第67話 悪役令嬢、舞踏会に招待される!?
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ついに迫る「舞踏会イベント」。クラウディアの胃痛と勘違いが全開で、笑うしかない展開になっております。悪役令嬢の未来は断罪か、それとも……?
ぜひ物語の続きを一緒に見届けてくださいませ!
そして、「ブックマーク」をしていただけると、クラウディアの必死のフラグ回避に追い風が吹きますわ!ぜひよろしくお願いいたします
学園の昼下がり。
石畳の中庭に面したサロンは、日差しを和らげる白いカーテンと、金縁の椅子が並ぶ優雅な空間であった。
ここは生徒たちが自由にお茶を楽しむ場でもあり、最新の噂が飛び交う情報の巣窟でもある。
その日も、紅茶の香りと共に「舞踏会」の話題が弾け飛んでいた。
「今度の舞踏会、ユリウス殿下が臨席なさるんですって!」
「やだ、わたくし誰と踊ればいいのかしら!」
「断罪される令嬢が出るとか出ないとか……ふふっ」
……最後の一言、聞き捨てなりませんわ。
わたくし――クラウディア・フォン・エーデルワイスは、椅子の背にもたれかかりながら、紅茶のカップを震える手で支えていた。
(舞踏会……? それはつまり、ゲームで悪役令嬢クラウディアが“断罪”される舞台……!)
紅茶の色がやけに赤黒く見えてきたのは気のせいでしょうか。
わたくしの脳裏には、王子に糾弾され、大勢の視線にさらされる自分の姿が浮かんでしまう。
断罪イベント。ゲームプレイヤーにとってはスカッとする場面でも、当人にとっては地獄そのもの!
「……わたくし、終わったのかもしれませんわ」
思わず小声でつぶやいたら、隣の席にいた執事バルドがすかさず返してきた。
「終わったことに今更気づくとは、悪役令嬢も鈍感でございますな」
「ちょっと! そんなさらりと恐ろしいことを言わないでくださいまし!」
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その時、重そうな布袋を抱えたミーナが駆け込んできた。
「クラウディア様ーっ! ドレス候補を持ってきましたぁ!」
サロンのテーブルに広げられたのは、ひまわり模様のドレス、赤と黒の派手なチェック柄ドレス、そして妙に薄手のワンピース。
「……これは……夏祭りの浴衣と見まごうばかりのラインナップですわね」
「え? でも庶民の町ではすごく人気なんですよ!」
「庶民の町で人気でも、舞踏会で着たら笑い者ですの!」
わたくしの必死の否定などおかまいなしに、机の下からモフドラがひょいっと顔を出した。
小さな竜はひまわり模様のリボンをくわえて、ぶんぶん振り回している。
「やめなさいモフドラ! それは飾りであって玩具ではありませんの!」
サロンの周囲にいた令嬢たちが「まあ、かわいい」と笑い声を上げる。
……違うのですわ。これは命がけの衣装選びであって、ペットショーではありませんのよ。
「というか、あなた達はグランツ侯爵家の執事と侍女でしょう!?なんで私にかまってるのです!?」
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そして。
背後から、ひときわ低い声が響いた。
「クラウディア、僕が二人に依頼したんだ……。最近君は元気がないようだったので気になってな……」
――ひぃ。
振り返れば、そこに立っていたのはライ。侯爵家の跡取りであり、完璧超人、ただし顔が怖い。
鋭い眼差しがこちらを射抜く。周囲の空気が一瞬で引き締まる。
「そういえば……舞踏会の招待状はきたか……? 」
低く、はっきりと。
まるで裁判官の判決のような声で言い放った。
……怖い顔で。真剣な眼差しで。
(こ、これは……一緒に踊ってくれということ!?
プロポーズ!? いやいやいや、そんなルート、ゲームには存在しませんでしたわ!?)
頭の中で鐘が鳴り、視界が白くなりかける。
紅茶のカップを落としそうになったのを必死で持ち直し、椅子ごと崩れ落ちる寸前で踏みとどまった。
「クラウディア様、大丈夫ですか!?」
「……だ、大丈夫……たぶん」
心臓が爆発しそうな音を立てているのに、なんとか笑顔を取り繕う。
(舞踏会=断罪イベント。……なのに、なぜわたくしは“隠し結婚ルート”に足を突っ込んでいるのですの!?)
不安と勘違いが入り混じるまま、わたくしの運命は舞踏会という名の戦場へ、確実に進んでいくのだった。
学園の午後、私の机に届いた一通の封筒を見た瞬間、心臓が止まりかけた。
封蝋には王家の紋章。深紅の蝋が光を受けていやに不吉に見える。
「まさか……」
震える指で封を切り、便箋を広げた。
> ――王立学園主催 舞踏会のご招待
(き、きたぁああああーーー!!)
目の前が白くなる。
これこそが、断罪イベントの幕開け。ゲームのシナリオで知っている。舞踏会こそが、ヒロインと悪役令嬢の天国と地獄を分ける大舞台。
「いよいよ処刑確定ですわ……」
机に突っ伏したわたくしを、横で見ていたミーナが小首をかしげる。
「え? 処刑って……あ、そうか! ケーキ食べ放題のことですね!」
「は?」
思わず顔を上げると、ミーナはきらきらした目で便箋を覗き込んだ。
「舞踏会って、きっとお菓子いっぱい出ますよね! ケーキにパイにマカロン! もう断罪どころじゃないです!」
「断罪どころじゃないって……あなたは本当に庶民感覚しかないのですわね!」
ミーナの浮かれ声をよそに、私は絶望のどん底。だがさらに追い打ちがかかった。
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「ぷしゅー!」
小さな白い影が、ひょいっと机に飛び乗る。
モフドラである。
わたくしの膝の上にいたはずが、いつの間にか招待状を口にくわえて逃走を開始した。
「きゃあ! 返しなさい、モフドラ!」
「わー! 走ってる走ってる! かわいい~!」
ミーナはまったく止める気がない。むしろ拍手して応援している。
私は慌てて追いかけるが、モフドラは机の上を縦横無尽に駆け回り、紙をぶんぶん振り回している。
その拍子に、蝋の欠片がぴょこんと跳ね、私の髪に張り付いた。
「う……うそでしょう!? 王家の封蝋を髪飾りみたいにしてどうしますの!」
必死に引き剥がそうとする私。
その姿を見て、ミーナは涙を浮かべて笑い転げていた。
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そこへ、静かな足音が近づいた。
「何やら楽しげですな」
姿を現したのはバルドである。
整った所作で部屋に入ってきて、ちらりと机の上の招待状を一瞥した。
「……断頭台に登る足取りに似ておりますな」
「やめなさい!!」
思わず叫んでしまった。
バルドは淡々と続ける。
「ですが、若様もご出席でしょう。クラウディア様、ここで顔を上げねば後がございません」
「……っ」
その瞬間、私はぞくりとした。
バルドの言葉の端々に、まるで「あなたの秘密を知っていますよ」と含みがあるように聞こえてしまうのだ。
心臓が跳ね上がり、心が大きく揺れる幻を見た気がした。
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「クラウディア」
ふいに背後から呼ばれて振り返ると、そこにはライが立っていた。
黒い制服に身を包み、相変わらず怖い顔。けれど、その視線は真っ直ぐで、ふざけた空気を一瞬で吹き飛ばす力があった。
「舞踏会では……僕の隣に立ってほしい」
「っ!?」
一拍遅れて心臓が爆発する。
これ、プロポーズのセリフでは? いや、そうに違いない!
悪役令嬢ルートなのに、どうしてヒーローみたいにエスコートを頼まれるのですの!?
頭の中でシナリオがぐるぐると渦を巻く。
断罪フラグと恋愛フラグが同時進行するという、このカオスな状況。
私は机に突っ伏し、再び心の中で叫んだ。
(もういやですわーーー!!これはバッドエンド確定コースですのーーー!!)
最後までお読みくださり、本当にありがとうございます!
舞踏会=断罪イベントという鉄板の流れを、庶民侍女やモフモフ竜や冷酷執事がひっかき回す今回。
果たしてクラウディアはバッドエンドを避けられるのか……それとも新たなカオスフラグを立ててしまうのか。
もしクスッと笑っていただけたり、続きを読んでみたいと思っていただけましたら、ぜひ評価や感想をお寄せくださいませ!
作者の大きな励みになり、クラウディアも「少しは救われるかも…?」と信じております。
次回もどうぞお楽しみに!
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