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完璧侯爵様、恋するとお腹が痛いんです —恋すると腹がキリキリする侯爵様の100連敗—  作者: ヨーヨー
第9章 ドジ天使 セラ

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81/100

第81話 ドジかわ天使、落とし物する!?

作者のヨーヨーです。

このお話は、「恋愛するとお腹が痛くなる完璧侯爵様」が、毎回まっすぐに恋しては失敗していくコメディです。

笑って、ちょっと切なくて、でも最後には「誠実ってかっこいいな」と思えるような物語を目指しています!


今日から新しい幕の連載スタートです。

もし「面白そうかも」「続きを読んでみたい」と思っていただけたら、ぜひブックマークしていただけると嬉しいです✨

あなたの一つのブクマが、ライの胃痛よりも効く元気の源になります。


それでは――どうぞ、お楽しみください!

王都の大通りは、朝からにぎやかだった。


行商人の声が飛び交い、パンの焼ける匂いと馬車の音が入り混じる。


その喧騒の中を、背の高い青年がゆったりと歩いていた。

名門・グランツ侯爵家の跡取り、ライオネル・フォン・グランツである。


黒いマントを翻し、通りすがりの商人から次々と相談を受ける。

「若様、この帳簿、計算が合わないんですが……」

「ここを銀貨十二枚に直せば収支は合う」

「ひぇ、即答……!」


その誠実な対応に人々は感心するが、同時にこそこそと囁く。

「やっぱり顔こわいな……」

「でも有能すぎるんだよな……」


完璧な仕事ぶりと、顔の怖さ。

このギャップが、ライの日常には常に付きまとっていた。



---


そんなときだった。


「にゃあああああ!」

「きゃあああああ!」


大通りの奥、細い路地裏から妙な叫び声が響いた。

猫の鳴き声と女の子の悲鳴が重なっている。


ライは迷わず駆け出した。

「助けを呼ぶ声だ」


路地裏に飛び込むと、そこには――。


地面に転がり、野良猫とパンの切れ端を奪い合っている少女がいた。

小柄な体にボロボロのワンピース。

背中からは確かに白い羽が生えている……が、羽毛は抜け落ちてあちこちスカスカ、今にもハリネズミになりそうな状態だった。


少女は必死にパンを抱きしめ、「これはわたしの昼ご飯だもん!」と叫んでいるが、猫にあっさり押し負けて「にゃああ!」と一緒に鳴いていた。


ライは素早く猫を追い払い、少女を抱き起こす。

「怪我はないか?」


少女はきょとんとした瞳でライを見上げた。

青空をそのまま閉じ込めたような、大きな水色の目。

その中に涙が浮かび、さらにお腹がぐぅぅぅぅ、と鳴った。


「……わたしは……セラ。天使……のはず、なの。でも……」


言いかけて、少女はポケットをごそごそと探る。

出てきたのは――

・干からびたパンくず

・ボタンが3つ

・なぜか小魚の干物

・そして半分溶けた飴玉。


「う、うわぁ……ポケット、カオスすぎません!?」

思わず声が出る。


セラは顔を真っ赤にし、「ち、違うの!わたし、天界から降りてきたときに……その……寄り道して……」とごにょごにょ。


さらに羽をぱたぱた動かして飛ぼうとするが――

「よいしょっ!」→バサッ!→ドサァッ!

見事に石畳に転んで膝をぶつける。


「いたた……!……でも、これくらい天使は平気だから!」と強がる姿は、どう見てもドジっ子そのもの。


ライは呆れ半分、心配半分で手を差し伸べた。

「……とにかく、立てるか」


セラはぎこちなく笑ってうなずくと、小さな声でつぶやいた。

「……あのね……大事なもの、なくしちゃったの。天使の輪……頭にあったはずなのに」


彼女の頭には、確かに光る輪などない。

あるのは少し乱れた髪だけだ。


セラはしょんぼりとうつむき、再びお腹がぐぅぅと鳴る。

そして小声で「これは……BGMだから……」と無理やり誤魔化した。


ライは静かにため息をつき、彼女の肩を支えた。

「事情は分からないが、放っておけないな」


その瞬間、セラは目を輝かせた。

「ほんとに!?助けてくれるの!?」


ライの懐中時計の針が「カチッ」と揺れ――。

「……ぐっ……」

鋭い腹痛が彼を襲った。


セラは慌てて両手をぶんぶん振る。

「やっぱり!わたし呪われ天使なんだぁぁぁ!!」


ライは顔をしかめながらも答える。

「……いや、これは僕の……持病だ……」


その場に、なんとも言えない沈黙が広がった。



---


ライがセラを連れて屋敷へ戻ると、ちょうど庭先でミーナが洗濯物を干していた。


「ライ様!お帰りなさ……えぇぇぇぇぇ!?な、なんですかその子!!」


目を丸くして指差すミーナ。

そこには、ボロワンピースの少女がライのマントにくるまれてちょこんと座っていた。

羽はぼさぼさ、顔はパンくずまみれ、手にはまだ野良猫に奪われかけた残飯を握りしめている。


「ああ……この子はセラ。天使……らしい」

ライが淡々と説明する。


「天使!?ぜっんぜん神々しくないんですけどぉぉ!」

ミーナが頭を抱える。


セラは「むっ!」と頬をふくらませ、ぐっと羽を広げた。

「わたしは天使だもん!……ただ、天使の輪を落としちゃっただけ……」


羽ばたこうとしたが――バサッ、ゴンッ!

勢い余って干してあったシーツに突っ込み、ぐるぐる巻きになって転がった。


「ひゃぁぁ!ミイラになった天使がいるー!」

ミーナが悲鳴をあげる。


ライは黙って彼女を助け起こし、シーツを外す。

セラは顔を赤くして「今のはウォーミングアップだから!」と必死に言い訳した。



---


そこへ、執事バルドが登場。

手にはティーポットを持ち、落ち着いた声で告げる。


「若様……また珍客を拾ってこられましたな」


「……またって言うな」

ライが眉をひそめる。


バルドはじろりとセラを一瞥し、ひげをなでながら毒舌を放った。

「輪を落とした天使など、ただの羽付き娘でございますな」


「ひ、ひどいっ!ちゃんと本物だもん!」

セラは涙目で抗議。


その隣でミーナがうんうんとうなずく。

「そうですよ!バルドさん!見てください、このポンコツ具合!絶対本物です!」


「ポンコツ言うなぁぁ!」

セラが床をばたばた叩いて抗議。


ライは小さくため息をつきつつも、膝を折って彼女の目線に合わせる。

「セラ。輪は僕たちも一緒に探そう。君一人では大変だろう」


その誠実な言葉に、セラの顔が一気にぱぁっと輝いた。

「……ほんとに!?助けてくれるの!?」


ぱちん、とライの懐中時計が音を立て、針がぐぐっと跳ね上がる。

「……っ……!」

ライは腹を押さえ、しゃがみ込む。


「ら、ライ様!?また恋腹ですかぁぁ!?」

ミーナが大慌てで駆け寄る。


セラは両手をわたわた振って涙目。

「やっぱりだ!わたし、呪われ天使なんだぁぁぁ!」


その場に変な空気が広がったところで――。


「ピュイ!」

可愛らしい鳴き声が響いた。


小さな影がぴょん、と机の上から飛び降りる。

手のひらサイズの小竜――モフドラだ。


ふわふわの毛に包まれたその小竜は、ライのお腹にぺたりと乗り、

「ぷしゅー」と湯気を吐きながら温め始めた。


セラは目をまんまるにして叫ぶ。

「ちっちゃいドラゴン!?しかも湯たんぽ機能付き!?かわいすぎるぅぅ!」


ミーナは胸を張って説明する。

「これがモフドラです!ライ様専属の腹痛ケア担当ですよ!」


セラはうっとりしながらモフドラをなで、羽をばさばさ揺らして大興奮。

「天界にもこんなかわいい子いないよ!すごい……癒しパワー……!」


ライは腹を押さえながらも苦笑し、立ち上がった。

「……とにかく、しばらくは屋敷で保護するしかないな」


「やったー!ご飯つき宿屋ゲットだぁ!」

セラが飛び跳ねる。

……が、頭を天井の梁にぶつけて「いたぁぁ!」と泣き出す。


バルドはティーカップを置き、しみじみとつぶやいた。

「天使とは……かように不器用でも愛される存在。若様、また胃痛の日々が始まりますな」


ライは顔をしかめ、セラはおでこをさすり、ミーナは「大丈夫ですかー!」と大騒ぎ。


こうして、路地裏で拾った“ドジかわ天使”セラが、グランツ侯爵家に加わることとなったのだった。


最後まで読んでくださってありがとうございます!

完璧すぎるのに恋愛だけポンコツなライと、ドジかわ天使セラ。

この二人の出会いから、すべての“百連敗物語”が始まります。


「ちょっと笑えた!」「ライ、がんばれ!」と思っていただけたら、

ぜひ**⭐評価や感想**で応援してもらえると嬉しいです!

作者の胃も、若様の腹痛も、それで少しは楽になります(たぶん)。


次回――天使と侯爵の、予想外に騒がしい共同生活が始まります!

どうぞお楽しみに!


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