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完璧侯爵様、恋するとお腹が痛いんです —恋すると腹がキリキリする侯爵様の100連敗—  作者: ヨーヨー
第8章 孫娘侍女 フローラ

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75/100

第75話 おばあちゃん、買い物に行く!?

こんにちは、作者のヨーヨーです!

今回は「市場でのおつかい回」。ライ様の誠実さ、フローラ(中身はおばあちゃん)のうっかり口調、そしてミーナの全力ツッコミ……読んでいてクスッと笑える一幕になったと思います。


「続きが気になる!」「もっと読みたい!」と思っていただけた方は、ぜひブックマークをお願いいたします。あなたの一押しが、物語を最後まで走らせる力になります!


王都の朝はにぎやかだった。


パンの焼ける匂いと、馬車の車輪のきしむ音が石畳に響いている。


その日の侯爵家では、買い物当番が決まっていた。


執事バルドが木製の板に書かれた買い物リストを差し出す。

「若、干し肉に豆、それから保存壺と香辛料、包帯も。腹痛薬は……本日は見送りでよろしいですな」


ライはこほんと咳払いし、視線をそらす。

「……無駄遣いはよくないからな」


ミーナが布袋を両手で抱え、元気よく声をあげる。

「はいっ!小銭と注文票は全部この中に入れてあります!」


そしてもうひとり――フローラ。

“孫娘”として屋敷に入ったばかりの彼女が、今日は買い物カゴ担当だ。

大きな柳のかごを抱えながら、ぎこちない笑みを浮かべる。


「ま、参りましょうかの……じゃ、じゃなくて。参りましょう」


おばあちゃんのような口ぶりが出そうになり、あわてて言い直す。

ミーナがこっそり肘でつつき、「今の“かの”はアウトですよ」と小声で注意した。

フローラは「わかっとる、わかっとる……いや、わかっております」とごまかす。


三人は石畳を歩き、王都の大市場へと向かった。



---


市場は朝から人でいっぱいだった。

パン屋の前では焼き立てを買い求める人々が列をなし、布屋の軒先には鮮やかな布が風にはためいている。

魚屋からは潮の匂いが漂い、果物屋の籠には赤いリンゴが山のように積まれていた。


そんな中で、行き交う人たちがふと足を止め、フローラを見てひそひそ声を交わす。


「……あれ、“アメ配りおばあちゃん”に似てないか?」

「そっくりだな。若い頃って感じだ」


フローラは耳に届いた言葉に、思わず腰のポケットへ手を伸ばしそうになる。

――だが、そこに入っているはずのアメはない。出発前にミーナに預けてきたのだ。


「……ふう、今日は“孫娘”じゃから……いや、孫娘“ですから”」

小さくつぶやいて自分を落ち着かせる。


「フローラさん、落ち着いて!“ばあちゃん口調”が出てますよ!」

ミーナがあわててフォローするが、横でライは気にも留めていない。

人混みを真剣に観察していた。


「今日は豆の入荷が多いな。価格が少し下がっているはずだ」

ライが目を細めると、ミーナは「すごい!」と素直に感心した。



---


一行は最初の目的地――豆屋へ入った。

木桶いっぱいに積まれた乾燥豆の山が、店の奥までずらりと並んでいる。

しかし店主は困ったように頭をかいていた。


「どうしたのですか?」ライが尋ねる。

「へえ、今週は入荷が多すぎて……在庫が減らねえんです。値を下げりゃ損になるし、積んどきゃ虫が湧くし」


ライはすぐに状況を読み取る。

「なるほど。まとめ買いと分割納入を組み合わせればいい」


そう言って、顎に手を当てた。

「こちらで数袋まとめて買い、残りは来週と再来週に分けて受け取る。そのかわり、保存袋を付けてくれれば店にも利益が出る」


店主の目が見開かれる。

「なるほど、そいつぁいい!」


フローラは横でそっとつぶやく。

「信用は……育つもんじゃ。今日の一袋より、来週の約束を太く……いえ、太く“していきましょう”」


思わずおばあちゃん口調が出てしまい、慌てて直す。

ミーナは苦笑しながら帳簿に印をつけた。



---


取引が成立すると、店主の子どもが駆け寄ってきた。

手にしていたのは木で作ったおもちゃのアメ玉。

「おねえちゃん、これあげる!」


フローラは受け取って、にっこり笑う。

「ほっ……ほ、本当にありがとう」


ライはその横顔を見て、胸がほんのり熱くなる。

しかし同時に、懐中時計の針がぐぐっと動き、腹に鈍い痛みが走った。


「……む、またか……」


モフドラが彼の肩からするりと下り、ちょこんとお腹に乗る。

プシューと小さな湯気を吐き、温めてくれる。


フローラはその様子を見て、ふっと笑った。

「便利な子ですのう……じゃなくて。かわいい竜ですわね」


ミーナは「はい!モフドラは兄様専属の腹痛ケア担当ですから!」と胸を張る。


ライは少し赤い顔でうなずいた。

「……まあ、助かっているよ」



---


こうして一行の買い物は、まだ始まったばかりだった。


豆屋を後にして、三人と一匹は市場の奥へと進んだ。

今度は魚屋の前で人だかりができている。


桶には新鮮な川魚がびっしり並んでいたが、店主の顔は冴えない。

「今朝は冷たい風が弱くてよ。氷も足りねぇし、このままじゃ魚が悪くなっちまう……」


ミーナが心配そうに小声でつぶやく。

「せっかく新鮮なのに……」


ライはじっと桶を見つめた。魚の鱗の色や、桶の中の水の温度まで確かめる。

「なるほど。氷が不足しているのか」


フローラも横からのぞきこみ、ぽつりと言った。

「昔は井戸の底に麻袋で魚を沈めておいたもんじゃ。水は冷たいし、陽に当たらんで長持ちする」


「あっ!おばあちゃん口調!」

ミーナが慌てて指さす。


「……わ、わたしが聞いたことがある話、です!」

フローラは顔を真っ赤にしながら取り繕った。


ライはそんな二人のやり取りを気に留めず、すぐに案を出す。

「井戸を使うのも悪くない。だが、市場の客に持ち帰らせるには工夫がいるな」


彼は鞄から紙とペンを取り出し、さらさらと絵を描く。

「藁と布を二重にして袋を作り、中に魚を入れて井戸水で冷やす。客にはそのまま持ち帰ってもらう。数日は持つはずだ」


店主は目を丸くする。

「そんなやり方があるとは……!ありがてぇ、ありがてぇ!」


フローラはうなずきながら、ぽそりと本音をもらす。

「ほんに……あの子は昔から頭が回る子で……」


「だから!おばあちゃんみたいな言い方はやめてくださいってば!」

ミーナがすかさずツッコミを入れる。



---


買い物を済ませ、三人は市場を歩いて屋敷へ戻った。

夕方の風は心地よく、街路樹の葉がかさりと揺れる。


フローラはカゴを抱えながら、少し柔らかい笑みを浮かべた。

「市場の人らは、よう働いておるの……いや、働いていますね」


ライは歩調を崩さず、静かに返す。

「彼らの暮らしが王都を支えている。僕はその営みを守らなくてはならない」


その誠実な横顔に、フローラの胸がちくりと痛んだ。

正体を隠している自分が、ほんの少し後ろめたくなる。


そのとき、ライの懐中時計がかすかに音を立て、針が揺れた。

彼は立ち止まり、腹を押さえる。


「う……っ……」


すぐにモフドラが駆け寄り、彼のお腹にぴたりと張りつく。

プシューと湯気が立ち、温かい空気が流れた。


「兄様、またですか!」ミーナが慌てる。

ライは顔をしかめつつも、かろうじて笑みを作った。

「……大丈夫だ。誠実に……歩けば、腹も落ち着く」


フローラはそんな彼を見つめ、思わず口の端をほころばせた。

「無理をする子じゃのう……あっ、無理をする方ですわね」


ミーナが「今のはセーフです!」と笑い、ライは「何がだ?」と首をかしげる。



---


こうして、にぎやかだった市場でのおつかいは無事に終わり、夕暮れの光の中を三人と一匹は屋敷へ帰っていった。


その背中はどこか温かく、まるで小さな家族のように見えた。




最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

ライ様の“誠実トラブル解決”と、フローラの“口調事故”は書いていて楽しくて、つい筆が進みました。市場の人々とのやり取りが少しでも温かく伝われば嬉しいです。


もし少しでも面白いと思っていただけたら、ぜひ評価や感想をお寄せください。読者の皆さんの声が、次のドタバタを生み出す何よりの原動力になります!


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楽しんでいただけましたか?

ぜひ☆評価で作者のやる気が上がります!

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