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完璧侯爵様、恋するとお腹が痛いんです —恋すると腹がキリキリする侯爵様の100連敗—  作者: ヨーヨー
第8章 孫娘侍女 フローラ

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73/100

第73話 おばあちゃん、縫い物がお上手!?

こんにちは、作者のヨーヨーです!

今回のお話は「裁縫」から始まるドタバタ劇です。新人侍女(中身はおばあちゃん)のフローラが、見事すぎる裁縫スキルを披露してしまい……そこから恋腹の発動までつながるとは、ライも想定外だったでしょう。


物語はまだまだ続きますので、「面白そうだな」と思っていただけたらぜひブックマークして読んでいただけると嬉しいです! ブクマが次のお話を書く大きな力になりますので、どうぞよろしくお願いします!

王都・グランツ侯爵家の執務室。


昼下がりの光が差し込む中、若き跡取り――ライオネルは分厚い報告書に目を走らせていた。


「……ここ、数字が違うな。銅貨百二十枚でなく、銀貨十二枚だ」


たった一瞬で誤りを見抜き、さらさらと書き直す。

兵士あがりの書記官たちは「ひえぇ……」「また一瞬で……」と顔を見合わせる。


完璧。

――そう、顔以外は。


ライがほんの少し微笑むと、全員が同時に背筋を伸ばし、カタカタ震える。

「ひぃっ、怒ってるようにしか見えねぇ!」と勘違いされ、場は変な緊張感でいっぱいになった。



---


一方そのころ、侍女部屋では別の騒動が起きていた。

大きなテーブルの上に積まれたのは、古くなったクロスや破れたシーツの山。


「今日中に直せって言われても……」

ミーナが弱音を吐いた瞬間。


「裁縫なら、わしに任せるんじゃ!」


元気よく名乗りをあげたのは、新しく侍女として迎え入れられた娘――フローラ。

見た目は若々しい十八歳前後の娘だが、その口調にはどこか“おばあちゃんっぽさ”が混ざっている。


ミーナは目を丸くする。

「フローラさんって裁縫できるんですか?」


フローラは得意げに針を手に取る。

「できるどころか、縫い物は朝飯前じゃ。昔から……い、いや、若いころからずっと得意での」


「昔からって言っちゃってますよ!」

すかさずルチアが小声で突っ込む。


だがフローラはお構いなし。

針をスッスッと進めていき、みるみるうちに破れがふさがっていく。

その手さばきの速さと正確さに、ミーナは目を輝かせた。


「わぁ! 新品みたいになってる!」


「ほっほ、まだまだいけるぞい」

フローラは調子に乗って次々と縫い直していく。

確かに技術は本物――だが、口から漏れるのはどう聞いても“老成した掛け声”だった。


ルチアは机に突っ伏しそうになりながら、必死に制止する。

「フローラ!お願いですから“じゃ”とか“わし”とか言わないで!若い侍女なんだから!」


「お、おお……そうじゃった、いや、そうだったわ」

フローラは慌てて言い直すが、遅い。

ミーナは「やっぱりどこかおばあちゃんぽい……」と首をかしげている。



---


数刻後。

フローラが仕上げたテーブルクロスを見て、周囲の使用人たちは大喜びした。


「縫い目がそろってる……!職人みたいだ!」

「新人なのにすごいな!」


場がわっと盛り上がる中、執務室から戻ってきたライが姿を現す。


「何の騒ぎだ?」


フローラが完成したクロスを掲げ、にこりと笑って差し出す。

「これ、わたしが縫ったんです」


ライは一歩近づき、じっと針目を見つめた。

「……見事だ。糸の締め具合、端の折り方……ん?昔見たシエラ殿の縫い方に、よく似ている」


ルチアの顔から血の気が引いた。

「そ、それは! そうです!おばあさまから教わったに決まってます!」


フローラも慌てて口を合わせる。

「う、うむ、その通り……いや、そうです!」


しかし、その語尾にほんのり“おばあちゃん臭”が混ざり、場の空気がピキリと凍る。


ミーナは慌てて笑顔を作った。

「フローラさんってすごいですよね!おばあちゃん直伝の技なんて、もう安心感ハンパないです!」


「お、おばあちゃん直伝……」

フローラは内心「わしがそのおばあちゃんじゃ!」と叫びながら、ぎこちなく笑った。


ライは裁縫の仕上がりをじっと見つめていた。

その眼差しは鋭いはずなのに、不思議と温かさを含んでいる。


「この縫い方……ただの技術ではないな」


フローラは内心で冷や汗をかいた。

(あ、あかん……バレる……!これは完全に“わしの昔の縫い方”じゃ!)


ライはさらに言葉を続ける。

「布に“人を大事にする気持ち”が込められている。……まるで、祖母の仕事を見ているようだ」


「ひ、ひぃっ!!」

ルチアが青ざめて声を上げる。

ミーナも慌てて笑顔を作り、手をぶんぶん振った。

「そ、それは!そうです!フローラさんは“おばあさま直伝”なんですよ!ね、フローラさん!」


「そ、そうじゃ、いや、そうです!祖母に叩き込まれましてな!」

フローラは慌てて言い直すが、つい語尾に「じゃ」が混ざってしまう。


ライは小さく首を傾げた。

「……やはりどこか懐かしい響きがあるな」


その一言にフローラの心臓が跳ね上がる。

(や、やばい!もっと自然に若者っぽく振る舞わねば!)


フローラはぎこちなく微笑んだ。

「わ、わたしは……若いんです!まだまだこれから、青春まっさかりなんです!」


「……青春まっさかり?」

ライが真剣な顔でつぶやいた瞬間――


ぐぎゅるるるるるっ!


ライのお腹が鳴った。

いや、正確には“鳴った”のではない。

例の――“恋腹”が発動したのである。


「っ……! く、苦しい……!」

ライは腹を押さえ、顔を歪めた。


「兄様ーーー!!」

ルチアが悲鳴を上げる。


「で、出たぁぁぁ!恋腹だぁぁぁ!」

ミーナが半泣きで駆け寄る。


フローラはパニックに陥った。

「な、なにゆえ!?わしが……いや、わたしが縫い物を褒められたくらいで!?そ、そんなことで恋腹が!?」


ライは息を荒げながら苦笑する。

「……心を込めた手仕事を前にすると……胸が、締めつけられるんだ……!」


「恋腹の発動条件が細かすぎますよ兄様ぁぁぁ!」

ルチアが机をバンバン叩く。


その時、テーブルの上から小さな影がぴょこんと飛び降りた。

手のひらサイズの小竜――モフドラだ。


「ピュイ!」


モフドラはお腹にドスンと飛び乗り、ライの腹を温める。

じわじわと湯気が立ちのぼり、苦しむライの顔が少しずつ和らいでいく。


「……ふぅ、助かった」

ライは額の汗を拭い、深く息を吐いた。


フローラは胸をなで下ろすが、その内心はぐらぐらだった。

(わしが若返ったせいで……まさか恋腹まで誘発してしまうとは……! 責任重大じゃ!)



---


そんなドタバタ劇を、扉のそばでじっと眺めていた人物が一人。

執事バルドである。

彼は眼鏡をくいっと上げ、涼しい声で言い放った。


「若様。“恋に効く縫い針”……とでも名付けましょうか」


「誰がそんなものを望んだのですかぁぁぁ!!」

ルチアとミーナが同時に叫び、部屋の中は再び爆笑と混乱に包まれた。



---


こうして、フローラの正体を隠したまま迎えた一日も――

騒がしく、そして妙に温かい空気で終わりを告げたのだった。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

「裁縫の腕前」で恋腹が発動するなんて、作者としても書きながら笑ってしまいました。フローラの“じゃ口調”も、ルチアとミーナのツッコミも、どんどんエスカレートしてきて楽しい回でした。


もし「クスッとした」「続きが気になる」と思っていただけたら、ぜひ評価や感想で教えてください! 皆さんの声が、ライやフローラたちをもっと活躍させる原動力になります。

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楽しんでいただけましたか?

ぜひ☆評価で作者のやる気が上がります!

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まとめサイトはこちら!

https://lit.link/yoyo_hpcom

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