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完璧侯爵様、恋するとお腹が痛いんです —恋すると腹がキリキリする侯爵様の100連敗—  作者: ヨーヨー
第6章 聖職者 セラフィーナ

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第52話 シスター、と守護神ライ様

今回は修道院の鐘楼探検編です。

鐘の合鍵を取りに行くライと子どもたち。けれど出てくるのは“巨大化モフドラの影”や“おならの鐘”など、とんでもないハプニングばかり!

そして最後には、鐘の音に包まれるちょっと心が温まる瞬間も……?


「続きも読んでみたいな」と思った方は、ぜひブックマークをお願いします!

あなたのひと押しが、この物語をもっと広げてくれます。

朝の修道院は、まだ鐘の音が鳴っていないのに、すでに大騒ぎだった。


昨日の夜にセラフィーナが頼んだ「鐘楼に合鍵」を取りに行く日だ。


鐘楼――それは修道院の片隅にそびえる石造りの塔だ。

てっぺんには大きな鐘が吊られていて、本来なら朝に「ゴーン」と響かせる役割がある。

だが今は扉の錠前が壊れてしまい、鐘が鳴らせない状態になっていた。


「鐘が鳴らないと、ご飯もまずく感じるんだよ!」

「うん!朝の始まりって感じしない!」


子どもたちが口々に文句を言いながら、塔の周りに群がる。

そして黒マントを羽織った長身の男――ライオネル・フォン・グランツを見上げた瞬間、ざわめきは一転して静まり返る。


「……ライ様」

「僕がなんとかしよう」


怖い顔なのに、不思議と安心する。

子どもたちは一斉に背筋を伸ばし、まるで軍隊の行進みたいにきちんと並んだ。


 


セラフィーナが両手を胸に重ね、ほわんと笑う。

「まあ……鐘の神様のお家に行くのですわね」


「お化け屋敷の間違いだろ!」

「神様よりおばけの方がいそう!」


子どもたちは大はしゃぎ。

セラフィーナの言葉を信じている子もいれば、半分怖がっている子もいる。


バルドが咳払いをして低い声を落とす。

「神様も迷惑でしょうな。殿のお顔と同居させられるのは」


「……」

ライは無言で石段を登り始めた。


 


鐘楼の中は、外観以上に古びていた。

階段は急で、木の板はギシギシ鳴り、長年のホコリがたっぷり積もっている。

子どもたちは「うわー!」と騒ぎながらも、好奇心に負けて先へ先へと駆けていく。


そのとき――。


「きゃあっ!でっかい影ー!」


壁に映る黒い怪物のような影に、子どもたちが一斉に悲鳴を上げた。

影の正体は……モフドラだった。

手のひらサイズの小さな竜なのに、ちょうど光に照らされて、壁に巨大なシルエットが浮かび上がっていたのだ。


「モフドラが巨大化したー!」

「暗くなるとドラゴンになるんだ!」


セラフィーナが「まあ……暗いと大きくなるのですね」とにこにこ言ったせいで、子どもたちは完全に信じ込んでしまった。


「違う。ただの影だ」

ライのツッコミは、見事に子どもたちの歓声にかき消される。


 


さらに、ミーナが息を切らしながら旗を持って駆け上がってきた。

「鐘の鍵捜索チーム、出動です!」


だがその旗が梁にひっかかり、積もったホコリを「ボフッ」と散らしてしまう。

子どもたち全員が咳き込み、鐘楼は一瞬で白い煙幕の戦場と化した。


「ごほっ……ライ様、敵は埃です!」

「……敵じゃない」


ライは淡々と階段を登り切り、梁を見上げた。

そこに古びた鍵束がひっかかっているのを、鋭い目で見つける。


 


ライは縄とフックを取り出し、器用に投げて梁へ引っかけた。

正確に巻き取り、見事に鍵を回収する。


その一連の動きに、子どもたちは目を丸くした。


「すっげー!ライ様、忍者だ!」

「違う、忍侯だ!」

「なにそれ!」


鐘楼の中は笑い声でいっぱいになった。


 


鍵を受け取ったセラフィーナは、胸に当ててほっと微笑む。

「やっぱり……神様のお弟子様ですわ」


その笑顔に、ライの胸がきりきりと締め付けられる。

懐中時計の針が「カチ」と跳ね上がり、モフドラが「ぷしゅ〜」と小さく湯気を吐いた。


鐘楼の窓から差し込む朝日が、王都の街並みを照らす。

子どもたちは歓声を上げて「宝物みたい!」とはしゃぐ。


その横で、バルドが静かに一言落とした。

「若様。鐘楼の景色は輝いておりますが……殿のお顔は逆光でもなお陰影が深い」


「……はあ、、口が減らないな、バルドは……」


ライは小さくため息をついたが、その横顔は少しだけ柔らかく見えた。



修道院の鐘楼は、見上げるほど高かった。

レンガ造りの古い塔で、上まで伸びるらせん階段は薄暗くてきしむ音を立てている。


「よし、鍵は開いたな」

ライは古びた鉄の扉を押し開ける。


子どもたちがわらわらと後ろからついてきた。

「鐘を鳴らすと、お腹がすくんだって!」

「ちがうよ、頭がよくなるんだ!」

「いや、結婚できるんだぞ!」


妙な迷信合戦が始まる。


セラフィーナは相変わらず穏やかな笑顔で答えた。

「鐘の音は心を澄ませてくれるのですわ」


「えー! お菓子は出ないの!?」

子どもたちはがっかりして肩を落とす。


バルドが咳払いをして言った。

「子ども達には、ありがたい鐘の音より、お菓子でございますな」


 


塔の最上階には、巨大な青銅の鐘がぶら下がっていた。

長年の埃をかぶり、ロープはよじれて固くなっている。


「これを鳴らすのか」

ライがロープを確かめようと近づいた、その時――。


「任せてくださいっ!」

ミーナが勢いよくロープを引いた。


ゴォ……ン。


……と鳴るはずが、半分しか音が出ず、間の抜けた「ぼふっ」という音だけが塔の中に響いた。


「ぶはっ! 屁の音だ!」

子どもたちが大爆笑。

「鐘じゃなくて、おならの鐘だー!」


ライは額を押さえた。

「ロープがねじれている。直せば――」


だが説明を最後まで言う前に、子どもたちが我先にロープへ飛びついた。

「せーのっ!」


ゴォォォォォン!!!


鐘が大きく鳴り響き、塔全体が震えた。

次の瞬間、天井から溜まっていたホコリがドサッと落ちてきて、全員真っ白。


「わぁぁ! 雪だ!」

「粉雪祭りだー!」


セラフィーナだけはうっとりと鐘を見上げ、

「まあ……雪みたいで綺麗ですわ」と微笑んだ。


ライの顔にもホコリがべったり。

その鋭い顔立ちに白が重なり、さらに迫力が増した。


「鐘の守護霊だー!」

子どもが叫ぶと、笑い声が塔の外まで響いた。


 


やがて笑いが落ち着き、セラフィーナは鐘を見上げたまま、静かに言った。

「鐘の音が心を洗ってくれますわね。……ライ様が鳴らしてくださったから、きっと特別ですわ」


その一言に、ライの腹が「きゅるるる」と鳴る。

懐中時計の針がピクッと跳ねた。


「……いや、正しくは子どもたちが鳴らした」

彼は苦くごまかすが、子どもたちは一斉に叫んだ。

「ライ様が神様の弟子だー!」


ライは無言で柱にもたれた。

腹の奥がじわじわ痛む。


その横で、バルドが淡々と毒を落とす。

「若様。鐘の音は澄んでおりますが、殿の恋腹はまだ濁っておりますな」


「……ぐっ」

ライは小さくうめき、腹を押さえる。


しかし子どもたちの目には、その姿すら「鐘の守護神が休んでいる!」と映ったらしい。

「守護神が休んでるぞ!」

「おやすみなさーい!」


笑いながら鐘楼を駆け下りていく子どもたち。


塔の中には、ライとセラフィーナとバルドだけが残った。

鐘の余韻が静かに響いていた。



ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

鐘を鳴らすだけなのに、どうしてこう毎回コメディになるのか……ライ様の顔と運命のせいかもしれませんね。

それでも子どもたちには「守護神」に見えるところが、彼らしいところです。


今回の見どころは、


・影で“巨大化モフドラ”と勘違いされるシーン


・「おならの鐘」で全員爆笑する場面


・セラフィーナの一言で腹がキリキリするライ


ドタバタと、少しの余韻を楽しんでいただけたなら嬉しいです。

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