第84話 ドジかわ天使、小竜の巣を探す!?
おはようございます!
今日のグランツ侯爵家は、朝からいつにも増してドタバタです。
天使セラの「パン=天使の輪」発言から始まる勘違い祭りに、ライもミーナもバルドも巻き込まれて大混乱!
果たして本物の輪は見つかるのか――?
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それでは、どうぞお楽しみください✨
朝の食堂は、いつもよりにぎやかだった。
テーブルの上には焼きたてのパン、チーズ、スープが並んでいる。けれど、パンをじっと見つめているのは一人だけ。
「……これ、輪じゃない?」
真顔でそうつぶやいたのは、天使の少女セラだった。
白い羽を背中に生やしているけれど、頭の上にあるはずの“天使の輪”をなくしてしまったドジっ子だ。
彼女はパンの丸い焦げ目を指さし、本気で自分の失くした輪ではないかと疑っている。
「それはトーストです! ただのパンです!!」
即座にツッコミを入れるのは侍女ミーナ。庶民出身の少女で、ライの一番の応援団……いや、時々暴走団だ。
彼女は額に青筋を浮かべ、セラの手からパンを取り上げる。
その様子を見ながら、侯爵家の跡取りであるライオネル――通称ライは、机に地図と紙を広げていた。
昨日までの捜索で得た手がかりを整理しているのだ。
「市場は空振りだった。次は……屋敷の中を調べてみよう」
ライは冷静に言葉をつむぐ。その顔は鋭いが、心は誠実そのものだ。
ここで、執事バルドが咳払いを一つ。
「若様。屋敷内で輪っかが集まる場所といえば……あのお方しかおられますまい」
バルドの視線の先で、ちょこんと椅子に座っていたのはモフドラだった。
手のひらサイズの小竜で、ふわふわした毛玉のような姿。普段はライのお腹を温める“腹痛ホッカイロ係”だが、実は――
「モフドラは“丸い物”が大好きなんです。見つけると、ぜんぶ集めて隠しちゃうんですよ!」
ミーナが説明を補足する。
バルドも、すかさず皮肉をひとつ。
「ですが若様。あの子の“巣”は要注意ですな。下手に触ると、しばらく口もきいてくれません」
セラの瞳がキラキラと輝いた。
「じゃあ……もしかして! 私の輪も、モフドラが拾ってくれてるかも!?」
モフドラは得意げに「ピュイ!」と鳴き、胸を張る。
どうやら案内する気満々らしい。
「よし、作戦開始だ」
ライが立ち上がった。
「名付けて――『巣強襲・リング回収作戦』ですね!」とミーナが叫ぶ。
作戦名がやたらカッコいいのか、セラは勢いよく拳を握る。ミーナも自分の案に満足したのかセルフ拍手。
一方、ライは冷めた目で「……ネーミングはともかく、やるしかなさそうだな……」とつぶやいた。
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モフドラが先頭に立ち、ぴょんぴょんと廊下を進んでいく。
行き先は――まるで秘密基地のようだった。
まず暖炉の裏の隙間をくぐり、次にソファの下へもぐり、最後に掃除用具入れの二重底を開ける。
そこには、誰も知らなかったモフドラ専用の“宝物部屋”があった。
「……なにこれ!」
ミーナが叫ぶ。
中には山のように積まれた“輪っか状のガラクタ”があったのだ。
ブレスレット、壊れた鍋の取っ手、樽のタガ、壊れたランタンの金属輪、馬車のネジ輪……。
光るものもあれば、サビだらけのものもある。まるで「輪っか博物館」だ。
セラは両手を合わせて目を潤ませる。
「すごい……! 全部、私の輪に見える……!」
「いや、それは違います!」
ミーナがまた全力で否定する。
ライは真面目に仕分け表を作り出した。
「素材、重量、魔力反応……分類しよう。ミーナは書記、セラは候補を選ぶ担当。バルドは安全管理と……ツッコミ係だ」
「ツッコミ係を正式に任命されたのは初めてですな」
バルドが苦笑し、モフドラは「ピュイ!」と胸を張った。
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そして始まった“輪っか祭り”。
セラは鍋の取っ手を頭にかぶり、耳だけ通って抜けなくなる。
ミーナが石けん水を持ってきて救出。
次は樽のタガを持ち上げてふらふら。「重っ!」と叫んで床に倒れ込み、全員でキャッチ。
さらにベルトのバックルを頭に乗せてみたら、髪に引っかかって前が見えなくなる。
「……セラさん、それは新しい拷問器具では?」とミーナがつぶやく。
笑いながらも検査は進む。そしてついに――
三つの輪からかすかな魔力反応が見つかったのだ。
銀色の細輪。古びた真鍮の輪。透明な樹脂の輪。
「これだ……これかも……いや、これも怪しい!」
セラはどれも大事そうに抱え込む。
その横で、モフドラはドヤ顔で「ピュイ!」と鳴いた。
「……自慢してますな」
バルドが肩をすくめる。
ライは小さくうなずき、机の上に三つを置いた。
「焦らず、一つずつ検証しよう」
セラはこくんと真剣にうなずいた。
机の上に並べられた三つの“候補輪”。
銀色の細輪、古びた真鍮の輪、そして透明な樹脂の輪。
セラはごくりとつばを飲みこんだ。
「……これ、どれかが絶対に私の輪だよね!」
期待に満ちたその瞳は、子犬のように潤んでいる。
けれどライは慎重だった。
「落ち着いて。魔力の反応はあるけれど、どれも微弱だ。本物かどうかは、順番に検証しないと」
そう言うと、セラは「うんっ!」と力強くうなずき……。
次の瞬間、勢い余って銀色の輪を頭にガシャンとはめてしまった。
「……ぎゃああ! 耳が引っかかって外れないぃ!」
髪がぐしゃぐしゃに乱れ、羽根をバサバサさせて大騒ぎ。
ミーナが慌てて石けん水を持ってきて耳をぬらし、どうにか救出する。
「……セラ殿、それではただの頭突き罠ですな」
バルドが冷たくつぶやくと、セラは「ち、違うもん!」と涙目で抗議した。
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次は古びた真鍮の輪。
セラは頭にちょこんと乗せてみたが――
「……ずるっ」
重すぎて前にずり落ち、鼻に直撃。
「いたーーーいっ!」と床をゴロゴロ転げ回る。
見ていたミーナは腹を抱えて笑い、バルドは「鼻輪としては似合います」と冷酷コメント。
セラは頬を真っ赤にして「ちがうっ!」と立ち上がった。
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最後に透明な樹脂の輪。
セラが頭にのせると、ほのかに光がゆらめいた。
「わ、光った!? これだよ、これが……!」
セラの声は震え、羽根も小さくふるえていた。
けれど光はすぐに消えてしまう。
沈黙が落ちた。
セラは輪を両手で握りしめたまま、ぽろりと涙をこぼす。
「やっぱり……私、天使失格なのかな……。どれも違う気がするし……全部に本物に見えるなんて、役立たずだよね……」
その言葉に、ライは胸を突かれたように息をのむ。
彼女の落胆が痛いほど伝わり、気づけば口が動いていた。
「君は……役立たずなんかじゃない」
セラがはっと顔を上げる。
ライは真剣な表情で言葉を続けた。
「誰よりも一生懸命だ。笑顔も、涙も、全部まっすぐだ。……君は、十分に天使だよ」
言った瞬間、ライの腹に激痛が走る。
「ぐっ……!」
銀の懐中時計の針がぐんと振れ上がり、ライはテーブルに手をついてうずくまった。
恋腹――恋を自覚した時に必ず襲ってくる、例の謎の腹痛である。
「えええ!? わ、私のせい!? 私のせいでお腹が!?」
セラは大慌てで背中をさすったり、水を持ってこようと走ったり、もうパニックだ。
「だ、大丈夫だ……いつものことだ……」
ライは冷や汗をかきながらも必死に笑おうとした。
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そんな二人を見ていたバルドが、すっと一歩前へ出た。
「若様」
初老の執事は、ふだん通りの落ち着いた声で告げる。
「恋とは、甘くも苦き飴玉のようなもの。噛みしめれば痛み、舐め続ければ心に残る。……お腹を痛めるほど誠実な恋など、他にありますまい」
その言葉に、ミーナは「かっこいい……」と感動し、バルドは「若様は胃薬の化身ですな」と冷たく呟いた。
セラは涙をぬぐいながら、そっとライの顔を見つめた。
「……ありがとう、ライ。私、まだ諦めない。絶対に輪を見つけるから」
その決意に、ライは小さくうなずき、再び立ち上がった。
こうして“輪探し作戦”は、また次のステージへと続いていくのだった。
読んでくださりありがとうございました!
今回も天使セラの“ドジかわ”が炸裂しましたね。
そして、ライの恋腹もますます悪化中……!
お腹を押さえながらも誠実に励ます姿、どうでしたか?笑
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みなさんの一言が、次回執筆の“回復薬”です。
次回は、ついに輪にまつわる“新たな事件”が――!?
どうぞお楽しみに!




