルドはにっこり微笑む。


「若様、もはや民の胃袋と心を同時に掴んでおられますな。」


「胃袋だけは掴まれたくない。こっちが痛くなる。」


「恋腹でございますな。」


「違う。今日は焼きそばの食べすぎだ。」


 


 その後――フェスは夜まで続いた。

 最後の花火が上がるころ、ティナがそっとつぶやいた。


「……やっぱり、この人、悪じゃない。」


 


 その横でモフドラが、腹の上で「ぷしゅー」と湯気を出した。

 ライの懐中時計の針が、静かに一メモリ動く。


 ――“恋心、警戒レベル1”。


 


 バルド「若様、また針が上がりましたな。」


 ライ「……放っておけ。」


 バルド「では恒例の一言を。」


 


 バルドは空を見上げて、にやりと笑った。


「善も悪も、若様の前では“胃薬”でございますな。」


「意味が分からない。」


「どちらもお腹に効く、という意味でございます。」


 


「バルド。」


「はい。」


「……黙ってろ。」


 


 夜空にドカンと花火が咲いた。

 笑い声と湯気と腹痛が、今日も見事に混ざっていた。


最後まで読んでくれてありがとうございます!

今回は“正義フェス”という名のカオス回でした。

レオンの暴走、ミリアの暴愛、ティナの冷静、ミーナの屋台魂、そしてバルドの静かな毒。

ライがまじめに行動するほど、周りが勝手に“伝説”を作っていく――まさにこの作品の真骨頂です。


ライの「誠実」と、みんなの「誤解」がぶつかりあうこのシリーズ、

もし楽しんでもらえたなら、ぜひ評価(☆)と感想をお願いします!

「この回笑った!」「ティナかわいい!」「バルドもっとしゃべれ!」など、

どんな一言でも次の話のガソリンになります。


次回――“正義”はまた誤解し、“恋腹”はまた鳴る。

どうぞお楽しみに。


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