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完璧侯爵様、恋するとお腹が痛いんです —恋すると腹がキリキリする侯爵様の100連敗—  作者: ヨーヨー
第1章 貴族令嬢 クラリス

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8/100

第8話 若様、ケーキと恋腹の大作戦

今回はライが“料理男子”に挑戦!

クラリスのために厨房に立ち、真剣そのものの表情でケーキ作りに奮闘します。

ただし、横ではミーナの暴走演出、モフドラのチョコまみれ事件、そしてバルドの毒舌が炸裂。

せっかくの甘い雰囲気は、毎度のごとくドタバタ喜劇へ……。

それでも「ありがとう」と込められたケーキの一文字は、ライの想いを確かに映しているのです。


ケーキ好きな人はぜひ★【ブックマーク】★してってくださいね!

王都の朝、グランツ邸の厨房から甘い香りが漂っていた。

「若、今日はやけに気合が入っておられますな」

執事バルドがひょっこり顔を出す。鍋をかき混ぜているのは、ライオネル・フォン・グランツ――通称ライ。侯爵家の嫡男にして、何でもできる完璧人間……ただし、顔が怖い。


「今回は失敗できない。クラリス嬢に渡すケーキだ。甘いものがお好きと聞いた」

ライは真剣な目で卵を割る。

片手でトンッとやると、黄身と白身がきれいにボウルに落ちた。手つきは完璧。


「恋に勝つには胃袋から、ですな」

バルドは腕を組んでニヤリ。


「なら横断幕も必要ですね!“甘さは愛の証!”って文字を金粉で描いて――」

横で侍女ミーナが勝手に段ボールを広げている。


「やめろ、それは胃袋より重い…!」

ライは即座にツッコミを入れるが、ミーナはどこ吹く風。


その時、棚の上から小さな影が飛び出した。

掌サイズの小竜、モフドラだ。

「ぷしゅー!」

ちょこんと台の上に乗り、口から小さな炎を吐いてチョコを溶かし始める。


「よし、その温度だ。…って、強すぎる!焦げる!」

次の瞬間、チョコが黒い塊に変身。

ライは慌てて木べらでかき回す。

「これではビターチョコを超えて炭だ!」

モフドラは「きゅうぅ」と情けない声を上げて頭を下げた。


それでもライの腕前は確かで、スポンジはふっくら焼き上がった。

「さすが若。見た目は完璧でございます」

「見た目は、か…」

バルドの一言が胸に刺さる。

ライは気を取り直し、チョコペンをとった。


そして「ありがとう」と書こうとした瞬間、懐中時計の針がグッと上がる。恋腹の前兆――腹の奥がムズムズする。手が小刻みに震え、文字がグニャリ。


「私が代わりに!」

ミーナが飛び込み、サッと書き込む。

「ありが豆腐!」

「なぜ豆腐なんだ!?」

ライの怒声が響き、慌ててクリームで消す羽目になった。


やり直した結果、震えた字で「ありがとう」と完成。少し歪んでいるが、気持ちはこもっている。

「……まぁ、読めますな」

バルドの評価は相変わらず辛口だ。


その横で、モフドラがイチゴをパクッ。口のまわりを真っ赤に染めて「きゅぅ」と鳴いた。

「お前は飾りを食べるな!」


極めつけに、ミーナの仕掛けた紙吹雪が途中で爆発。厨房に舞う白い紙片。

「若、まるで結婚式場のようでございますな」

「まだ始まってもいない!」


ライは鏡に映る自分を見て深呼吸した。

「僕は完璧だ。——恋以外はね」

だが懐中時計の針は“むずっ”レベルで震えている。嫌な予兆を残したまま、クラリスを迎える準備が整った。



---


その日、クラリスがグランツ邸に到着する。

「まあ…いい香りがしますね」

ドアを開けた瞬間、甘い匂いに目を輝かせるクラリス。


ライは堂々と銀のトレイを差し出した。

「手作りのモンブランです。ぜひ召し上がってください」

クラリスは驚き、そして一口。


「こんな味、初めてです」

ふわりと笑う彼女に、ライの胸がドクンと跳ねる。

懐中時計の針がさらに上がり、“きりきり”の手前。

腹を押さえながらも、ライは必死に笑顔を保った。


その裏で――

「紙吹雪いまだ!」

ミーナが再びトリガーを引こうとした瞬間、バルドの杖がスパーンとその手を弾いた。

「若、演出は控えめに。味で勝負でございます」


クラリスは微笑んだまま、もう一口モンブランを食べる。

ライは内心(よし…今回は順調だ)とガッツポーズを取った――もちろん顔は怖いままだったが。



大きなケーキを両手で抱え、ライはクラリスの前にそっと置いた。

上にはチョコで「ありがとう」と書かれたプレート。真面目な字で、飾り気はないけど不思議と力強い。


「まぁ……!」

クラリスは目を丸くして、思わず手を口にあてた。

「こんなに立派なケーキを、一人で作られたのですか?」


ライはうなずき、真剣な顔で答える。

「はい。材料の配合は領地の商会から取り寄せ、焼き加減は農家の竈を観察して研究しました。温度管理も——」


「いや、ケーキってもっと気軽に作るもんじゃないの!?」

横でミーナが思わずつっこんだ。


クラリスはクスッと笑う。

「本当に…研究熱心な方なのですね」


ライは少し頬を赤らめながらケーキを切り分けた。

クラリスが一口食べる。

「……とってもおいしいです」


その言葉に、ライの胸の奥で何かが跳ねる。懐中時計の針が「ググッ」と大きく動き、腹が“キリキリ”と痛み出した。

「っ……」思わず腹を押さえるライ。


「今です、告白です!」

耳元でミーナがささやく。


「お待ちください、先に胃腸薬を」

冷静に薬を差し出すのはバルドだ。


ライは深呼吸し、なんとか声を出そうとする。

クラリスも不思議そうにこちらを見ている。


──その瞬間だった。


机の端にいたモフドラ(手のひらサイズの小竜)が、甘い匂いに釣られてチョコソースの器へダイブ!

「ぷしゅぅぅ!」と湯気を出しながら、全身チョコまみれに。


「うわっ!」ライが驚いてのけぞった拍子に、ケーキのクリームが顔面にベチャッ。

鼻から顎まで白一色。


「ふ……ふふっ……!」

クラリスがこらえきれず吹き出した。ついには大笑いしてしまう。

「ごめんなさい…!でも、こんなに楽しいお菓子パーティーは初めてです」


ライは必死で顔を拭きながら、真面目に言う。

「い、いまのは完全に計算外で……!」


場の空気は完全にコメディ。

告白のタイミングなど跡形もなく消え去っていた。


クラリスは笑顔で立ち上がり、スカートの裾を整える。

「ライ様、本当に面白い方ですね。今日は素敵な時間をありがとうございました」


ライは深く頭を下げ、「…また必ず挑戦します」と心の中で誓った。



---


その夜。鏡の前で、ライはひとり呟く。

「甘さは伝わった。けれど……想いはまた届かなかった」


懐中時計の針はまだ高いまま。腹はじんわりと痛む。


背後でバルドが静かに一礼し、毒舌を放った。

「若様、甘さは十分。苦みは若の胸中だけでございます」


ライはため息をつき、ぽつりとつぶやく。

「……僕は完璧だ。恋以外はね」

お読みいただきありがとうございました!

今回の執筆で意識したのは、「甘い恋」と「苦い失敗」を同時に描くこと。

ライは完璧に見えても、恋心の前ではどうしても腹痛やドジに振り回されてしまう。

でもクラリスが心から笑ってくれた瞬間、彼の努力はちゃんと報われている気がします。

次こそは告白……できるのか? それともまたモフドラの“ぷしゅ〜”で台無しになるのか?

どうぞ続きも楽しみにしていてください。


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楽しんでいただけましたか?

☆評価もらえたらケーキ作ろうかな!

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― 新着の感想 ―
拝読いたしました! “恋で腹痛”という奇抜な体質設定が最高に光っています! 侯爵家の完璧超人ライオネルが、恋をするとお腹が痛む「恋腹」体質というギャップだけで掴みは万全。 剣も魔法も経済も完璧なの…
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