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完璧侯爵様、恋するとお腹が痛いんです —恋すると腹がキリキリする侯爵様の100連敗—  作者: ヨーヨー
第9章 ドジ天使 セラ

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84/100

第84話 ドジかわ天使、小竜の巣を探す!?

おはようございます!

今日のグランツ侯爵家は、朝からいつにも増してドタバタです。

天使セラの「パン=天使の輪」発言から始まる勘違い祭りに、ライもミーナもバルドも巻き込まれて大混乱!

果たして本物の輪は見つかるのか――?


少しでも「続きが気になる!」「セラかわいいかも」と思ったら、

ブックマークをポチッとしてライたちの“恋腹”ストーリーを見守ってくださいね!

それでは、どうぞお楽しみください✨

朝の食堂は、いつもよりにぎやかだった。


 テーブルの上には焼きたてのパン、チーズ、スープが並んでいる。けれど、パンをじっと見つめているのは一人だけ。


「……これ、輪じゃない?」


 真顔でそうつぶやいたのは、天使の少女セラだった。

 白い羽を背中に生やしているけれど、頭の上にあるはずの“天使の輪”をなくしてしまったドジっ子だ。

 彼女はパンの丸い焦げ目を指さし、本気で自分の失くした輪ではないかと疑っている。


「それはトーストです! ただのパンです!!」


 即座にツッコミを入れるのは侍女ミーナ。庶民出身の少女で、ライの一番の応援団……いや、時々暴走団だ。

 彼女は額に青筋を浮かべ、セラの手からパンを取り上げる。


 その様子を見ながら、侯爵家の跡取りであるライオネル――通称ライは、机に地図と紙を広げていた。

 昨日までの捜索で得た手がかりを整理しているのだ。


「市場は空振りだった。次は……屋敷の中を調べてみよう」


 ライは冷静に言葉をつむぐ。その顔は鋭いが、心は誠実そのものだ。


 ここで、執事バルドが咳払いを一つ。

「若様。屋敷内で輪っかが集まる場所といえば……あのお方しかおられますまい」


 バルドの視線の先で、ちょこんと椅子に座っていたのはモフドラだった。

 手のひらサイズの小竜で、ふわふわした毛玉のような姿。普段はライのお腹を温める“腹痛ホッカイロ係”だが、実は――


「モフドラは“丸い物”が大好きなんです。見つけると、ぜんぶ集めて隠しちゃうんですよ!」


 ミーナが説明を補足する。

 バルドも、すかさず皮肉をひとつ。


「ですが若様。あの子の“巣”は要注意ですな。下手に触ると、しばらく口もきいてくれません」


 セラの瞳がキラキラと輝いた。

「じゃあ……もしかして! 私の輪も、モフドラが拾ってくれてるかも!?」


 モフドラは得意げに「ピュイ!」と鳴き、胸を張る。

 どうやら案内する気満々らしい。


「よし、作戦開始だ」

 ライが立ち上がった。

「名付けて――『ネスト強襲・リング回収作戦』ですね!」とミーナが叫ぶ。


 作戦名がやたらカッコいいのか、セラは勢いよく拳を握る。ミーナも自分の案に満足したのかセルフ拍手。

 一方、ライは冷めた目で「……ネーミングはともかく、やるしかなさそうだな……」とつぶやいた。



---


 モフドラが先頭に立ち、ぴょんぴょんと廊下を進んでいく。

 行き先は――まるで秘密基地のようだった。


 まず暖炉の裏の隙間をくぐり、次にソファの下へもぐり、最後に掃除用具入れの二重底を開ける。

 そこには、誰も知らなかったモフドラ専用の“宝物部屋”があった。


「……なにこれ!」

 ミーナが叫ぶ。

 中には山のように積まれた“輪っか状のガラクタ”があったのだ。


 ブレスレット、壊れた鍋の取っ手、樽のタガ、壊れたランタンの金属輪、馬車のネジ輪……。

 光るものもあれば、サビだらけのものもある。まるで「輪っか博物館」だ。


 セラは両手を合わせて目を潤ませる。

「すごい……! 全部、私の輪に見える……!」


「いや、それは違います!」

 ミーナがまた全力で否定する。


 ライは真面目に仕分け表を作り出した。

「素材、重量、魔力反応……分類しよう。ミーナは書記、セラは候補を選ぶ担当。バルドは安全管理と……ツッコミ係だ」


「ツッコミ係を正式に任命されたのは初めてですな」

 バルドが苦笑し、モフドラは「ピュイ!」と胸を張った。



---


 そして始まった“輪っか祭り”。


 セラは鍋の取っ手を頭にかぶり、耳だけ通って抜けなくなる。

 ミーナが石けん水を持ってきて救出。


 次は樽のタガを持ち上げてふらふら。「重っ!」と叫んで床に倒れ込み、全員でキャッチ。


 さらにベルトのバックルを頭に乗せてみたら、髪に引っかかって前が見えなくなる。


「……セラさん、それは新しい拷問器具では?」とミーナがつぶやく。


 笑いながらも検査は進む。そしてついに――

 三つの輪からかすかな魔力反応が見つかったのだ。


 銀色の細輪。古びた真鍮の輪。透明な樹脂の輪。


「これだ……これかも……いや、これも怪しい!」

 セラはどれも大事そうに抱え込む。


 その横で、モフドラはドヤ顔で「ピュイ!」と鳴いた。


「……自慢してますな」

 バルドが肩をすくめる。


 ライは小さくうなずき、机の上に三つを置いた。

「焦らず、一つずつ検証しよう」


 セラはこくんと真剣にうなずいた。



机の上に並べられた三つの“候補輪”。

 銀色の細輪、古びた真鍮の輪、そして透明な樹脂の輪。


 セラはごくりとつばを飲みこんだ。

「……これ、どれかが絶対に私の輪だよね!」


 期待に満ちたその瞳は、子犬のように潤んでいる。

 けれどライは慎重だった。

「落ち着いて。魔力の反応はあるけれど、どれも微弱だ。本物かどうかは、順番に検証しないと」


 そう言うと、セラは「うんっ!」と力強くうなずき……。

 次の瞬間、勢い余って銀色の輪を頭にガシャンとはめてしまった。


「……ぎゃああ! 耳が引っかかって外れないぃ!」


 髪がぐしゃぐしゃに乱れ、羽根をバサバサさせて大騒ぎ。

 ミーナが慌てて石けん水を持ってきて耳をぬらし、どうにか救出する。


「……セラ殿、それではただの頭突き罠ですな」

 バルドが冷たくつぶやくと、セラは「ち、違うもん!」と涙目で抗議した。



---


 次は古びた真鍮の輪。

 セラは頭にちょこんと乗せてみたが――


「……ずるっ」


 重すぎて前にずり落ち、鼻に直撃。

「いたーーーいっ!」と床をゴロゴロ転げ回る。


 見ていたミーナは腹を抱えて笑い、バルドは「鼻輪としては似合います」と冷酷コメント。

 セラは頬を真っ赤にして「ちがうっ!」と立ち上がった。



---


 最後に透明な樹脂の輪。

 セラが頭にのせると、ほのかに光がゆらめいた。

「わ、光った!? これだよ、これが……!」


 セラの声は震え、羽根も小さくふるえていた。

 けれど光はすぐに消えてしまう。


 沈黙が落ちた。

 セラは輪を両手で握りしめたまま、ぽろりと涙をこぼす。

「やっぱり……私、天使失格なのかな……。どれも違う気がするし……全部に本物に見えるなんて、役立たずだよね……」


 その言葉に、ライは胸を突かれたように息をのむ。

 彼女の落胆が痛いほど伝わり、気づけば口が動いていた。


「君は……役立たずなんかじゃない」


 セラがはっと顔を上げる。

 ライは真剣な表情で言葉を続けた。


「誰よりも一生懸命だ。笑顔も、涙も、全部まっすぐだ。……君は、十分に天使だよ」


 言った瞬間、ライの腹に激痛が走る。

「ぐっ……!」


 銀の懐中時計の針がぐんと振れ上がり、ライはテーブルに手をついてうずくまった。

 恋腹――恋を自覚した時に必ず襲ってくる、例の謎の腹痛である。


「えええ!? わ、私のせい!? 私のせいでお腹が!?」

 セラは大慌てで背中をさすったり、水を持ってこようと走ったり、もうパニックだ。


「だ、大丈夫だ……いつものことだ……」

 ライは冷や汗をかきながらも必死に笑おうとした。



---


 そんな二人を見ていたバルドが、すっと一歩前へ出た。

「若様」


 初老の執事は、ふだん通りの落ち着いた声で告げる。


「恋とは、甘くも苦き飴玉のようなもの。噛みしめれば痛み、舐め続ければ心に残る。……お腹を痛めるほど誠実な恋など、他にありますまい」


 その言葉に、ミーナは「かっこいい……」と感動し、バルドは「若様は胃薬の化身ですな」と冷たく呟いた。


 セラは涙をぬぐいながら、そっとライの顔を見つめた。

「……ありがとう、ライ。私、まだ諦めない。絶対に輪を見つけるから」


 その決意に、ライは小さくうなずき、再び立ち上がった。


 こうして“輪探し作戦”は、また次のステージへと続いていくのだった。


読んでくださりありがとうございました!

今回も天使セラの“ドジかわ”が炸裂しましたね。

そして、ライの恋腹こいばらもますます悪化中……!

お腹を押さえながらも誠実に励ます姿、どうでしたか?笑


この物語を「ちょっと面白い」「なんか好き」と感じてくださったら、

評価★や感想コメントをいただけると励みになります!

みなさんの一言が、次回執筆の“回復薬”です。


次回は、ついに輪にまつわる“新たな事件”が――!?

どうぞお楽しみに!


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