第69話 悪役令嬢、パンの耳で無罪を訴える!?
ついにやってまいりました、物語最大の見せ場――舞踏会での「断罪イベント」!
悪役令嬢クラウディアにとっては一番避けたいシナリオですが、ゲーム知識を持つ彼女の勘違いと、予想外の展開が入り乱れ、今回もドタバタコメディに……!?
ブックマークで応援していただけると、クラウディアが断罪を避けられる可能性が少しは上がる……かもしれません!✨
どうぞ最後までお楽しみくださいませ。
ああ……ついに始まってしまいましたわ。
煌びやかな舞踏会場は、もはや豪華な処刑場にしか見えません。わたくしの頭の中では、シャンデリアがギロチンに、磨き抜かれた床が断罪用の舞台に変わっております。
「クラウディア嬢に問う!」
ユリウス王子の鋭い声が響き、場が一気に静まり返りました。
その瞬間、わたくしの脳裏にゲーム画面がフラッシュバックします。
(はい出ました、定番の断罪イベントぉぉぉ! この後は取り巻きの令嬢たちが次々と証言して、わたくしが公開処刑される流れですわね!?)
そして予想通り、令嬢たちが一歩ずつ前に出てきました。
「クラウディア様は、わたくしのドレスをわざと汚しました!」
「わたしのお茶会を台無しにしたのです!」
「侍女に命じて嫌がらせを……!」
出るわ出るわ、まるで用意していたかのように次々と並ぶ証言。いや、実際に用意していたのでしょうけれど。
わたくしは心の中で盛大に突っ込みました。
(そんなイベント、ゲームで見ましたわ!けれど現実にやらかした覚えは一切ありません!ただ……庶民的なお菓子を笑いながら味見したり、焼きイモの値段に驚いたりしただけですのに!それがなぜ断罪フラグに繋がるのですか!?)
会場の空気がじわじわと重くなる中、ひときわ甲高い声が響きました。
「クラウディア様は、ライ様に色目を使っておられます!」
――はい出ました、最大級の爆弾。
わたくしは心臓をぎゅっとつかまれたようになりました。
(い、色目!? 違いますわ!わたくしはただ、転生者として“ライ攻略ルートのフラグ管理”を意識していただけですの!現実的に色目なんて使ってません! 多分!)
必死で言い返そうと口を開きかけたそのとき。
「おかしいです!」
響いたのはミーナの声でした。
彼女は人混みをかき分け、目を真っ赤にしながら前に飛び出してきたのです。
「クラウディア様がそんな悪いことするはずありません! だって、いつもパンの耳を分けてくださるんですから!」
……パンの耳!? なぜこのタイミングでそんな庶民エピソードを!
会場がざわつきます。
「パンの耳?」「お菓子?」「侯爵令嬢が?」
周囲の貴族たちが顔を見合わせ、妙な疑問の波が広がっていきました。
モフドラまでもが「ぷしゅー」と湯気を吐き、クラウディア擁護のつもりなのか、ミーナの足元をぐるぐる回ってアピールしています。かわいいですが今は混乱を助長しているだけですわ!
わたくしは頭を抱えたくなりました。
(やめてぇぇぇ! そんな証言、逆に怪しいですわ! これでは“裏で庶民を手懐けている悪役令嬢”みたいに見えますでしょう!?)
会場が完全に混沌に包まれた、そのとき。
静かに一歩踏み出したのはライでした。
「――彼女は無実だ」
低く、けれどはっきりとした声が響き渡り、ざわついていた会場がぴたりと止まりました。
怖い顔のライが真っ直ぐに言い切る。その姿に、空気が一変します。
取り巻きたちも、証言を並べ立てていた令嬢たちも、口を閉ざして後ずさりしました。
わたくしは胸を押さえながら呆然と見つめました。
(……いま、ライ様が……わたくしを庇った……!? こ、これは……間違いなく“ライルート恋愛フラグ確定イベント”ですわーーー!!)
「ならば――証拠を示せ!」
ユリウス王子の鋭い声が会場に響き渡った。
その瞬間、胸の鼓動が跳ね上がり、背中に冷たい汗が流れる。
(はい来ました! ゲームで一番の見せ場、“断罪イベント”の山場ですわ!ここで主人公ヒロインが涙ながらに王子に庇われるのが王道ルート……。でも今のわたくし、どう考えても庇われる側じゃなくて断罪される側っ!完全にバッドエンド一直線ではありませんの!?)
令嬢たちの視線が一斉にわたくしへ突き刺さる。
さっきまでのおしゃべりや音楽はすっかり止み、場の空気は重苦しい沈黙に包まれていた。
それはまるで、舞踏会場全体が巨大な裁判所に変わったかのよう。
わたくしは思わず、胸の中で祈った。
(ライ様、どうかイベントをひっくり返して……! もしくは画面の端から「裏技」って出てきません? “Rボタン+スタートで回避”とか!)
しかし現実はゲームではない。
王子は眉をひそめ、冷ややかな視線をわたくしに投げかける。
「クラウディア嬢の潔白を語るなら、動かぬ証を見せよ」
ぐらりと視界が揺れた。
けれど、その場で一歩前に出たのはライではなかった。
「――証拠ならございます」
低い声が背後から響いた。
ゆっくりと前に出てきたのは、侯爵家執事バルド。
まるで全てを見通しているような、鋭い眼差し。彼の手には一枚の書類が握られていた。
「ここにあるのは、取り巻き令嬢たちが“使用人へ不正な指示”を与えていた記録。証人の証言と共に提出いたしましょう」
ざわっ、と会場が揺れた。
取り巻きたちの顔色が一気に青ざめ、互いに小声で何かを言い合っている。
わたくしは思わず口元を押さえた。
(ま、まさかバルド様がこんな切り札を持っていたなんて……! というかこの流れ、完全にゲームのスクリプト外ですわ! 想定外すぎます!)
しかし、バルドはそれだけでは終わらなかった。
わたくしの横を通り過ぎざま、一瞬だけ視線を投げてきたのだ。
その瞳に射抜かれた瞬間、背筋がぞくりと震えた。
――唇が、ほとんど動かないほど小さく形作った言葉。
「……転生者殿」
心臓が止まりかけた。
(完全にバ、バレてるーーーー!?!?!?)
思わず後ずさりしそうになるのを必死にこらえる。
冷たい汗が額を伝い、ドレスの襟を濡らしていく。
わたくしが頭の中で悲鳴をあげている間にも、場の流れは急速に変わっていた。
証拠を突きつけられた取り巻き令嬢たちはしどろもどろになり、観衆の視線はわたくしから彼女たちへと移っていく。
王子も眉をひそめ、しばし黙り込んだ。
「……どうやら、事実は別のところにあるようだ」
その一言で、会場の空気が一気に緩んだ。
断罪の嵐は、わたくしを飲み込む前に消え去っていた。
胸の奥で大きく息を吐く。
(た、助かった……!ゲームではここで破滅だったのに、現実の私は生き残った……!でも問題は、バルドに……わたくしの秘密が……!)
モフドラが「ぷしゅー」と湯気を吐いてわたくしの裾にすり寄ってきた。
まるで「もう大丈夫だよ」と言ってくれているようで、思わずその背を撫でた。
――けれど心臓の高鳴りは、まだまったく収まってはいなかった。
いかがでしたでしょうか。断罪イベントのはずが、ミーナの「パンの耳証言」やモフドラの暴走で、だいぶ茶番寄りになってしまいましたね(笑)
しかしその裏で、バルドの冷徹な一手や「転生者殿」の囁きが、クラウディアの運命に大きな影を落としています。
彼女がこの先どんな選択をし、どんなフラグを踏み抜いていくのか……。
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