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完璧侯爵様、恋するとお腹が痛いんです —恋すると腹がキリキリする侯爵様の100連敗—  作者: ヨーヨー
第9章 ドジ天使 セラ

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83/100

第83話 ドジかわ天使、市場で大暴れ!?

王都の朝は今日もにぎやか!

……そして、グランツ侯爵家の胃薬在庫が減る音が、またひとつ。


今回はついに、ドジかわ天使セラの「天使の輪探し」が本格スタート!

市場で大暴れ(!?)のセラと、胃痛に耐えるライのコンビが、いつも以上に騒がしくも楽しい一話になっています。


もし読んで「クスッ」と笑えたら——

ブックマークしておいてください!

次回のドタバタも一緒に見守ってくれると嬉しいです✨


王都の大市場は、朝から人でごった返していた。


石畳の道いっぱいに並んだ露店、威勢のいい呼び込みの声、焼き立てのパンや香辛料の匂いが風に混ざって流れてくる。


侯爵家の跡取りライオネルは、そんな喧噪の中でも背筋を伸ばし、冷静に歩いていた。

その隣には侍女のミーナ、そして——翼をパタパタ揺らしながら元気にきょろきょろしている少女、天使セラがいた。


「わあぁぁ!すごい!こんなにたくさんのお店、初めて見た!」

セラは目を輝かせて、果物屋やお菓子屋に首をぐるぐると回している。羽がばさばさと動いて、通行人が「うわ、なんだ!?」とびっくりするほどだった。


「セラさん、落ち着いてください!人にぶつかりますよ!」

ミーナが慌てて引っ張るが、セラは聞いていない。


ライはそんな二人を横目で見ながら、静かに呟いた。

「今日の豆の入荷量は多いな。値段は昨日より下がっているはずだ」


「……ライ様、やっぱり観察してるところが渋すぎます!」

ミーナが感心して手を叩く。


一方セラはといえば——。


「見つけた!これだーっ!」

突然、屋台の前で叫んだ。


そこは甘い香りを漂わせるパン屋。店先には砂糖をまぶした丸いドーナツが山盛りに並んでいた。


「この丸い形、間違いない!私の輪だ!」

セラはドーナツをひとつ掴むと、そのまま頭にちょこんと乗せてポーズを取った。


……砂糖がぽろぽろ落ち、金色の髪に白い粉が積もっていく。


「セラさん!それお菓子です!天使の輪じゃありません!」

ミーナが慌てて叫ぶ。


「えっ……そ、そうなの?」

セラは目をぱちぱちさせた後、恥ずかしそうにうつむいた。だが次の瞬間、もぐもぐとそれをかじり、頬をふくらませる。


「……でも美味しいから、これはこれでアリ!」

にっこりと笑ったセラに、通りすがりの人々が思わず吹き出す。


「天使なのに食いしん坊だぞ」

「かわいいけど、ただのドーナツ娘じゃねぇか!」


ライは小さくため息をついた。だがその口元は、ほんの少しだけ柔らかかった。



---


「次こそは本物を見つけてみせる!」

セラが気合いを入れ直したその先にあったのは、鍛冶屋の店。


店先には樽を締めるための鉄輪が何十個も積まれている。

どれも太くて重く、どう見ても天使の輪とは違う。


だがセラは目を輝かせた。

「見て見て!あれ、絶対私の輪だ!」


「ちょ、セラさん!?違う違う違う!」

ミーナが止めるより早く、セラは鉄輪に両手をかけてぐいっと引っ張った。


ガシャーン!!


バランスを崩した鉄輪の山が、雪崩のように崩れ落ちる。

通りに響き渡る金属音。周囲の人が「うおおっ!?」と避けて大騒ぎになる。


「なに勝手に触ってんだ小娘ぇぇ!!」

鍛冶屋の親父が真っ赤な顔で飛び出してきた。


「ひぃぃっ!?」

セラは尻もちをついて涙目に。


ここで一歩前に出たのはライだった。

「彼女は……天界から来た天使なんだ…。見習い中に少し勘違いを……」


「どんな実習だ!?」と親父が怒鳴るが、ライの落ち着いた声と真剣な目に圧され、しぶしぶ引き下がる。

結局、ライが代金を払ってなんとか場は収まった。


セラはしょんぼり肩を落とし、尻尾のように羽もしゅんと下がっている。

「……ごめんなさい。私、また失敗しちゃった」


ミーナが慌てて笑顔を作り、セラの背中をぽんと叩いた。

「だ、大丈夫です!次はもっとちゃんと見極めましょうね!」


「……うん」


セラの返事は弱々しかったが、その頬にはまだドーナツの砂糖がついたままだった。



---


鍛冶屋での大騒ぎをなんとか収めた一行は、少し人通りの少ない広場に出た。

石畳の真ん中には噴水があり、その周りをぐるりと囲むように露店が立ち並んでいる。

首飾りやブレスレット、髪飾りなどの小物を売る店が多く、見ているだけでも楽しい雰囲気だった。


「わぁぁ!キラキラしてる!」

セラは目を輝かせ、走り出す。羽がばさばさ動き、通りすがりの人々が「うおっ、羽だ!?」とよける。


露店の一つで、真鍮の輪っかを飾っている店主が声を張り上げた。

「ほら見ておくれ!新作の装飾輪だよ!頭にのせれば光り輝く未来が見える!」


「これだぁぁぁ!!」

セラは食いついた。

商品をぱっとつかみ、その場で自分の頭にのせる。


「どう?似合う?」

無邪気な笑顔。金色の髪に、安っぽい真鍮の輪っか。

まるで子どもの学芸会の冠のようで、通りの人たちが「ぷっ」と吹き出した。


「に、似合ってます!似合ってますけどぉ!」

ミーナは必死にフォローするが、肩は震えていた。笑いをこらえるのに必死だ。


ライは腕を組み、真顔で見つめる。

「……悪くはない。だが、少し安定感に欠けるな」


「え、えっ!?真剣に見ないでよ!?」

セラは真っ赤になって慌てて外すが、手がすべって輪っかがぽーんと宙を飛んだ。


「おっと」

ライが片手でキャッチする。すらりとした長身に、黒マントをひるがえしての動き。

……その姿は格好いいはずなのに、頭に乗った輪っかがあまりにもチープで、周りから「ぶはっ!」と爆笑が起こった。


「若様、さすがでございます。顔以外は完璧ですな」

執事バルドがいつの間にか背後に立っていて、さらりと毒を吐いた。


「バルド……」

ライは渋い顔で返す。だが、場の空気は完全にコメディだった。



---


その後もセラは、宝石店の丸い飾り石を「これだ!」と叫んでは追い出され、

帽子屋のリング付きベルトを頭に巻いて「ぴったり!」とドヤ顔をしてミーナに「それ腰用ですぅ!」と突っ込まれる始末だった。


何度も何度も「これだ!」と騒いで、何度も間違えて、何度も恥をかいて。

広場の子どもたちは「ドジ天使だー!」と面白がり、後をついてきて笑っていた。


やがて、セラは小さな噴水の縁に腰を下ろし、ぐったりと肩を落とした。

羽もぺたりと垂れ下がり、元気が消えてしまったように見える。


「……私って、ほんとに役立たずの天使なのかも」

か細い声が、噴水の水音にまぎれて聞こえた。


ミーナは慌てて隣に座り込み、セラの手を取った。

「そんなことありません!セラさんはドジですけど……ちがう!ドジだからこそ、みんなを笑顔にしてくれるんです!」


「笑顔……」

セラは小さくつぶやき、目を伏せた。


その横で、ライがゆっくりと近づいてきた。

鋭い目つきのせいで周りからは怖がられる彼だが、その声は穏やかだった。


「セラ、君は役立たずなんかじゃない」


セラは驚いたように顔を上げる。


「君は、必死に探して、必死に考えている。……誠実だ。僕はそう思う」


その瞬間。


——カチリ。


ライの懐中時計の針がぐぐっと跳ね上がった。

同時に、腹の奥から「キリキリキリッ!」と痛みが走る。


「……っ!?」

ライは額に汗を浮かべ、腹を押さえてよろめいた。


「ライ様ぁぁ!?またですかぁぁ!」

ミーナが悲鳴を上げる。


セラは真っ青になって立ち上がり、羽をばたばたさせながら慌てふためいた。

「ちょ、ちょっと!今の私のせい!?私が呪われてるから!?ねぇ、ほんとに大丈夫!?」


「……違う、君のせいじゃ……」

ライは苦しそうに答えるが、その言葉すら誠実さがにじみ出ていて、余計に痛みが増す。


「ライ様、そんなかっこいいこと言わなくていいんですよ!今はお腹です、お腹!」

ミーナが大慌てでバッグを探りと、モフドラが飛び出してくる。


「ピュイ!」

手のひらサイズの小竜はすぐにライのお腹へぴょんと飛び乗った。

「ぷしゅーっ」と音を立てて蒸気のような温かさを放つ。


「ああ……助かる」

ライは目を細め、ようやく息を整えた。


セラは両手を胸に当て、ほっとしたように涙目で笑う。

「よ、よかったぁ……ほんとに、死んじゃうかと思った……」


「セラ様。若様は死にはしません。ただ恋をするたびに胃をやられるだけで」

バルドが静かに補足する。


「それって充分ヤバいじゃん!!」

セラとミーナが声を揃えて叫び、広場に爆笑が響いた。



---


こうして「天使の輪探し大作戦」は、またしても波乱と笑いのうちに幕を閉じた。


ライは心の中で、そっと呟く。

(……賑やかすぎる。だが、不思議と悪くないな)



(……どうやら、この旅路も胃薬が必要そうだな)


セラが「これだ!」と叫ぶたびに、なぜか誰かの胃にダメージが入る回でしたね。

今回もドーナツに鉄輪、そしてまさかの安物輪っか……天界より賑やかな市場でした。


ライの“恋腹”が発動するたび、セラの天然ぶりが光っていく——

この二人の距離がどう変わっていくのか、作者としても楽しみです。


もし少しでも「面白かった!」「セラかわいい!」「ライお腹がんばれ!」と思っていただけたら、

ぜひ評価(★★★★★)と感想をお願いします!

あなたのひと言が、次の話を書く活力になります。


次回も、笑ってちょっとキュンとして、また笑えるお話をお届けします!


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