第62話 悪役令嬢、災害警報奮闘中!?
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今回のお話は、学園の礼拝堂でまさかの「清き誓いイベント」……になるはずが、クラウディア様の勘違いとモフドラの大暴れで、とんでもない方向に転がってしまいます。
果たして恋の誓いどころか、鐘の音で断罪フラグが鳴り響いてしまうのか――?
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学園の礼拝堂の前に立った瞬間、わたくしは深呼吸をした。
そう――ここは知っている。
「ここは……そう、攻略対象と“清き誓いイベント”が発生する場所!」
わたくしクラウディア=フォン=エーデルワイスは、断罪ルートまっしぐらの悪役令嬢。しかも中身は前世の記憶を持つ転生者である。
だからこそ断言できる。この礼拝堂こそ、乙女ゲームの大イベントの舞台だと!
本来なら、王子やロイス様と一緒にロマンチックに「永遠を誓います」なんて流れになる……はずなのよ。
けれど。
「……安全点検だ。周囲を確認しろ」
目の前で黒マントの裾を翻しながら淡々と指示を飛ばすのは、よりによって侯爵家の若様ライオネル様。
え、なにこれ。ロマンチックどころか、現場検証みたいな空気じゃない。
衛兵が真面目な顔で礼拝堂の扉を調べ、バルドがメモを取っている。
これは完全に「恋愛イベント」じゃなくて「治安維持イベント」では?
わたしの知っているシナリオとぜんぜん違うんですけど!?
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「クラウディア様、ここでお祈りすると恋が叶うって聞きました!」
突拍子もないことを言い出したのは、ライ様の侍女ミーナ。
庶民出身で思ったことをすぐ口にするから、わたしには心臓に悪い存在である。
「ちょっ……! そんな庶民じみた迷信、信じられるわけないでしょう!」
必死に否定するわたしをよそに、近くの生徒たちが「え? 恋が叶うの?」
「ちょっとやってみようかな」
とざわめきはじめる。
やめて! 悪役令嬢が「恋が叶う」なんて話題の中心にいたら、断罪イベントが加速する未来しか見えない!
そのとき、ゆったりとした足取りでロイス様が現れた。金髪を揺らし、いつもの余裕を崩さない。
「試しにやってみても損はないと思うよ。願うだけなら害はないし」
……この方、ほんの一言で場を支配するのやめていただきたい。
しかもこれ、もしや“ロイス様ルートフラグ”なのでは!?
違う! わたくしは回避したいのよ、その断罪直行ルートを!
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と、その時。
「ぷしゅう!」
妙な音と共に、小さな影が礼拝堂の鐘のロープに飛びついた。
モフモフした丸い体、湯気をぷしゅぷしゅ吹く――そう、モフドラだ。
よりによってこのタイミングで!
次の瞬間。
ごぉぉぉん……!
澄んだ鐘の音が学園中に鳴り響いた。
礼拝堂の扉がガタガタ揺れ、生徒たちが一斉に悲鳴を上げる。
「な、なによこれ!? 鐘が勝手に鳴るなんて、これ完全にホラー演出じゃない!」
慌てて振り返ると、モフドラはロープにぶら下がったまま「どやぁ」という顔でぷしゅぷしゅ湯気を出していた。
場が騒然となる中、バルドが冷静に言い放つ。
「若様。これは“迷信ではなく災害”でございますな」
「災害って言わないで!」
わたくしの悲鳴は、二度目の鐘の音にかき消された。
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鐘の音が止んだあとも、生徒たちのざわめきは収まらない。
その中心に、わたくしはちゃっかり立たされてしまっていた。
「……これ、まさかわたしが仕組んだことになってない?」
嫌な汗が背中を伝う。
これは……これは断罪イベントの布石では!?
学園中に「悪役令嬢が不吉な鐘を鳴らした」なんて噂が広まったら――終わる。
「問題はない」
短く冷たい声が割って入った。ライ様だ。
淡々とした表情で「生徒たちに被害はない」と告げ、鐘のことなど大した問題ではないと片づけてしまう。
え、えぇ……? そんな一言で終わるの?
でも……よく考えれば、こうして庇ってもらえたのって、まさかフラグなのでは……?
彼の横顔が月明かりに照らされて、やけに立ち絵映えして見える。
「ちょっと待って……ライオネル様って攻略対象じゃなかったはずよね?」
わたしの頭の中で警報が鳴り響いた。
――これはゲームにはなかった展開。完全にシナリオが狂っている!
鐘が鳴り止んだあとも、礼拝堂の前はざわざわと落ち着かない。
生徒たちは「悪い兆しだ」「いや恋が叶う合図かもしれない」などと言いたい放題で、完全に騒ぎの中心になっているのは――わたし。
いや待って、なんでよ!?
鐘を鳴らしたのはモフドラじゃない。わたしじゃない!
なのに周りの視線が「悪役令嬢が仕組んだに違いない」って雰囲気を漂わせている。
「ふ、不運なだけですわ! わたくしは何もしていませんのよ!」
必死に否定したのに、モフドラはのんきに「ぷしゅー」と湯気を吹き、ロープにぶら下がったまま小さく揺れている。
……その姿が「犯人はこの子です」と言っているようで、かえって怪しい。
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「ご心配なく」
そこへ、ライオネル様の低い声が響いた。
淡々としたその言葉に、生徒たちのざわめきが少しずつしぼんでいく。
「鐘の鳴動は偶発的なものだ。被害はない。――解散しろ」
短い命令に、周りの子たちは「さすがグランツ侯爵家……」「逆らえない」などと小声でつぶやきながら散っていった。
な、なんて恐ろしい説得力。
さすがに“ゲームの攻略対象外”なだけあって、バランスブレイカー感がすごい。
でも、助けてもらったのは事実……って、これフラグですか!?
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「若様、鐘の音で場をまとめるとは……まるで教会騎士団の団長のようでございますな」
横から聞こえたのは、執事バルドの皮肉めいた声。
「ただし威厳ではなく、顔面の迫力が……でございますが」
「バルド……」
ライ様が眉をひそめるが、わたしの方が心臓に悪い。
この人、絶対わたしの「悪役令嬢」設定にも気づいている。前に独り言を聞かれてしまったし。
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そんな緊張を吹き飛ばしたのは、ミーナだった。
「クラウディア様! 鐘が鳴ったってことは、やっぱり恋が叶うんですよ!」
無邪気な笑顔でそんなことを言うから、周りの空気がまたざわざわ……。
「ち、違いますわ! ただの偶然ですの!」
「じゃあクラウディア様、誰に恋してるんですか?」
「な、ななな……っ!?」
心臓が止まるかと思った。
わたしは悪役令嬢、断罪イベント直行の存在。
ここで恋なんて認められるわけがない!
慌てふためくわたしの耳に、さらりとした声が届いた。
「追及はやめろ。場が荒れる」
ロイス様だ。
相変わらず落ち着いた態度で、ミーナの天然ボケをあっさり制した。
……控えめな登場なのに、やっぱり絵になるのずるい。これ怖い顔の人特有のオーラなのかも!?
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混乱の中、モフドラがわたしの肩にぴょんと乗った。
「ぷしゅー」
あたたかい湯気が頬にかかり、緊張で冷たくなっていた手がじんわりと温まる。
……なんだろう。
癒やしマスコットの力って、本当にすごい。
ライ様がふとこちらを見た。
目が合った瞬間、心臓が跳ねる。
「顔色が悪い。少し休め」
そう言ってわたしを礼拝堂の石椅子に導いてくれる。
え、ちょっと待って、これ完全にフラグじゃない?
いやいや、冷静になれクラウディア。
彼はただの気遣い……たぶん。きっと。
けれど――その横顔を見ていると、胸の奥がほんの少し熱くなるのを止められなかった。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます!
礼拝堂という神聖な舞台も、クラウディア様の手にかかればコメディに早変わり。ミーナの天然ボケと、バルドの毒舌、そしてモフドラの「ぷしゅー」で、作者としては書きながら何度も笑ってしまいました。
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次回もクラウディア様の奮闘をどうぞお楽しみに!
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