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完璧侯爵様、恋するとお腹が痛いんです —恋すると腹がキリキリする侯爵様の100連敗—  作者: ヨーヨー
第9章 ドジ天使 セラ

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82/100

第82話 ドジかわ天使、パンがうまい!?

おはようございます!作者のヨーヨーです。


完璧すぎるのに恋愛だけポンコツな侯爵様・ライと、天界から落っこちてきたポンコツ天使・セラ。

今回はそんな二人の“朝ごはんバトル”からスタートです。


パンとスープの戦いあり、腹痛あり、まさかの“恋のスイッチ”も……!?

にぎやかすぎる朝を、どうぞ笑いながら見守ってください!


もし少しでも「面白いかも」「続きが気になる」と思ってもらえたら、

ブックマーク登録していただけると嬉しいです✨

あなたの一つのブクマが、ライの胃薬より効きます(たぶん)。


それでは本編へどうぞ!

王都の朝。


グランツ侯爵家の大食堂には、今日も長いテーブルいっぱいに朝食が並んでいた。

焼き立てのパン、香草を浮かべたスープ、じゅうじゅう音を立てるソーセージ、彩り豊かな野菜。そして黄金色のはちみつの壺。


侯爵家の食卓は豪華すぎず質素すぎず――「働く人が一日を元気に過ごせる食事」という方針で、栄養と量を重視していた。


だが、そのバランスの取れた朝食は――一人の“新入り”の登場で一瞬にして台無しになる。


「わあぁぁ!この匂い……天界よりおいしそう……!」


椅子に座る前から目を輝かせ、テーブルの端に積まれたパンへと手を伸ばす少女。

名をセラ。

昨日ライに拾われた、ちょっとドジで、でも笑顔がまぶしい“落っこち天使”である。


頭の上にあるはずの「天使の輪」を失ってしまい、いまはただ羽が生えただけの少女にしか見えない。

けれど、その羽をばたつかせながら駆け寄る姿は、どうにも放っておけない愛嬌があった。


「セラさん!まずはお席に!」

侍女ミーナが慌てて呼び止める。だが遅い。


「いただきまーす!」

セラの口に、パンが半分消えた。


「……言ってるそばから!」


ミーナが頭を抱える横で、ライは静かに在庫帳をめくっていた。

「蜂蜜の消費が異常に早い……原因は誰だろう」


その真剣な声を聞きながら、執事バルドは淡々とお茶を注ぐ。

「若様、本日は麦粥を増量いたしました。天使様の燃費は未知数でございますので」


「さすがバルドさん!未来が見えてます!」

ミーナが感心したその瞬間――。


「ぬあっ、あっつぅ!」


セラがスープの椀に顔から突っ込んだ。

鼻先を赤くして「ぬぐぐ……!」ともがく。


「ちがいます!スプーンです、まずはスプーンからです!」

ミーナが必死でナプキンを押し当てる。


「スプーン……了解!」

セラはきりっと返事をして――今度はパンを丸ごとスープに沈めた。


ぐずぐずに崩れたパンの塊を掬い上げ、満面の笑顔。

「柔らかくて歯がいらない……神対応だぁ!」


「いや、歯はあった方がよろしいですよ」

バルドが落ち着いた調子で言い放つ。


テーブルの端では、手のひらサイズの小竜モフドラが自分の小さなミルク皿をぺろぺろしていた。

その皿にセラの手が伸びる。


「これもおいしそう……」


「ダメです!それはモフドラの栄養源!モフドラはライ様の腹痛ライフラインなんです!」

ミーナが飛びついて両手で死守する。


セラはきょとんと目をぱちぱち。

「腹痛ライフライン……?」


ライは溜息をひとつ。

「……君たち、朝から騒がしすぎる」

とは言いつつ、懐中時計に視線を落とし、いつもの腹痛針が揺れないのを確認して少し安心した。


セラの食べ方はまるで戦場だ。パンを剣に、はちみつを盾に、スープは魔法の沼。

テーブルクロスはあっという間に彼女の“戦場跡”と化した。


だが、不思議と誰も怒る気にはなれない。

彼女の笑顔と「おいしい!」の一言が、部屋の空気を明るくするからだ。


「……剣の稽古より皿のキャッチのほうが難しいな」

倒れかけた皿を反射で拾ったライが、ぼそっと呟く。


「若様、今の反射速度……剣術の成果でございますな」

バルドがしれっと褒める。


「いや、剣より皿のほうが危険だ」


大食堂に、思わず笑いが広がった。



食卓がようやく落ち着いた頃。

パンの山は跡形もなく消え、スープの鍋も空っぽ。

ミーナはナプキンを頭にかぶり、戦場から生還した兵士のような顔をしていた。


「……ふう……食べた食べた!」

セラはお腹をさすりながら、羽をぱたぱたさせている。


その顔は、まるで「世界を救った勇者」だった。

――食べただけなのに。


だが、次の瞬間。

セラはぎゅっと両手を握りしめ、真剣な顔になる。


「ねえ、ライ!」


唐突に名前を呼ばれ、ライはぴたりと顔を上げた。

その真剣な瞳に射抜かれ、懐中時計の針が「カチリ」と音を立てる。


「ぐっ……!」

腹に鋭い痛みが走った。


(しまった……! 近距離で名前呼びは……危険すぎる……!)


ライは必死に顔を保ちながら返す。

「……なんだ、セラ」


セラは立ち上がり、胸に手を当てた。

羽がふわりと揺れる。


「改めてお願いするね。私の輪――天使の輪を、一緒に探してほしいの!」


その声はまっすぐで、食いしん坊でドジな少女からは想像もつかないほど強いものだった。


「天使の輪がなければ、私は天界に戻れない。天界に戻れなければ、本当の天使でいられない……だから……」


まるで命を賭ける宣言のように響く。

食堂の空気が一気に引き締まった。


ライは椅子から立ち上がり、彼女をまっすぐ見つめた。

「もちろん協力する。……君の道は、僕も一緒に探す」


その誠実な言葉に、セラの頬が赤く染まる。

胸がきゅんと高鳴って――。


「ライ……!」


さらに一歩近づく。

その瞬間。


「ぐぅぅぅぅ……っ!」


ライの腹に雷のような痛みが走った。

銀の懐中時計の針が一気に振り切れる。

彼はテーブルに手をつき、うずくまる。


「ライ!? なにそれ!? やっぱり私、呪われてるの!? 触ったら病気うつした!? えっ、えっ!?」

セラは大慌てで周りを見回す。


「ちがいます!ライ様は恋愛スイッチが入るとお腹がキリキリするんです!」

ミーナが即座に補足するが――説明が説明になっていない。


「恋愛スイッチ!? そんな恐ろしい病が!? じゃあ私が原因!? 私、呪い天使!? バッドエンド担当!?」

セラは頭を抱え、羽をばさばささせながらぐるぐる回る。


「落ち着いてくださいってば! セラさんは悪くないです!」

ミーナが必死に追いかける。


その横で、バルドが冷静にお茶を啜る。

「……若様、輪を探す前に、まずは椅子に座らせた方がよろしいでしょう」


「バルドさん落ち着きすぎです!」

ミーナの絶叫が食堂に響いた。


――こうして、

「輪探し」という重大ミッションは、セラのドタバタとライの腹痛に見事にかき消されつつ幕を開けたのだった。

読んでくださってありがとうございます!


セラの食欲はまるで天界の竜巻、ライの胃痛はもはや国宝レベル。

それでも二人の掛け合いが、ちょっとだけ温かくて、笑えて、

なんだか「いい朝だな」と思ってもらえたら嬉しいです。


「この二人の掛け合い好き!」「ライがんばれ!」と思ってもらえたら、

⭐評価や感想で応援してもらえると本当に励みになります!

次回は――天使の輪探し、ついに始動!?そしてまたしても波乱の予感!?


誠実とドタバタが交差する次回も、どうぞお楽しみに!

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