第71話 おばあちゃん、まさかの若返り!?
こんにちは、作者のヨーヨーです!
今回のお話は「アメ配りおばあちゃん」ことシエラが、まさかの展開を迎える回になります。
侯爵家の日常に、ちょっとした魔法のハプニングが混ざると……どうなるか。コメディらしく、ドタバタと進んでいきます。
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続きを書く力がぐんぐん湧いてきますので、どうぞよろしくお願いします。
王都の昼下がり。
市場通りの片隅に、ひときわ目立つ人物がいた。
小柄な体に分厚いショール、腰の曲がった老婦人――シエラおばあちゃんである。
このおばあちゃん、ただの通行人ではない。
王都に住む者なら誰もが一度は出会ったことがある“アメ配りおばあちゃん”だ。
大きなポケットには、なぜかいつもカラフルなアメがぎっしり詰まっていて、通りかかる子どもや若者に笑顔で差し出してくれる。
「ライ様、よう働いとるの。ほれ、アメじゃ」
その日も例外なく、名門侯爵家の若き跡取り――ライオネルにも声をかけた。
ライは背筋を伸ばしたまま、少し苦笑しながらアメを受け取る。
「……ありがとうございます。でも僕はもう子どもではないんですが」
「なに言うとるんじゃ。甘いもんは、大人の心を癒す薬みたいなもんよ」
シエラの皺だらけの手がひらひらと動く。
ライは「確かに」と呟き、小さな包みをそっと懐にしまった。
そのやりとりを横で見ていた侍女ミーナは、目を輝かせて口を挟む。
「ライ様って、アメをもらうとちょっと子どもっぽく見えるんですよね!」
すかさず執事バルドが冷静に言う。
「若様はアメ一粒でも誠実に受け取る……そこが人徳でございますな」
「褒めてるのかけなしてるのか分からんのう……」とシエラは苦笑した。
やがてライは、商人との打ち合わせのために建物に入っていった。
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シエラはふぅと息を吐き、腰をトントンと叩いた。
「まったく……ライ様は昔から真面目すぎるわい。アメくらい、もっと遠慮せず三つでも四つでも取ればええのに」
ルチアが腕を組み、きっぱり言う。
「兄様はそういう人ですから。アメ一粒にだって必ず礼を言う。……でも、その真面目さが“顔の怖さ”で帳消しになってるのが兄様の欠点ですわ」
「ルチア様ぁ〜!」とミーナが両手をばたばた。
「でもおばあちゃん!ライ様、きっと大事に持って帰ってますよ!机に並べて“誠実な保管”とかしてそう!」
「なんじゃそりゃ」とシエラは吹き出す。
バルドは顎ひげをなでながら、落ち着いた声で続ける。
「若様の机の引き出しは……既にアメで八割ほど埋まっておりますな」
「ええええっ!?ほんとですか!?」ミーナが目をまん丸にする。
「……兄様、どんだけ溜め込んでるんですか……」とルチアが額を押さえる。
シエラは目を細め、しみじみと呟いた。
「……あのライ様が、わしのアメをそこまで大事にしてくれておるのか。ほっほ、嬉しいことじゃ」
すると、すかさずバルドが毒舌をひとつ。
「アメを抱えたにらみ顔……若様、見た目はさながら“甘味の守護者”でございますな」
三人が同時に「ぶはっ」と吹き出し、シエラは肩を震わせて笑った。
こうして、侯爵家を取り巻く“アメ配りおばあちゃん”の小さな日常は、今日も平和に続いていった。
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「……さて、おばあちゃん」
そう声をかけたのはルチアだった。ライの妹であり、黒魔術を得意とするまだ幼い少女だ。
「わたし、魔法の練習をしたいの。ちょっと付き合ってくれない?」
「いいぞいいぞ。退屈しとったところじゃ。わしの体なんぞ、練習台にいくらでも使うとええ」
シエラは気軽に笑って引き受けた。
横でミーナが「ええ!? 危ないですよぉ!」と青ざめる。
「大丈夫です。兄様は黒魔法使うなってうるさいの。兄様がいない間に、ちゃちゃっと済ませますから!」
ルチアは胸を張る。が、隣でバルドがぼそりと呟いた。
「止めても無駄ですからな」
その諦めきった声に、ミーナは「えぇぇ……」と情けない顔になる。
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ルチアは杖を取り出し、魔方陣を描いた。
黒紫の光が地面に広がる。
「いくわよ――“若さの再生”!10歳若返れー!!」
詠唱が終わった瞬間、眩しい閃光と同時に煙がもうもうと立ち込めた。
「ぎゃあぁぁ!また爆発したぁぁ!」
ミーナが両手で頭を抱える。
煙が晴れると――そこにいたのは。
腰も曲がらず、背筋がぴんと伸びた若い女性。
髪は艶やかに輝き、肌はつやつや。目には力が宿り、声まで張りがある。
「お、おやまあ……!膝も腰も痛くない!指もすいすい動く!走れそうじゃ!!」
……とうやらシエラのようである。
ただし“十八歳前後のシエラ”だった。
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「やっばああああーーー!!」
ルチアが頭を抱えて転げ回る。
「兄様に!兄様にバレたらわたし殺されるぅぅぅ!!」
「こ、これどうするんですかルチア様ぁ!」
ミーナが半泣き。
バルドは静かに眼鏡を押し上げて一言。
「ふむ、これは愉快な“若返り事故”でございますな。……しばらく隠すしかありますまい」
「若返り事故って……そんな軽く言わないでー!」
ルチアは床にへたり込み、シエラは自分の腕をぶんぶん振り回しては「若いって最高じゃー!」と感動している。
(――こうして、数十年ぶりかの“若いシエラ”が爆誕してしまったのである。)
屋敷の客間には、変に明るい空気が漂っていた。
若返ったシエラが椅子に腰かけて足をぶらぶらさせている。
「いやぁ、体が軽いのぉ! 指もよく動くし、声もはっきり出る。十代に戻った気分じゃ!」
彼女は嬉しそうに髪をかきあげ、鏡の前でくるりと回ってみせる。
それを見た侍女ミーナは、両手をぶんぶん振って大慌てだ。
「だ、ダメですってシエラさん!そんなに動いたら、絶対誰かに見られちゃいますよぉ!」
「でも動きたくなるんじゃ。だって若いんじゃから」
「だから若いって言っちゃダメぇぇ!」
部屋の隅では、黒魔術の使い手ルチアが床を転げ回っていた。
「おわった……おわったぁぁ……兄様にバレたらわたし魔法禁止……一生おやつ抜き……!!」
執事バルドはというと、淡々とお茶を飲んでいる。
「まことに見事な変身ぶり。……隠すのは骨が折れますな」
「なんでそんな冷静なんですかぁ!」
ミーナが涙目で叫ぶ。
「若返り事故なんて、普通はありえないんですよ!?」
「普通など、若様の周囲では無意味でございます」
その一言に、全員が納得してしまった。
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そこへ――。
「ただいま戻った」
低い声と共に、扉が開く。
背の高い影。鋭い目。
侯爵家の跡取りにして“完璧超人”ライオネルの帰宅である。
「ひぃぃぃ! 兄様帰ってきちゃったぁ!」
ルチアが床をバンバン叩いて暴れる。
「ど、どうしましょう!どうしましょう!」
ミーナは半狂乱でシエラを背中に隠そうとする。
「落ち着きなさい。……ここは老獪なる私の知恵で誤魔化しましょう」
バルドがすっと立ち上がった。瞳が、妙に光っている。
「老獪……!?」
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ライは室内を見回し、首をかしげた。
「……妙に騒がしいな。何かあったのか?」
「な、ななにもありませーんっ!」
ルチアとミーナが揃って声を張り上げ、両手をぶんぶん振る。
「……そうか」
怪しむライの視線が、隅に座っている若い娘に向いた。
彼女はにこりと微笑み、深々とお辞儀をする。
「はじめまして。フローラと申します」
ライは眉をひそめる。
「……フローラ?なんだか、シエラ殿と似ているような……」
その瞬間、バルドがすかさず前に出た。
「若様。こちらは“シエラ殿の孫娘”でございます」
「孫娘?」
「はい。おばあさまが日頃よりお世話になっている御礼に……屋敷で働かせていただきたいと」
「……なるほど」
ライは深く考え込むように腕を組む。
フローラは背筋をしゃんと伸ばし、口元を引き締めて言葉を継いだ。
「ほ、ほんに……いえ、そうなのです。祖母の代わりに尽くさせてもらいます」
「……若いのに、ずいぶん落ち着いた口ぶりだな」
ライはしばらくじっと見つめたが、結局うなずいた。
「まあいい。働きたいというなら歓迎する」
「や、やった……!」
ルチアとミーナは同時にへたり込み、胸をなで下ろした。
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こうして――。
“フローラ”は孫娘という名目でグランツ侯爵家に迎え入れられることになった。
もちろんライ本人は、彼女の正体――本当はシエラ本人であることなど、知る由もなかった。
だがその裏で。
(……若い体も悪くないのぉ。ふふふ)
フローラの笑みの奥に潜む“おばあちゃんのしたたかさ”を、誰も気づくことはなかった。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
今回は「アメおばあちゃん」ことシエラが大活躍(?)でしたが、いかがでしたでしょうか。
ライの誠実さとバルドたちのツッコミ、そしてシエラのしたたかさ……どれも作者としては書いていて楽しかった場面です。
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