表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完璧侯爵様、恋するとお腹が痛いんです —恋すると腹がキリキリする侯爵様の100連敗—  作者: ヨーヨー
第1章 貴族令嬢 クラリス

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/100

第4話 若様、馬車で揺れる恋心

今回はライがクラリスを馬車で送るお話です。

剣も魔法も一流なのに、恋心が高まるとお腹が暴走するライ。そこへバルドの皮肉とミーナの暴走演出が重なり、馬車は揺れるわ心も揺れるわ……。ドタバタ恋路を楽しんでください!


ミーナが『★【ブックマーク】★100件で結婚一直線!』と騒いでます。どうかブクマしてあげて!

その日の午後、ライはついにクラリスを馬車で送ることになった。

彼女を迎える前から、執事バルドと侍女ミーナは大騒ぎだ。


「若様、馬車はすでに磨き上げております。まるで鏡のようにピカピカでございます。……お顔と違って」

「おい」

ライがにらむと、バルドは知らんぷりでひげを整えた。


一方のミーナは、また妙な小道具を用意していた。

「ハート型の紙ふぶきマシンです! 並木道に入ったらこれで一気にロマンチックに!」

「やめろ」

「若様のお顔とハート型紙ふぶきの組み合わせ……うーん、たしかにホラー寄りですね」

「おまえもだ、バルド!」


ドタバタしているうちに、クラリスが登場した。

落ち着いた笑顔を見せる彼女に、ライは背筋をぴんと伸ばし、恭しく手を差し出す。

クラリスは軽やかに馬車へ乗り込んだ。


ライは御者台に腰を下ろし、黒マントをなびかせながら手綱を鳴らす。二頭の栗毛馬が力強く地面を蹴り、馬車が石畳を走り出した。


走りは安定していた。

さすが王立学園で首席を取っただけある。

剣も魔法も強いが、実は馬術もトップクラス。

彼が手綱を握ると、馬は落ち着いて進み、石畳のガタガタすら小さく感じられる。


「わあ……すごく乗り心地がいいですね」

クラリスが小さく感嘆の声を漏らす。


その瞬間、ライの懐中時計がカチリと音を立てた。針がほんの少しだけ上へ。

(まずい……“ムズッ”の段階だ)

ライはさりげなくモフドラを腹に乗せる。

小竜は「ぷしゅ〜」と湯気を吹き、腹をじんわり温める。

「まあ、小竜さんは今日も元気ですね」

クラリスは微笑む。ライは「助かった」と心の中でつぶやいた。


会話も順調だった。

「クラリス様はどんな楽器がお好きですか?」

「竪琴が好きです。母がよく弾いてくれたので」

「いいですね。僕はリュートを少し。……いつかお聞かせします」

「ふふ、楽しみにしています」


さらにクラリスはお菓子の話を始めた。

「ケーキが好きなんです。シナモンが効いていると最高で」

ライの脳内に巨大なメモ帳が出現し、

「ケーキ、シナモン多め」と書き込まれた。

(必ず作って届けよう……! いや、その前に告白だ!)


そんな決意をしたところで、ミーナがやらかす。

「クラリス様! この馬車、もうすぐ“恋が実る並木道”に入りますよ!」

「えっ!?」クラリスが目を丸くする。

「ちょっ、ミーナ!」ライが慌てて声を上げる。


バルドがすかさず皮肉を放った。

「若様、恋が実る前に馬車が蛇行しませんよう」


懐中時計の針がピクリと跳ねる。恋腹がムズムズし始め、ライは必死に腹を押さえながら手綱を握りしめた。

「……落ち着け、僕。直進あるのみだ」

馬は真っすぐ進んでいるのに、ライの心臓とお腹だけが全力で蛇行していた。


クラリスは外を見て風を感じながら、くすっと笑った。

「でも……なんだか楽しいです」


ライは腹を押さえながら必死に笑顔を作る。

だがその顔は――やはり怖かった。



馬車は王都の外れにある並木道へと入った。

両側の木々は高く伸び、葉の隙間からこぼれる光が、まるで舞台のスポットライトみたいに揺れていた。

小鳥の声まで加わり、雰囲気は最高だ。


「ここ、素敵ですね」

クラリスが小さく笑った。

ライの胸はドクンと高鳴る。懐中時計の針がジワリと上がり、腹の奥がむずむずしてきた。


「む、むずっ……」

ライが腹を押さえると、肩の上からモフドラがぴょこんと飛び降り、ライのお腹に着地。

「ぷしゅ〜」と湯気を吹き、温め始める。

クラリスは目を丸くしてから、ぷっと笑った。

「まあ……小さな温泉みたい」


空気が少し和んだ、そのとき。


「ライ様! ここは勝負どころです!」

後方からミーナの声。なんと、彼女は馬車を必死に追いかけながら、袋いっぱいのバラの花びらをつかんでいた。

「ロマンチック演出です!」

勢いよく撒いた瞬間、風が逆方向に吹き、花びらはすべて彼女自身に降り注ぐ。

赤とピンクの花びらまみれになったミーナが「キャー!」と叫びながら転んでいくのが見えた。

クラリスは口元を押さえ「お茶目な方ですね」と笑った。ライは心の中で(加点要素はゼロだ……!)と頭を抱える。


並木道の中央、木漏れ日が一段ときれいに差し込む。ライはクラリスの横顔に見とれた。次の瞬間——。


ビクンッ。懐中時計の針が跳ね上がる。

「……きりきりっ」

腹がギュルルと鳴った。ライの手から手綱がわずかにぶれ、馬たちが驚いて左右に蛇行しはじめた。


「きゃっ!」

クラリスがシートにしがみつく。

馬車は右へ、左へとフラフラ。

「大丈夫! 僕に任せて!」

ライは必死に叫ぶが、その真剣な顔が怖すぎてクラリスは「た、頼もしい……ですけど……」と声を震わせる。


後部座席のバルドが冷静に一言。

「若様、恋心は蛇行しても結構ですが、馬車は直進してくださいませ」


「そんな場合じゃない!」

ライは深呼吸し、両腕に力を込めて手綱を引き直す。やがて馬たちは落ち着きを取り戻し、揺れる馬車は真っすぐに戻った。クラリスも胸を撫で下ろす。


そして馬車は、彼女の屋敷の前に無事到着した。

クラリスは乱れた髪を整え、少し照れたように笑った。

「今日は本当に楽しかったです。……でも、スリルはほどほどにお願いしますね」


「……次は、もっと穏やかに」

ライは必死に微笑もうとしたが、やっぱり顔はホラー寄り。クラリスは丁寧に会釈し、屋敷へと入っていった。


残されたライは腹を押さえながら懐中時計の針を見つめる。針は高い位置で小刻みに震えている。

「あと一歩……だったのに」


すると、バルドの締めのツッコミが飛んだ。

「若様、恋路に蛇行は禁物でございます。……ついでにお顔も直進で」


ライは天を仰ぎ、「顔まで直せと言うのか……」と小さくつぶやいた。

モフドラは「ぷしゅ〜」と湯気でオチをつけ、馬車の周囲はまた笑いに包まれた。

読んでくださりありがとうございます!

今回のお気に入りは、やはりバルドの「顔も直進で」。

ライの真剣さとコメディが同居するのがこのシリーズの面白さだと思っています。次回もぜひお楽しみに!


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

楽しんでいただけましたか?

かわいいモフドラに免じて☆評価5でお願いします!

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ