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完璧侯爵様、恋するとお腹が痛いんです —恋すると腹がキリキリする侯爵様の100連敗—  作者: ヨーヨー
第7章 悪役令嬢 クラウディア

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64/100

第64話 悪役令嬢、波乱のお茶会!?

本日もお読みいただきありがとうございます!

クラウディア様は今日も優雅(?)に断罪フラグと格闘中です。

「普通のお茶会」ひとつ取っても、波乱の香りしかしませんわね……。


物語が佳境に近づくにつれて、クラウディア様の胃痛も作者の胃痛も加速中です。

ぜひこの先もご一緒に見守っていただければ嬉しいです!

続きが気になる!と思っていただけましたら、ブックマークで応援していただけると励みになります。

わたくしの名前はクラウディア・フォン・エーデルワイス。


貴族の娘であり――この物語では、悪役令嬢というポジションに立たされている。

しかも中身は前世の日本人女子高生。つまり転生者。


だからこそ、わたくしには分かる。

今ここで座っているこのカフェの午後――これは断罪イベント前の定番フラグだ。


ガラス越しに差し込む日差し、甘い菓子の香り、そして貴族令嬢たちがキャッキャと笑いながら紅茶を飲む場面。

まさに「断罪の舞台装置」。ヒロインが偶然やって来て、悪役令嬢のわたくしが彼女をいじめたことにされる……そんなシナリオ、ゲームで何度も見てきた。


「……これはまずいですわね。完全にフラグですわ」


わたくしが深刻な顔でつぶやくと、向かいの席でミーナがぱちぱちと目を瞬いた。

ミーナはライオネル様に仕える侍女で、なぜか今日は買い物の付き添いをしてくれている。

しかし、庶民育ちの彼女にとっては貴族街のカフェが珍しいらしく、出されたケーキを前に目を輝かせていた。


「クラウディア様、このケーキって“ダンザイケーキ”とおう名前なんですか?断罪ってさっき言ってましたよね!」

「それはケーキの名前ではありません!」


思わず声を張ってしまう。

周囲の客がこちらをちらりと見た。

やめて、これ以上悪役感を強調しないで……!


さらに追い打ちをかけるように、テーブルの端で「ぷしゅー」と音がした。


モフドラである。

小さな竜の姿をしたもふもふ生物で、今は皿の上のマカロンを勝手に抱えて、幸せそうに湯気を吐いている。

「それは貴族街で一番高価なマカロンですわよ!?」

慌てて取り上げようとするわたくしだが、モフドラは器用にお皿ごと回転し、尻尾でわたくしの手をぺちぺち叩いて抵抗する。


「若様のお顔より強情でございますな」


背後から低い声。

振り返ると、控えていた執事バルドが腕を組んで立っていた。

いつの間にか彼も同行していたのだ。ライ様の用事で出てきたついでに、わたくしたちの護衛役を買って出たらしい。


「わ、わたくしはただ普通にお茶を楽しみたいだけですのに!」

「普通に楽しむ方が“断罪断罪”と独り言を連呼なさいますかな?」


ぐさり。

痛烈な一言が胸に突き刺さる。

いけない……バルドは鋭い。もしかして――わたくしが転生者であることに気づいているのでは?


「……まるで全ての筋書きをご存じのような物言いでございますな」

「そ、そんなことはありませんわ!」


慌てて紅茶を口に運ぶが、緊張で喉に引っかかり、盛大に咳き込む。

ミーナが慌てて背中をさすりながら言う。

「大丈夫ですか!?ほら、甘いもの食べれば元気出ますよ!」

「だからそういう問題では――!」


わたくしの声は、またもやカフェのざわめきの中に響いてしまった。

周囲の令嬢たちが「クラウディア様ったら、やっぱり怖いわね」とひそひそ囁いているのが耳に届く。

だめだ……どんどん悪役令嬢ポイントが加算されていく!


(……このままでは本当に断罪ルート一直線!)


心の中で頭を抱えながらも、モフドラはマカロンを頬張り、ミーナはにこにこし、バルドはただ一人、わたくしの挙動を冷静に観察していた。


――嫌な予感しかしない午後である。


わたくしは深呼吸を繰り返しながら、落ち着きを取り戻そうとしていた。

紅茶の香り、焼き菓子の甘い匂い、柔らかな陽光――本来なら優雅な午後を楽しむ要素がそろっているはずなのに、どうしてこんなにも胃が痛いのかしら。


「クラウディア様、本当に顔が怖いですよ」

ミーナが小声で心配そうに囁く。

違うのよ、これは顔が怖いんじゃなくて、断罪フラグに気づいて怯えている顔なのよ!

でもそんなこと言えるはずもなく、わたくしはただ苦笑いを浮かべてごまかした。


その時、店の入口ががたんと開いた。

甲冑の金属音、ざわつく客席、そして「きゃっ」と令嬢たちの小さな悲鳴。

通りの方で騒ぎがあったのか、衛兵が数名、誰かを追って走ってきた。


「ま、まさか……! これ、イベント発生じゃありませんの!?」

わたくしは思わず立ち上がった。

こういうのは大抵、悪役令嬢が濡れ衣を着せられる展開に繋がるのだ。ゲーム知識がそう告げている。


「お嬢様方、落ち着きなさいませ」

バルドが静かに制止の声をかける。

しかし、わたくしの脳裏では「断罪ルート」の赤文字が点滅しており、落ち着けるはずもない。


そこへ、騒ぎをかき分けて現れたのは――長身の青年。

黒いマントをひるがえし、静かに周囲を見渡す姿。

ライオネル様。


わたくしは心臓が一気に跳ね上がるのを感じた。

ゲームには登場しなかったイレギュラーな存在。けれど、だからこそ、わたくしの未来を変えてくれる可能性を秘めている。


「クラウディア、怪我はないか」

短く、しかし真っ直ぐな声が届く。

その瞬間、店中の視線が一斉にこちらへ注がれた。


「え、ええ……問題ありませんわ」

わたくしは慌てて答える。

ただ立っているだけなのに、どうしてこんなに目立ってしまうの。断罪フラグを回避したいのに、これでは逆に「完璧超人のグランツ侯爵家の御曹司と親しげ」なんて噂になってしまう!


「若様、こちらのクラウディア様は断罪を気にして紅茶でむせておられただけでございます」

バルドがさらりと爆弾発言を投下する。

「な、なぜそれを言いますの!?」

「隠し立てするより、先に笑い話にした方が傷は浅うございます」

「笑い話にできる内容ではなくってよ!」


ミーナは「断罪ってケーキの名前じゃなかったんですか……?」とまだ混乱しているし、モフドラは皿の上のタルトを勝手にかじって「ぷしゅー」とご満悦だし。

わたくしの周囲だけ、完全に混沌。


ライオネル様は小さくため息をつき、こちらをじっと見つめてくる。

その瞳は鋭いのに、不思議と嫌な感じはしなかった。むしろ……守られているような、そんな錯覚さえする。


(いけない……これはフラグ。間違いなくフラグですわ!)


わたくしは慌てて視線を逸らし、紅茶のカップを取り上げた。

けれど手が震えて、中身が少し跳ねてしまう。

ライオネル様はそれを見て、すっとハンカチを差し出してきた。


「……ありがとうございますわ」

小さな声でそう告げると、彼は何も言わずに頷いた。

ただそれだけなのに、心臓が落ち着かない。

懐中時計の針がぎゅんと動いて、腹の奥がきりきりと痛むのを感じる。


そんなわたくしの様子を、バルドはじっと観察していた。

「若様。どうやらクラウディア様も、恋腹をお持ちのようでございますな」

「ち、違いますわーーっ!」


カフェ中にまたもやわたくしの声が響き渡り、客たちがくすくす笑う。

モフドラまで「ぷしゅー」と笑ったような音を出して、机の下で尻尾をぱたぱた。


……こうして、わたくしの“普通のお茶会”は、またもや普通では終わらなかったのであった。



けれど――わたくしは気づいていた。

この穏やかな午後のざわめきは、ほんの前触れにすぎないということを。

断罪イベントはまだ先に控えている。あのメイン攻略対象であるユリウス王子の冷たい眼差しも、ゲームのシナリオ通りならいずれわたくしに向けられる。


そして、ライオネル様の存在。

ゲームにいなかった彼が、どうしてこんなにも自然に隣に立っているのか。

まるで物語そのものが、少しずつ書き換わっているようで……不安と同時に、心のどこかで期待が芽生える。


「ふう……やっぱり波乱の幕開け、ですわね」

わたくしは冷めかけた紅茶を一口すすり、胸の奥で深く息をついた。

その苦みは、未来の運命を暗示しているようで、しかしほんの少しだけ甘かった。


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!

カフェでのお茶会は優雅なはずが、執事の毒舌と侍女の天然とマスコットの自由行動で、完全にコント会場になってしまいましたね。

ライオネル様の怖い顔(本人は真剣なだけ)が、逆にクラウディア様の恋腹を刺激しているのがまた……。


ぜひ評価や感想で、クラウディア様の今後のフラグ管理にツッコミを入れていただけると、とても励みになります。

「ここが面白かった!」「ここで笑った!」など、一言でも大歓迎です!

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楽しんでいただけましたか?

ぜひ☆評価で作者のやる気が上がります!

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まとめサイトはこちら!

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