第78話 おばあちゃん、子供に好かれる!?
今回の舞台は、王都近くで開かれる「収穫祭」。
屋台で飴を売ることになったライとフローラが、またしてもドタバタを繰り広げます。焦げる鍋、子どもたちの大歓声、そしてライの“顔が怖すぎて泣かれる事件”まで……。笑いの中にちょっぴり切ない秘密が混じる回になりました。
もし「続きが気になる」「この先どうなるんだろう」と思っていただけたら、ぜひブックマークをしていただけると嬉しいです。物語を追いかけやすくなりますし、作者の励みにもなります!
王都近くの村で、毎年恒例の「収穫祭」が始まろうとしていた。
秋の実りに感謝し、村人たちが集まって歌い、踊り、屋台を出す。子どもから大人まで楽しみにしている一大イベントだ。
「ほっほっ、こういう場では飴が一番じゃ。わしも——いや、わたしも屋台を出してみたい」
フローラが言い出したのは前日のこと。彼女の飴作りの腕前は、すでに屋敷の使用人たちの間でも評判になっていた。しかもただ甘いだけではなく、ミントとハチミツ、少しの薬草を混ぜた「妙にクセになる飴」だ。
「面白い。君の飴で子どもたちを笑顔にできるなら、僕も力を貸そう」
ライは胸を張った。侯爵家の嫡男として、領民の祭りを盛り上げるのは誠実な務めだと信じている。
だが――。
「……うぐっ!?」
ライが鍋をかき混ぜた瞬間、黒い煙がもくもくと上がった。
「若様!鍋が!鍋が炭になってます!」
ミーナが慌てて叫ぶ。
「顔が怖いのに、鍋まで怖くするなんて、芸術ですわね……」
ルチアは冷静に毒を吐いた。
ライは真っ赤になりながら鍋を下ろす。
「な、なぜだ……手順通りにやったはずなのに……」
フローラが肩をすくめた。
「火加減じゃ、火加減。飴は繊細なもんでな。ほれ、わたしが横で見ておるからもう一度やってみい」
彼女は年寄りのように指をさしそうになって、慌てて咳払いでごまかす。
「……いえ、えっと、横で見ておりますから」
二度目はフローラが水の量を調整し、火から下ろすタイミングを合図する。ライは額に汗をにじませながら慎重に鍋をかき混ぜ、透明な琥珀色ができあがった。
「……成功、か?」
「うむ、これなら大丈夫じゃ」
ほっと胸をなでおろすライ。その横でルチアはこっそり出来たてをつまみ食いし、
「兄様、この飴……甘さの奥に黒魔術の味がします!」
「それはお前の舌が悪いんだろう!」とライが即座に突っ込む。
---
やがて収穫祭が始まり、屋台は人であふれた。
「フローラお姉ちゃんの飴ちょうだい!」
「昨日のあの味が忘れられないんだ!」
子どもたちが次々に列を作り、フローラは一人ひとりに笑顔で飴を渡していく。
ライも横で手伝うが——。
「……ひっ! ライ様こわい!」
配った瞬間、幼い子どもが泣き出した。
「くっ……、僕はただ渡しただけだぞ……」
ライは慌てて手を引っ込める。
すると、列の中の少年がきょとんとした顔で言った。
「でも、この飴……形がすごくきれい。誠実な形だ!」
「……誠実な形、か」
ライは一瞬、胸を打たれたように呟いた。
後ろで聞いていたバルドがぼそっと言う。
「若様、ただの丸飴でございます」
「う、うるさい!」
---
屋台はその後も大盛況だった。
だがフローラは、子どもたちに笑顔で飴を配りながら、ふと手元を見て青ざめる。
——指の関節に、深い皺が浮かびかけていたのだ。
「……!」
慌てて手袋をはめ直す。
すぐ隣でルチアが小声でささやく。
「フローラ様、今の……」
「熱で手が荒れただけですわ!」
と声を張り上げるルチア。
ライは気づかず、飴を受け取った子どもたちを見て微笑んでいた。
「フローラ、君は本当に子どもたちに慕われているな」
フローラは胸がちくりと痛み、けれど笑顔を崩さずに答えた。
「……そうかの。いや、そうですわね」
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王都近くの村で、毎年恒例の「収穫祭」が始まろうとしていた。
秋の実りに感謝し、村人たちが集まって歌い、踊り、屋台を出す。子どもから大人まで楽しみにしている一大イベントだ。
「ほっほっ、こういう場では飴が一番じゃ。わしも——いや、わたしも屋台を出してみたい」
フローラが言い出したのは前日のこと。彼女の飴作りの腕前は、すでに屋敷の使用人たちの間でも評判になっていた。しかもただ甘いだけではなく、ミントとハチミツ、少しの薬草を混ぜた「妙にクセになる飴」だ。
「面白い。君の飴で子どもたちを笑顔にできるなら、僕も力を貸そう」
ライは胸を張った。侯爵家の嫡男として、領民の祭りを盛り上げるのは誠実な務めだと信じている。
だが――。
「……うぐっ!?」
ライが鍋をかき混ぜた瞬間、黒い煙がもくもくと上がった。
「若様! 鍋が! 鍋が炭になってます!」
ミーナが慌てて叫ぶ。
「顔が怖いのに、鍋まで怖くするなんて、芸術ですわね……」
ルチアは冷静に毒を吐いた。
ライは真っ赤になりながら鍋を下ろす。
「な、なぜだ……手順通りにやったはずなのに……」
フローラが肩をすくめた。
「火加減じゃ、火加減。飴は繊細なもんでな。ほれ、わたしが横で見ておるからもう一度やってみい」
彼女は年寄りのように指をさしそうになって、慌てて咳払いでごまかす。
「……いえ、えっと、横で見ておりますから」
二度目はフローラが水の量を調整し、火から下ろすタイミングを合図する。ライは額に汗をにじませながら慎重に鍋をかき混ぜ、透明な琥珀色ができあがった。
「……成功、か?」
「うむ、これなら大丈夫じゃ」
ほっと胸をなでおろすライ。その横でルチアはこっそり出来たてをつまみ食いし、
「兄様、この飴……甘さの奥に黒魔術の味がします!」
「それはお前の舌が悪いんだろう!」とライが即座に突っ込む。
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やがて収穫祭が始まり、屋台は人であふれた。
「フローラお姉ちゃんの飴ちょうだい!」
「昨日のあの味が忘れられないんだ!」
子どもたちが次々に列を作り、フローラは一人ひとりに笑顔で飴を渡していく。
ライも横で手伝うが——。
「……ひっ! ライ様こわい!」
配った瞬間、幼い子どもが泣き出した。
「えっ!? 僕はただ渡しただけだぞ!?」
ライは慌てて手を引っ込める。
すると、列の中の少年がきょとんとした顔で言った。
「でも、この飴……形がすごくきれい。誠実な形だ!」
「……誠実な形、か」
ライは一瞬、胸を打たれたように呟いた。
後ろで聞いていたバルドがぼそっと言う。
「若様、ただの丸飴でございます」
「う、うるさい!」
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屋台はその後も大盛況だった。
だがフローラは、子どもたちに笑顔で飴を配りながら、ふと手元を見て青ざめる。
——指の関節に、深い皺が浮かびかけていたのだ。
「……!」
慌てて手袋をはめ直す。
すぐ隣でルチアが小声でささやく。
「フローラ様、今の……」
「熱で手が荒れただけですわ!」と声を張り上げるルチア。
ライは気づかず、飴を受け取った子どもたちを見て微笑んでいた。
「フローラ、君は本当に子どもたちに慕われているな」
フローラは胸がちくりと痛み、けれど笑顔を崩さずに答えた。
「……そうかの。いや、そうですわね」
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
収穫祭の回は「賑やかな場面の中に、それぞれのキャラの素顔をどうにかして忍ばせたい」と思いながら書きました。特にライの“誠実なのに怖がられる”ギャップと、フローラの隠しきれない秘密が、読んでくださる皆さんに届いていたら嬉しいです。
もし少しでも「面白かった!」「キャラが好きになった!」と感じていただけたら、ぜひ評価(★)や感想で応援していただけると幸いです。読者の声が次の執筆のエネルギーになっています。これからも侯爵家のドタバタを楽しんでもらえるよう頑張りますので、よろしくお願いします!
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