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完璧侯爵様、恋するとお腹が痛いんです —恋すると腹がキリキリする侯爵様の100連敗—  作者: ヨーヨー
第7章 悪役令嬢 クラウディア

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70/100

第70話 悪役令嬢、断罪か?告白か!?

みなさま、本日もお読みいただきありがとうございます!

いよいよ舞踏会の夜――そしてクラウディアの「断罪イベント」が最大の山場を迎えます。

はたして彼女は破滅を避けられるのか、それとも……?


物語はいよいよ佳境へ。もし「続きが気になる!」と思っていただけたら、どうぞブックマークで応援していただけると励みになります!

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会場の空気は、まるで嵐の後の静けさだった。


さきほどまでユリウス王子が高らかに「断罪」を告げ、取り巻き令嬢たちがわめき散らしていたのに。いまは、誰も声を出さない。ただ、あちこちで息を呑む音と、重たいドレスの裾が擦れる音だけが響いていた。


(……わ、わたくし……生き残った!?)


胸を押さえたまま、心臓の鼓動がドンドンうるさい。

断罪イベントの大爆発でゲームオーバー――そんな未来を覚悟していたけれど、ライ様の介入で流れは逆転。王子も引き下がり、取り巻きたちはしょんぼりしている。

これって、完全に「助かったルート」じゃありませんの!?まさかの分岐成功!?もしかして裏ルート突入!?


「クラウディア様ぁ〜! お菓子食べ放題はまだやってますかね!?」

 緊張をぶち壊すように、ミーナが隅のテーブルを指さして大声を出した。

 そこには、まだ手をつけられていないチョコレートフォンデュやパイの山。観客席の一部から「くすっ」と笑いがもれ、重苦しい空気が一気にゆるむ。


そしてテーブルの下からひょこっと顔を出す白い影。

モフドラだ。

ちいさな体をぶるんと震わせると、「ぷしゅー」と湯気を吐き、溶けかけたマシュマロをくわえている。

「わ、わたしの分ー!」とミーナが走って追いかけ、会場はざわめきと笑いに包まれた。


(……え、なにこの場違いな平和感。断罪エンドのはずが、ただの文化祭イベントみたいになってません!?)


私がぐるぐると混乱していると、黒いマントの影がすっと近づいてきた。

ライ様だ。怖い顔のまま、しかし声は低く落ち着いていて――。


「クラウディア。……君に話したいことがある」


その言葉に、私の脳内で効果音が鳴り響いた。

(き、来たーー!! これは間違いなく“裏ルート専用イベント”! 絶対に恋愛CGが入るやつですわ!!)


私は頭の中でゲーム画面を想像してしまう。月明かりの下で差し込まれる特別立ち絵。テキストウィンドウに「クラウディア、君は――」とか出ちゃうやつ!


……けれど目の前のライ様は、いつもどおり怖い顔で私をじっと見つめている。これはこれで迫力満点。心臓に悪い。


「クラウディア様ぁ!チョコレートフォンデュいきます?それともケーキ派ですか?」

タイミング最悪なミーナの声。

私は「ちょ、今は黙りなさい!」と目で訴えたが、彼女は首をかしげている。どうやら通じていない。


「ご歓談中に失礼を。……若様、ここからが真の戦場でございますぞ」


後ろから低く響いたのは、執事バルドの声。

戦場!? え、ここで!?心臓がもう爆発寸前なんですけど!?

しかも、あの人、私の正体(転生者)に気づいている疑惑がある。こっちの戦場はもっと危ない。


気づけばライ様が私の前に手を差し伸べていた。

「少し外の空気を吸おう」

その言葉に会場の視線が集まる。

私はしどろもどろで手を取られ、エスコートされる形で歩き出した。

裾を持ち上げながら必死で取り繕うけれど、内心は叫びっぱなしだ。


(や、やっぱりこれは告白イベントですわ!月夜の庭園で二人きりとか、どう考えてもそういうシチュエーションですわー!!)


胸のドキドキを必死で抑えながら、私はライ様と共に会場を後にした。

ドアが閉まる瞬間、モフドラが「ぷしゅー」と湯気を吐いて見送ってくれる。その姿が、なんだか「行ってこい」と言っているように見えてしまった。



夜の庭園は、舞踏会の華やかな光とはまるで別の世界のようだった。

石畳の小道に沿ってランタンがいくつか置かれているが、光は弱く、月明かりが頼りになる。夜露を含んだ草花の匂いが風に乗って漂い、少しひんやりした空気が肌を撫でた。


私はライ様に導かれるように歩き、やがて噴水の前で足を止めた。

静寂。水の滴る音だけが響いている。

その静けさが、逆に心臓の鼓動を大きく感じさせる。

(な、なんですの、このイベント感……。完全に“恋愛スチル差分・夜の庭園Ver.”じゃありませんか!)


しかし隣のライ様は、いつもの“怖い顔”のまま。

口を開く前から、睨まれているような気がして心臓に悪い。

けれど、目を逸らすこともできなかった。


「クラウディア」

低く落ち着いた声が、月夜に溶ける。

私の背筋は勝手にピンと伸びた。


「僕は……完璧だと思われている。剣も、学問も、政務も。しかし、それでも僕には足りないものがある」

そこで彼は、まっすぐに私を見つめる。



「君だ。君を守りたい。僕は完璧ではないが、君のそばにいたい」



(き……来ましたわぁぁぁーー!!フルボイスで脳内再生されるやつ!絶対ここでCG入る!画面の端に花びらが舞うやつ!!)


頭の中では完全にゲーム脳が爆走していた。けれど現実の私は、喉が詰まって言葉が出ない。

胸の奥がぎゅっと締めつけられて、呼吸まで苦しくなる。

ああ、これが「恋腹」ってやつですのね。人ごとのように思っていたのに、いざ自分がその渦中にいると――。


私はゆっくりと首を振った。

「……ありがとう、ございます。けれど……わたくしは、この想いを受け取るわけには参りません」


ライ様の瞳がわずかに揺れる。

それでも彼は怒らなかった。

ただ、真剣なまなざしのまま、黙って聞いてくれている。

私は唇を噛み、言葉を続けた。

「私は“悪役令嬢”として、この学園に存在しています。ゲームのシナリオに組み込まれた存在……。そして――」

心の中でだけ、言葉を付け足す。

(転生者だから。この世界に恋してしまえば、元の自分が消えてしまう気がするのです)


すると、横の茂みから「ぷしゅー」と音がして、湯気がもわっと漂った。

モフドラだ。

どうやら後をつけてきて、タイミングよく効果音を入れてくれている。

まるで「泣くなよ」と言っているみたいで、思わず苦笑してしまった。


「クラウディア……」

ライ様はしばらく沈黙したあと、ゆっくりとうなずいた。

「そうか。……ならば、君の選択を尊重しよう」

その声は、静かで、それでいて誠実だった。

胸にずしんと響く。

(……や、やだ。断ったのに好感度が上がっている気がしますわ!? どういうことなのこのフラグ管理!?)


背後から「やれやれ」と低い声がした。振り返ると、木陰に立っていたバルドが、月明かりに眼鏡を光らせている。

「若様、幕は下りましたな。――悪役令嬢役を演じ続けるのも骨が折れるでしょうに」

その言葉に、私は心臓が跳ねた。

(やっぱりこの人、気づいてますわよね!? わたくしが“転生者”だってことに!!)


けれどバルドはそれ以上なにも言わず、一礼して闇に消えていった。

ライ様はそんな彼を追わず、ただ私の方を向いていた。

沈黙の中、庭園を抜ける風が、まるで幕引きを告げる合図のように吹き抜ける。


モフドラが私の足元に寄ってきて、ふわりとお腹に乗った。湯気がほんのり温かくて、胸の痛みを少しやわらげてくれる。

「……ありがとう」

小さくつぶやいた声は、夜空に溶けて消えていった。




クラウディアの背中がゆっくりと夜の回廊に消えていく。

ライはその場に立ち尽くしたまま、指先に残るわずかな温もりを思い出していた。

握手の一瞬。ほんの一瞬だったのに、胸の奥には重たい余韻が広がっている。

守りたいと告げたのに、届かなかった。

だが、不思議と悔しさよりも静かな痛みだけが残った。


ふと気づけば、傍らに影が立っていた。

バルドだ。

長年仕えてきた執事は、ライと同じ月を仰ぎ、眼鏡の奥の瞳を細めている。

「……若様。恋の刃は、剣よりも深く刺さるものでございますな」

穏やかな声だった。

皮肉を含んでいるようで、実は慰めに近い。


「また……深く刺さったものだ……」

声に出すと、驚くほど静かに響いた。

「彼女は強い。自分の道を選んだ。……だからこそ、なおさら守りたいと思ってしまう」


バルドはしばし黙し、それから軽く肩をすくめた。


「若様の誠実は、もはや病でございますな。己の痛みを抱えたまま、なお人を守ろうとする。……ですが、悪くない病かと」


淡々とした言葉に、胸の奥が少しだけ軽くなる。

この男は昔からそうだ。

冷徹なように見えて、誰よりもライを理解している。


「バルド。……僕は間違っていただろうか」

問いかけると、彼は静かに首を振った。


「間違いなどございません。人を想うことに正解はなく、ただ若様が選んだ形が残るだけ。……それを受け止められるなら、十分でございましょう」


その言葉を聞いて、ライは夜空を仰いだ。

星は散りばめられたように瞬き、風鈴が遠くでかすかに鳴っている。

痛みは消えない。

だが、それすらも自分が背負うべきものなのだと、少しだけ素直に受け入れられた。


バルドがゆっくりと一歩下がり、静かに告げる。

「若様。夜は長うございます。……ですが、必ず朝は参ります」


ライは小さく息を吐き、歩き出した。

胸の痛みと共に、確かに前へ進むために。


最後までお読みくださり、ありがとうございました!

断罪イベントのシーンは、ゲーム的にいえば「最大のバッドエンドフラグ」ですが……今回は少し予想外の方向に流れていきました。ライの誠実さやバルドの鋭さ、そしてクラウディアの葛藤――みなさまはどう感じられたでしょうか?


もし楽しんでいただけましたら、ぜひ「評価」と「感想」をいただけると嬉しいです!

どんなご意見でも、物語を進める大きな力になります。


次回もどうぞお楽しみに!

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楽しんでいただけましたか?

ぜひ☆評価で作者のやる気が上がります!

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まとめサイトはこちら!

https://lit.link/yoyo_hpcom

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