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完璧侯爵様、恋するとお腹が痛いんです —恋すると腹がキリキリする侯爵様の100連敗—  作者: ヨーヨー
第9章 ドジ天使 セラ

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87/100

第87話 ドジかわ天使、花言葉で感動!?

いつも読んでくださってありがとうございます!

今回はちょっぴり静かで、そして優しいお話です。

落ち込むセラと、それを支えるライとミーナ、そしてモフドラのにぎやかな午後。

彼らのやり取りの中に、少しでも「元気が出たな」「なんか温かいな」と感じていただけたら嬉しいです。


「ブックマーク」していただけると、作者の胃痛(=ライ様の恋腹)も少し軽くなります!

ぜひ応援の気持ちでぽちっとお願いします✨

昼下がりの侯爵邸の庭は、やわらかな風が吹いていた。

噴水の音が小さく響き、陽射しに照らされた花々がそよいでいる。


その静かな中庭の片隅で、セラはベンチに座っていた。

羽をたたみ、うつむいた姿は、いつもの元気さがまるで見えない。


 


「セラさん、レモネード持ってきましたよっ!」


明るい声とともに、ミーナが駆け寄ってきた。

トレイの上には氷の入ったグラスが二つ。光が反射してきらきらと輝く。


「……ありがとう」

セラはグラスを受け取り、ちゅっとストローを吸う。けれどその表情は浮かない。


「私……天使なのに、輪っかひとつ守れなかったんだよ。

“落とし物係”とか言われても仕方ないよね……」


その声はまるで小雨みたいに弱々しかった。

ミーナは目をぱちくりとさせ、急に真面目な顔になる。


「えっ!? そんなことないですって!」


「でも……」


「でもじゃないです!」


ミーナは腰に手を当て、びしっと指を立てた。


「天使の輪がなくても、セラさんは天使です! ――たぶん!」


「たぶん!? 今すっごい不安な言い方したよね!?」


「うっ……でも、ライ様も言ってましたよ!」


「ライ様が……?」


「“天使っていうのは、輪がなくても光る人のことだ”って!」


セラは驚いたように目を見開く。

その言葉をゆっくり胸の中で繰り返した。


「……そんなふうに言ってくれたんだ」

「はい! あと“彼女は頑張り屋だ”とも!」


「頑張り屋……」


「そうです! お腹が痛くなるくらい誠実なライ様が言うんですから、絶対本当です!」


セラは思わず笑ってしまう。

「お腹が痛くなるくらい誠実って、変な褒め方だね」


「変ですけど、ライ様ですから!」


ふたりの笑い声が重なり、庭に小さく広がった。


その時――。


「……何が“変”なんだ?」


静かな声が背後から響いた。

振り向くと、花壇の前にスコップを手にしたライが立っていた。

シャツの袖をまくり、淡い光を受けて汗が光っている。


「わっ、若様! 完璧です! 働く貴族の見本です!」


「……褒める方向がずれているぞ、ミーナ」


「ずれてません! 鉢植えが感動してます!」


「鉢植えはしゃべらない」


「そういう比喩です!」


セラの口元にようやく笑みが戻る。

ライはそんなふたりを見て、少しだけ表情をゆるめた。


彼はしゃがみ込み、花壇のつぼみをそっと整える。


「セラ。花は、風で折れても、また咲こうとする」

「……え?」


「折れても、立ち上がるたびに強くなる。

 君も、そういう力を持っているはずだ」


静かな声だった。

だけど、不思議と胸の奥が温かくなる響きだった。


夕方。庭の空がオレンジに染まり始めていた。

噴水の水しぶきが夕陽を受けて光り、モフドラがその上でぷかぷかと浮かんでいる。


「ぷしゅぅ〜、あったかい〜」

モフドラの小さな湯気が、ふわっと立ちのぼる。


「こらモフドラ! それ噴水の上だよ!? 温泉じゃないからね!」

セラが慌ててつっこむ。


「ぷしゅぅ(だって気持ちいいんだもん)」


小竜は悪びれもせず、さらにごろりと寝転んだ。


その様子にライは苦笑をこぼしながら、ベンチに腰を下ろす。

「……モフドラは自由だな」


「はい! でもああいうの見てると、ちょっと元気出ますよね」

 ミーナが頷く。


セラもふっと笑って、羽をぱたぱたと揺らした。

「私もあんなふうにのんきでいられたらいいなぁ。

 でも、輪っかもないし……羽もボロボロだし……」


「セラさん!」ミーナが身を乗り出した。

「落ち込むな禁止です! そういうときこそ、笑顔ですよ!」


「笑顔かぁ……そんな簡単に言われても……」


「笑ってたら、きっと輪っかも寄ってきます!」


「え、そんな虫寄せみたいな理屈ある!?」


「え、ないですけど!」


きっぱり即答するミーナに、セラは「やっぱりないんじゃん!」と肩を落とす。

そのやり取りを聞きながら、ライは静かに立ち上がった。


「セラ」


「う、うん?」


「さっき言ってた件……。輪っかがなくても天使かどうかってやつ」


セラはきょとんとライを見る。

ライは少しだけ言葉を選ぶようにして、まっすぐ続けた。


「俺から見たら……君はもう、十分“天使”だよ」


「え……」


「誰かのために一生懸命動いて、困ってる人を放っておけない。それは、もう天使そのものだ」


「……っ」


「だから、自分を責めるのはやめるんだ」


ライの言葉に、セラはしばらく何も言えなかった。

羽の先が小さく震えて、頬がほんのり赤く染まる。


「……ライって、優しいんだね」


「っ!? い、いや……普通に言っただけだ」


「顔まっかだよ!」ミーナが指差す。

「出た、“恋腹”警報〜!!」


「ち、違うっ!今日は調子がいいんた!恋腹じゃ――」


その瞬間、懐中時計が「チチッ」と鳴る。

針がぐいっと跳ね上がった。


「ぐぅぅっ……!?」


「出たぁぁーー!!」


ミーナとセラが同時に叫ぶ。

モフドラが慌てて飛んできて、ライのお腹にぺたりとくっついた。


「ぷしゅ〜」


「モフドラありがとう……」


「わあっ、湯気出てるよ!?蒸気機関車みたい!」


「セラ、たとえが雑っ!」


「ぷしゅ〜〜!」


「こらモフドラ、もうちょっと静かに温めなさい!」


わちゃわちゃと賑やかに騒ぐ3人と1匹。

夕陽の中、庭には楽しそうな声が響き続けた。


――そんな中、屋敷の陰からそっと様子をうかがっていたバルドは、ひとりで紅茶をすする。


「……若様。恋腹は一向に治らずとも、心の痛みは少しずつやわらいでおられるようで」


小さく笑って、ひとことつぶやいた。


「誠実とは、痛みを抱えたままでも人を笑わせられる力――でございますな」


 


その言葉が、静かな風に溶けていった。



セラは小さく息を吸い、つぼみを見つめる。


「……私も、もう一度咲けるかな」

「もちろん」


ライが微笑んだその瞬間――懐中時計が“チチッ”と鳴った。

針がぐいっと跳ね上がる。


「……ぐっ……!」


ライは腹を押さえ、よろめいた。


「わ、若様ぁ!? 出ました、“恋腹アラーム”です!」


「……ミーナ、そのネーミングはやめろ……っ」


セラは慌てて駆け寄る。

「ま、また私のせい!? ごめんなさい、絶対呪われてる!」


「ち、違う……これは……平常運転……だ……」


苦しみながらも笑顔を作るライ。

そんな中、絶妙なタイミングでバルドが紅茶を持って現れた。


「若様。恋は盲目と申しますが――

 胃薬を片手に続ける恋は、もはや修行でございますな」


「バルド、それは……慰めのつもりか……」


「いえ、観察です」


「観察!?」とミーナが突っ込み、セラは涙目で「やっぱり病気なんだよ!」と騒ぐ。


――だがその喧騒の中、ライはほんの少しだけ笑っていた。

腹は痛い。けれど、不思議と胸の奥が温かかった。


ここまで読んでくださってありがとうございます!

今回は「静けさの中の優しさ」をテーマに描きました。

ライの言葉やミーナのツッコミ、セラの不器用な笑顔――

どれかひとつでも、あなたの心に残ってくれたなら最高に嬉しいです。


もし少しでも「面白かった」「ほっこりした」と思っていただけたら、

評価や感想をいただけると本当に励みになります!

ライ様の恋腹も、作者のモチベーションも、みなさんの一言で回復します!


それでは――また次の話でお会いしましょう!


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