第5話 若様、市場大混乱!恋腹と婚約騒動
今回はライとクラリスの「市場デート」です。
値切りもお見事、スリ捕縛でヒーロー扱い、そして……婚約騒ぎで市場全体が大パニック!
恋腹とミーナの暴走で、またも雰囲気は台無しに。どうしてこうなるのか……。
あなたの★【ブックマーク】一つで、王都がさらに安全になります。
王都の大きな市場は、朝から活気でいっぱいだった。
野菜や果物が山のように積まれ、屋台の商人たちは大声で客を呼び込む。
「安いよ安いよ! 今日だけだよ!」
「焼きたてパンだよ! 香ばしい香り、ほら嗅いでみな!」
子どもたちが走り回り、犬がパンをくわえて逃げ、持ち主が必死で追いかけている。まさにカオス。
そんな中、クラリスが控えめに口を開いた。
「今日は少し買い物をしたいのです」
「任せてください」ライは胸を張る。
バルドがすかさず皮肉を落とす。
「市場における若様のお顔は、値札を下げる効果があるやもしれませんな」
「それ、褒めてないだろ」ライがため息をつくと、横でミーナが元気よく手を挙げた。
「じゃあ私、横断幕を用意しておきますね! 『恋人同士のお買い物中!』って書いて――」
「やめろォ!」
ライが慌てて止めるが、すでに布を広げようとするミーナ。通行人が「え、恋人!?」とざわつきはじめる。
ライはあわてて布をひったくり、ミーナは
「えー、盛り上がるのに」とほっぺをふくらませた。
クラリスはそんな騒ぎを横目に、小さくクスッと笑った。
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野菜売り場では、商人が山積みのトマトを前にして「これ以上は値下げできません!」と頑張っていた。
ライは一歩前に出て、冷静に言う。
「来週から大収穫期が始まるはずです。今のうちに数をさばいた方が得ですよ」
「ぐっ……!」
商人は歯ぎしりしてから「一本取られた!」と叫び、値段を下げた。
周囲の客から拍手がわき、クラリスも目を丸くして「詳しいんですね!」と感心。
続いて布の店では、クラリスが青と赤の生地で迷っていた。
ライは生地を指先で軽くこすり、
「この青は湿気に弱い。長持ちしません。赤は高いですが加工しやすい」
クラリスは「なるほど……」と頷き、赤い布を選んだ。
ここまでは完璧。
……だったのだが。
ライのポケットの懐中時計が、チリチリと音を立て始めた。
恋心を測るその針が、ぐんと上がっている。
「……むずっ」
ライのお腹がムズムズし始め、恋腹が発動。モフドラが慌ててライのお腹に飛び乗り、「ぷしゅ〜」と湯気を吹き出す。
その瞬間。
「肉が蒸されてるぞーっ!!」
隣の肉屋の親父が叫び、あわてて肉をかき集める。客たちも「火事か!?」「逃げろ!」と大騒ぎ。
「違う! 火じゃない! これは……」
ライの必死の説明は、混乱の市場にかき消された。
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騒ぎが一段落したあと、クラリスが小さく笑った。
「でも……おかげで助かりました」
柔らかい声にライの胸はドクンと高鳴る。
「僕と……」勇気を出しかけた、その瞬間。
市場の反対側で、スリが子どもの財布をすり取ろうとしていた。
ライは一瞬でそれに気づき、衛兵に素早く合図を送る。スリはあっという間に捕まり、財布は無事に子どもへ返された。
「お兄ちゃん、ありがとう!」子どもが笑顔で頭を下げ、クラリスも「本当に頼りになりますね」と感心する。
市場の人たちから拍手がわき、ライは一躍“ヒーロー”扱い。
……だが、恋心を伝えるチャンスはまた遠のいた。
バルドは冷静にまとめる。
「若様、恋腹よりスリ捕縛の方が速いのは結構。しかし恋の進展は、いつも遅延でございますな」
ライは思わず天を仰ぎ、クラリスの横顔をちらりと見て、またお腹を押さえるのだった。
ライとクラリスの買い物は、順調すぎるほど順調だった。
値切りも品質チェックも完璧で、クラリスは
「本当に助かりますわ」とほほえんでいた。
……ここで終わっていれば、今日こそ“いい雰囲気”で帰れたのかもしれない。
だが、そんな平和をぶち壊す存在がいた。
「ライ様! サプラーイズ!」
ミーナが広場の端から飛び出してきた。
両手には、大人の背丈ほどもある巨大な横断幕。
金色のペンキでこう書かれていた。
──『ご婚約おめでとう!』
一瞬で市場が静まり返る。
次の瞬間、「えぇぇぇぇ!?」と全員が絶叫。
「婚約!?」「あの怖い顔の侯爵様が!?」
「いや、意外とロマンチストなのか!?」
クラリスは真っ赤になり、ライは真っ青になった。
「やめろーーーッ!」
ライは全力で横断幕をつかみに走る。だがミーナも「せっかく頑張って描いたのに!」と譲らない。
二人の間で横断幕はビリビリと裂け……最後には
「ご婚……おめ……」という謎の紙吹雪になって宙を舞った。
「わーい! 紙吹雪だー!」
子どもたちがはしゃぎ、駆け回る。
「祝いだ! 婚約祝いだ!」
パン屋の親父がノリでフランスパンを投げ売り。
「うちも負けてられねぇ!」
八百屋がキャベツをまきはじめる。
市場全体が、なぜか“即席結婚パレード”みたいなお祭り騒ぎに。
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「ま、待ってください! 婚約なんて、まだ……!」
ライは必死に否定するが、怖い顔で叫ぶせいで逆効果。
「わ!こわい顔!?やっぱり強引に結婚させるんだ!」
「顔こええ!!」
さらに誤解が拡大。
おまけにモフドラが「ぷしゅ〜」と湯気を吹き、紙吹雪を吹き飛ばそうとした。
すると周囲の人たちは「竜まで祝福してる!?」と大盛り上がり。
「若様、これはもう市場災害でございますな」
バルドが冷静にツッコミを入れるが、誰も聞いていない。
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ついにライは決断した。
魔法で声を拡張し、響き渡らせる。
「皆さん! 落ち着いて! 婚約など、まだ決まっていません!」
市場は一瞬でシーンと静まり返る。
フランスパンを持ち上げていた親父の腕が途中で止まり、キャベツを持った八百屋も固まった。
視線が一斉にライとクラリスに突き刺さる。
クラリスはうつむいて真っ赤になり、小声で
「ライ様は誠実な方です……でも、こういうのは、もう少しゆっくりがいいです」と答える。
「……分かりました。あなたの気持ちを尊重します」
ライは深くうなずき、大人の対応を見せる。
その瞬間、懐中時計の針がギュンと跳ね上がった。
「……ぐぅ……!」恋腹が“キリキリ”に突入。
ライが苦しそうに腹を押さえると、モフドラが慌てて飛び乗り、「ぷしゅ〜!」と湯気を噴いた。
市場の人々は「やっぱり婚約はまだか〜!」と茶化しながら散っていく。
クラリスは小さく頭を下げ、
「本日はありがとうございました」と礼儀正しく馬車へ。
ライは頭を抱え、「……待つのは得意なんだがな」とつぶやいた。
「若様、恋は値切りと同じ。焦れば損、待てば得でございます」
バルドのコメントで、この大騒ぎの幕は閉じたのだった。
読んでいただきありがとうございます!
市場という舞台は、群衆とドタバタが似合うので書いていて楽しかったです。
ライは恋心を伝える前に必ず“事件”が起きる運命のようですが、その不器用さこそが魅力だと思っています。
次回は果たして、腹痛より先に恋の進展があるのでしょうか? どうぞお楽しみに!
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書いていてコメディは楽しいですね。
きっと☆評価をするともっと楽しくなりますよ!
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