表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完璧侯爵様、恋するとお腹が痛いんです —恋すると腹がキリキリする侯爵様の100連敗—  作者: ヨーヨー
第9章 ドジ天使 セラ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/100

第85話 ドジかわ天使、お祈りする!?

おはようございます!

今回の物語は、王都の静かな教会から始まります。

天使セラが“天使の輪”を失ったまま祈る姿は、ちょっと切なくて、でもどこか笑えて温かいお話です。


ライの誠実な言葉、バルドの渋い一言、ミーナの必死のフォロー、

そして……恒例の“恋腹”ももちろん登場します。笑


もし「この続きも気になる」「セラ、がんばれ!」と思っていただけたら、

ブックマークで応援してもらえると嬉しいです!

あなたのひと押しが、ライの“胃薬”になります✨

王都の古い教会は、外のざわめきが嘘のように静かだった。


高い天井からは色とりどりの光が差し込み、床に小さな虹を落としている。蝋燭の炎はゆらめき、空気はどこか澄んでいるように思えた。


 その祭壇の前で、白い羽を持つ少女が両手を合わせていた。

セラだ。頭上にあるはずの天使の輪を失ったまま、必死に祈っている。


「……神様。どうかお願いします。私、どこに落としたか忘れちゃったんです。輪です。大事な輪なんです。だから……場所を教えてください!」


 あまりに素直すぎる願いに、その場にいた神父が目を丸くした。

銀髪の老神父は、普段は穏やかな笑みを浮かべる人物だが、今はただ口を半開きにして沈黙している。


「……祈りで落とし物の場所を申告されたのは、神父になって五十年、初めてですな」


 低くもれてきたつぶやきに、礼拝堂の奥で遊んでいた子どもたちが反応した。


「えっ、天使なのに輪をなくしたの?」

「すごいドジじゃん!」

「ドジ天使だー!」


 小さな笑い声が重なり、セラはびくりと肩を震わせた。

頬を赤くし、うつむいた彼女の羽はしゅんと小さく縮んでいく。


「ち、違うもん……! 私、本気で探してるんだよ……!」

声は震え、今にも涙がこぼれそうだった。


 その横で、慌てて前に出たのは侍女のミーナだ。

「ちょっと、みんな!セラさんは立派な天使なんです! 輪をなくしたって、心はちゃんと天使なんだから!」


 必死のフォローだったが、子どもたちは「でも輪がないー!」と追い打ちをかけるように笑う。

セラの目尻に、とうとう涙がにじんだ。


 そこで、一歩進み出たのは執事のバルドだった。

深く刻まれた皺の奥の瞳は、穏やかで、それでいて鋭さを失っていない。


「子どもたち」

 その声に、笑い声がぴたりと止まる。

「信仰とは形ではなく心です。輪がなくとも、誰かに笑顔を与えられるなら、それもまた天使の務めでしょう」


 静かに放たれた言葉は、石の壁に反響して、教会全体を満たした。

子どもたちは目を丸くして顔を見合わせ、「……なんか、かっこいい」とつぶやく子さえいた。


 セラは涙をぬぐい、バルドを見上げる。

その瞳は、まだ不安げだったが、ほんの少しだけ光を取り戻していた。


「……ありがとう。私、もう少し……頑張れるかも」


 教会の中に、蝋燭の炎がまたやわらかく揺れた。

セラの小さな祈りは失敗に終わったけれど、その場にいた全員の心に、ほんのり温かい灯りを残していた。



礼拝堂のざわめきが静まり、空気が落ち着きを取り戻していった。

 セラはベンチに腰を下ろし、まだ少し赤い目で床を見つめている。羽はしゅんと垂れたままで、光も弱々しい。


 その横に立つライは、しばらく黙って彼女を見つめていた。

 表情は鋭いのに、心の奥ではどう声をかければいいか迷っている。


「……セラ」

 低い声が、そっと彼女を呼んだ。


 セラが顔を上げると、ライは少しぎこちない笑みを浮かべていた。

「君は、天使だ。輪がなくても、君の真っ直ぐな心は、誰よりも……天使らしい」


 その言葉は、まるで彼の胸の奥からしぼり出されたように響いた。

 セラの目が大きく見開かれ、頬がほんのり赤く染まる。


 ――が。


「……ぐっ!」


 ライは突然お腹を押さえて前かがみになった。

 銀の懐中時計がぶるぶると震え、針がぐんと振れ上がっている。

 毎度おなじみ、恋愛に不器用な彼だけが発症する“恋腹”だ。


「ら、ライ!? わ、私のせい!? 呪われてるの!? 私、また何かやっちゃったの!?」

 セラは大慌てで立ち上がり、ライの肩を揺さぶる。羽をばさばささせながら、涙目で叫んだ。


「お、落ち着いて……。これは……僕の……いつものこと……」

 ライは必死に笑顔を作るが、額には冷や汗が流れている。


 見かねたミーナが飛んできて、セラの手を取った。

「セラ様! 大丈夫です! ライ様はこういうとき、モフドラと温湯があれば乗り越えられるんです!」


 その声に反応するように、小竜モフドラが「ピュイ!」と鳴いてライのお腹にぴょんと飛び乗った。

 ふわふわの毛並みからじんわりと温もりが広がり、ライの表情が少し和らいでいく。


「……ふぅ……助かる、モフドラ」

 深く息をついたライは、ようやく体を起こした。


 バルドは腕を組み、静かに口を開く。

「若様。恋とは胃に響く劇薬。ですが、それを服用せねば誠実とは申せません」


「そ、そんな劇薬いやです……!」

 セラはぶんぶん首を振りながらも、ライを心配そうに見つめ続けた。


 しばらくして、ライはまっすぐ彼女を見た。

「……君の輪は、必ず見つかる。僕たちみんなで、もう一度調べ直そう」


 セラはきゅっと唇をかみ、そして小さくうなずいた。

「……うん。私、諦めない。ライやみんなと一緒なら、きっと大丈夫」


 窓から射す光が、セラの羽をほんのり照らした。

 輪はまだ見つからない。けれど、その場の空気はどこか温かく、確かな決意が生まれていた。


ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

今回は少ししっとりとした回でしたね。

セラの祈り、バルドの言葉、そしてライの不器用な優しさ……

静かな教会の中で、それぞれの“誠実”がきらりと光るシーンでした。


感想欄で「このシーンが好き!」「ライの腹痛がんばれ!」など、

一言でも書いていただけると本当に励みになります!

そして、**作品の評価★**もぜひよろしくお願いします!


次回は――失くした輪に、少しだけ“奇跡”が近づくかも?

どうぞお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ