第61話 悪役令嬢、優雅に空回り中!?
ようこそいらっしゃいました!
今回から始まるのは――悪役令嬢クラウディアが、転生者ならではの勘違い全開で突っ走る(そして盛大にコケる)物語です。
ドジって畑の妖精になろうが、断罪フラグに怯えようが、彼女は今日も全力で走ります!
「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ブックマークしてくださるととっても嬉しいです。
悪役令嬢の奮闘記を、ぜひ一緒に見守ってくださいませ!
クラウディア・フォン・エーデルワイス。
王都の社交界では「舞踏会の花形」だとか「完璧なお嬢様」だとか、きらびやかな評判で語られる令嬢――のはずだった。
しかし、当の本人に言わせれば違う。
(……実際のところ、ただの転生者ですわ!)
前世は夜な夜な乙女ゲームをやりこんでいた、ごく普通の女子大生。
目を開けたら、よりによって「悪役令嬢」として爆誕していたのだから、笑えない。
(攻略対象でもなく、ヒロインでもなく……えっ、悪役!? 神様、それはあんまりではございません!?)
しかもこの世界は、あのゲームと瓜二つ。
ということは――。
(はい出ました、断罪イベント! 婚約破棄からの公開処刑ルート直行便!! ご愁傷さまです、わたくし!!)
……と、そう簡単に運命に従うつもりはない。
破滅フラグなどすべて叩き折り、幸せなお嬢様ライフを掴み取る。彼女はそう決めている。
ところがその矢先、朝からドレスの裾に足を取られて盛大に転びかけた。慌てて手すりにしがみついた瞬間、後ろから聞こえたのは侍女の呑気な声だった。
「わぁ、優雅に舞っておられますね!」
(違いますわ! これはバレエではなく、ただの転倒未遂ですの!)
さらに拍子に頭から落ちたのは――よりによって庭の植木鉢。
土まみれになった姿は、「悪役令嬢」というより「畑の妖精」と呼んだほうがしっくりくる有様だった。
……それでも彼女は諦めない。
ドジだろうが泥だらけだろうが、バッドエンドを避けるためなら今日も邁進する。
(ええ、転ばない程度に、でございますけれど!)
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王都の大通りは、朝からにぎわっている。
パン屋の香ばしい匂い、果物屋の甘い香り、行き交う人々の笑い声。それだけでお腹がすきそうになる。
(でも、このにぎやかさ……やっぱり、あの“街イベント”の始まりじゃない?)
ゲームでも、ここでヒロインと攻略対象が偶然出会い、好感度が爆上がりするんだった。
――けれど現実は、悪役令嬢であるわたくしが主人公。なにか間違っている気がしてならない。
「……破滅フラグ、回避しないと」
つい口にしたその言葉を、背後から拾われた。
「ほう。破滅フラグ、とな」
ぎょっとして振り返ると、そこに立っていたのはグランツ侯爵家の執事――バルド。
銀髪をきっちり撫でつけ、隙のない佇まい。どんな場でも毒舌を忘れない、人呼んで“冷酷執事”である。
「耳慣れぬ単語ですが、若様が聞けばまたお腹を痛めましょうな」
「い、今のはただの……独り言ですわ!」
「なるほど。断罪される独り言とは、なかなか趣深い」
心臓に悪い。わたくしの正体――転生者であることまで見抜かれている気がしてならなかった。
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そんな時、大通りの人垣がざわめいた。
人々が道を開ける。その中心を歩いてきたのは、漆黒のマントをまとった長身の青年。
――ライオネル・フォン・グランツ。
完璧超人として有名な侯爵家の嫡男にして、顔が怖いことで有名な青年だ。
黒いマントの裾が揺れるたび、まるで劇中のヒーローが登場したかのように、群衆が左右に分かれていく。
(えっ……完全にヒロインのイベント立ち絵……! でも私、悪役令嬢ポジション……!)
ドキドキする心臓を扇子で隠そうとしたが、手が震えてパタパタと風を送るだけになってしまった。
「ライ様ー!」
甲高い声とともに、ひとりの少女が駆けてきた。
元気いっぱいの侍女――ミーナである。
彼女は修道院からのつながりで、最近グランツ家に仕えるようになったと聞いていた。
庶民育ちゆえか、仕草がいちいち庶民的すぎて、わたくしのような令嬢からすると刺激が強い。
「わたし、ミーナです!
クラウディア様、初めまして!」
初対面のわたくしに、いきなり人懐っこい笑顔を向けてきた。
その勢いに圧倒され、思わず言葉が詰まる。
(えっ、なにこの距離感!? これ、悪役令嬢ルートの補助キャラじゃないよね!?)
しかも彼女の肩には、ふわふわの小動物がちょこんと乗っていた。
丸い体に小さな翼。モフモフの尻尾を振り、鼻から「ぷしゅー」と湯気を吐いている。
「ぷしゅー」
……癒やしオーラがすごい。
(なにこのマスコット……完全にアニメ化したときのグッズ要員じゃない! 欲しい!)
わたくしは優雅な笑みを取りつくろいながら、ミーナのぺこぺことしたお辞儀を受け取った。
内心では――これから始まる“断罪フラグ街イベント”に、全力で怯えていたのだった。
ミーナという少女は、庶民育ちの侍女らしい。
人懐っこい笑顔で話しかけてくるのだが――その内容がなかなか強烈だった。
「クラウディア様! わたし、侯爵家に仕えるのはじめてなんですけど、失敗したらぶん殴ってくださいね!」
「……え?」
いきなり何を言うのだろうか。
わたくしは扇子で口元を隠したまま、心の中で悲鳴を上げた。
(ちょっと待って!? この子、教育どうなってるの!? 乙女ゲームでこんなセリフ吐く侍女いなかったはず! というか、“ぶん殴れ”って何の選択肢!?)
隣に立っていた執事バルドが、涼しい顔で口を開いた。
「クラウディア様、これは……庶民式の“やる気表現”でございます。貴族社会においてはただの狂言でしかございませんが」
「狂言って言ったわよね? それならいいのよね……?」
(もう、開始五分で破滅フラグどころか暴力フラグが立ちかけてる!)
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さらにややこしいのが、ミーナの肩に乗った白い小竜――モフドラである。
翼をぱたぱたさせながら、鼻から「ぷしゅー」と湯気を吐き、やたらと愛想を振りまいていた。
「ぷしゅー!」
その湯気が、わたくしのドレスの袖に直撃する。
――しっとりと濡れた。
「ちょ、ちょっと! これ、わたくしのお気に入りのドレスですのよ!?」
「す、すみません! モフドラはうれしいと湯気を出しちゃうんです!」
ミーナが慌てて頭を下げる。だが当のモフドラは反省の色もなく、得意げに胸を張っている。
(……これは完全に“癒やしマスコット枠”! プレイヤー人気を独占するやつ! グッズ化したら抱き枕とキーホルダーで爆売れする未来しか見えない!)
わたくしはそんな冷静な(?)分析をしていたが、袖を乾かすのに必死で表情は崩れていた。
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その時だった。
人混みの中から視線を感じ、ふと顔を上げる。
ライオネル――あの黒マントの完璧侯爵様が、こちらをじっと見ていた。
眉間に深いしわを寄せていて、怒っているようにも見える。
(ひぃぃ! これ絶対、“悪役令嬢が市井で侍女をいじめている現場”に見えてる! 断罪フラグまっしぐらじゃないの!?)
慌てて言い訳しようと扇子を開いた瞬間、バルドが一歩前に出た。
「ご安心を。若様はただ、お顔が通常運転で怖いだけでございます」
「……バルド! いくらなんでも主君を“通常運転で怖い”は失礼ではなくて?」
「事実でございますゆえ」
余裕のないわたくしは、その毒舌をさばく気力もなく、扇子で顔を隠すしかなかった。
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「クラウディア様、あたしと一緒に市場まわりましょう!」
ミーナが無邪気に手を取ってくる。
「ちょ、ちょっと!? 令嬢の手を気軽に握るなんて――」
「わたし、庶民ですから! 人の手つなぐの大好きなんです!」
(庶民ロジックすぎる……! この子、ゲームシナリオを軽く超えてるんですけど!?)
モフドラまで「ぷしゅー」と鳴きながら手の上にちょこんと乗ってきた。
その重みと温かさに、わたくしの頬も思わず緩む。
けれど――ライオネルの鋭い視線が突き刺さってきて、心臓がまたドキンと跳ねた。
(まさか、これが……新しいフラグ? でも私、悪役令嬢なのに!?)
混乱するわたくしをよそに、朝の市場はにぎやかな声であふれ続けていた。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
クラウディアのドタバタ劇、少しでもクスッとしていただけたでしょうか?
もし楽しんでいただけたなら、ぜひ評価や感想をお寄せください。
みなさまの声が、クラウディアが次に転ぶ方向――いえ、進む方向の支えになります!
それでは次回も、どうぞお楽しみに!
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