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完璧侯爵様、恋するとお腹が痛いんです —恋すると腹がキリキリする侯爵様の100連敗—  作者: ヨーヨー
第4章 氷花雪女 ユキノ

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第31話 雪女、雪の王都と“山の主”討伐隊

お読みいただきありがとうございます!

今回から新しい大きなエピソードに突入します。

王都を襲う異常な吹雪、そして噂に出てきた“山の主”。ライと仲間たちは雪山へ向かうことになります。


ただし本作はあくまで「恋して腹痛コメディ」!

果たして雪山で待ち受けるのは、恐ろしい魔物か、それともまたしても恋腹か……!?


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひブックマークして応援していただけると嬉しいです!


王都は一面の雪に覆われていた。


屋根から屋根へ真っ白に積もり、道はすべて氷の坂道みたいになっている。

市場の人々は荷車を押そうとしては転び、商人たちは店先で「こんな日に客が来るか!」と頭を抱えていた。


「順番を守れ!」

「押すな押すな!」

怒鳴り声や悲鳴まで混じって、王都はまるで戦場だった。



---


そんな混乱の中で、たった一人だけ冷静に動いている人物がいた。

侯爵家の跡取り、ライオネル・フォン・グランツ――通称ライ。


彼は大きなスコップを持ち、黙々と雪をかいている。動きは無駄がなく、雪は見事な直線で積み上がり、まるで氷の城壁のようになっていく。

通りの人々は思わず見惚れた。


「さすが侯爵家の若様!」

「動きが早い!」


拍手と歓声が上がる。


……が。


ライが顔を上げ、ちらっと人々を見た瞬間。

子どもが「ぎゃああっ!」と泣き出し、母親が「ありがたいけど怖い!」と頭を下げながら走って逃げていった。


「……まただ」

ライは小さくため息をつく。


その横で、侍女ミーナがキラキラした目で叫んだ。

「若様! 今こそ告白チャンスです!」


「告白とは……誰にだ」

ライの顔がさらに険しくなる。


「周囲の女性、全員です! こんな大活躍を見て、心はもうメロメロです!」


「ミーナ、口を閉じろ」

冷たく言われ、ミーナは「ひゃいっ」と口を押さえた。


執事のバルドは、ひげをいじりながらぼそり。

「若様の雪かきは芸術的。しかしお顔は……吹雪以上に人を凍らせておりますな」


「……努力で直せるものなら、とっくにしている」

ライはまたもため息。



---


そこへ――。


「やあ、朝から派手に働いているじゃないか」


澄んだ声とともに、雪の中を颯爽と歩いてきた青年がいた。

金の髪が光を反射し、青い瞳は空よりも鮮やか。誰が見ても「王子様だ」と思うような完璧な容姿。


ロイス・フォン・アルベルト。王国でも名高い公爵家の息子で、ライの友人でありライバルでもある青年だ。


通りの女性たちが一斉に黄色い声をあげた。

「キャー! ロイス様だ!」

「雪でも輝いてる〜!」


その反応を見て、ライは少しだけ眉をひそめる。

並んで立つ二人。

――顔怖いライと、顔キラキラのロイス。


民衆はすぐに対比をつけてざわついた。

「あれ? 一緒にいるとライ様が余計怖く見える……」

「うぐぐ……イケメンは嫌いだ……!」



---


ロイスは笑みを浮かべながら、しかし声は真剣だった。

「冗談を言っている場合じゃない。王都のこの異常な吹雪……原因は“山の主”だ」


「山の主?」とミーナが首をかしげる。


ロイスはうなずいた。

「古くから雪山に棲みついている巨大な魔物だ。今までは山奥にいたが、力が暴走して王都に影響を及ぼしはじめた」


「放っておけば、王都は雪が積もるばかり。これでは民衆も困るだろう?腕試しに我々で討伐に向かわないか?」

彼の目は真剣そのもの。


ライはすぐに理解し、短く返す。

「なるほど……、この雪には困ってたところだ。それに、山の主なら相手にとって不足はない」


ミーナがすぐさまノートを取り出し、でかでかと書き込んだ。

『共同ミッション=共同恋愛チャンス!』


「今こそ、雪山で愛を叫ぶ展開です!」

「……ミーナ」ライの目が細くなる。


「ひゃいっ」またも口を押さえるミーナ。



---


そのやりとりを冷めた目で見ていたのは、妹のルチアだった。

黒い髪に大きなリボンをつけた少女は、呆れ顔で言う。


「兄上は雪山などより、婚約者探しに登った方が効率的ですわ」


「雪が積もりすぎると危険だ。領民の安全が優先だ」

ライはきっぱり言い切る。


ルチアは肩をすくめて冷ややかに返した。

「……また失恋街道ですわね」



---

ルチアは腕を組んで、つんとそっぽを向いた。

「私は行きませんわ。雪で髪が乱れるなんて、ぜったいにイヤですもの」


あまりにも正直すぎる理由に、その場の空気が一瞬止まる。

「……自己中心的すぎる」ライが額を押さえた。


バルドがすかさずヒゲをひねり、淡々とまとめる。

「では、雪山へ向かうのは若様とロイス様、侍女殿にこの老骨ということで」


「よーし! 恋愛応援のために全力でついていきます!」ミーナが意味不明なガッツポーズをする。


「……戦闘応援だろ」ライは低く突っ込むが、誰も気にしていなかった。



---


旅支度が始まる。


ライは魔法道具をきっちり整備。

ロイスは氷対策の剣を持ち、颯爽と準備を整える。

ミーナは「恋愛応援グッズ」と書かれた怪しいポーチを抱え、「これで絶対成功です!」と胸を張る。

バルドは胃薬、毛布、非常食……と全員分の装備を冷静に揃えていた。


その横で、手のひらサイズの小竜モフドラが雪を見て大はしゃぎ。

「ぷしゅ〜!」と湯気を吐き、せっかく作られた雪だるまを溶かしてしまう。子どもが泣き笑いする大惨事。



---


「では出発する」

ライが凛々しく宣言した。


……その直後。


懐中時計の針がピクリと跳ね、ライは腹を押さえる。

「ぐっ……」


ミーナが大声をあげた。

「もう恋腹ですか!? 誰に!?」


バルドはため息をつき、冷静に毒舌を落とす。

「若様。雪山より前に、ご自身のお腹を討伐なさいませ」


庭にいた使用人たちがクスクス笑う中、ライは顔を真っ赤にして出発した。




屋敷を出ると、白い世界がどこまでも広がっていた。

王都の街道はすでに雪で埋まり、道かどうかすら分からない。吐く息は白く、頬を刺す冷気はまるで小さな針みたいだ。


「進行方向を確認する」


地図を広げて真剣に言うライ。姿勢は完璧で、声も頼もしい。

……はずなのに、あまりに真面目すぎる顔つきが怖すぎる。


「ライ様! その顔、雪より冷たいですよ!」

侍女のミーナがすかさず突っ込む。


ロイスはといえば、優雅に歩こうと前へ出た瞬間――。


ズボッ!


足が雪に深々と沈み、腰まで埋まってしまった。

「……おかしいな。雪の上でも足さばきが大事だと思ったんだけど……」

必死に格好つけるが、動きはもがくカエルにしか見えない。


「雪だるま貴族!」

ミーナが腹を抱えて笑い転げる。


「誰が雪だるまだ!」

と赤面するロイスを、執事バルドが無言で引き上げる。

「若様と違って、見た目が麗しく、ユーモアもあるご様子ですな」

「誰がユーモアセンス抜群だ!」


「そんなことは言っておりません」

とバルドは呆れ顔。


笑い声と怒号の中で、モフドラがライの肩に乗り、ぷしゅーと湯気を吐いた。場の空気がほんのり温まる。



やがて一行は凍った小川に差しかかった。

「私が先導します!」と元気よく飛び出したミーナ。


ツルンッ!


そのまま氷の上で大スピン。


「危ない!」

ロイスが飛び込んでキャッチ――したはずが、二人まとめてくるくる回転し、バシャーン!と雪水に突っ込んだ。


「……なにをしている」

呆れた声を残し、ライが魔法で乾かそうと風を吹かせる。


しかし風は強すぎ、ロイスの髪が爆発ヘアに。

「ロイス様のライオンヘッド面白いー!」

ミーナが涙目で笑い転げる。


「髪型より冷えにお気をつけを」

バルドは毛布を差し出し、火にかけた湯をすっと置く。その落ち着きぶりに、誰も逆らえなかった。


夕方、ようやく山のふもとにたどり着く。

見つけたのは古びた宿屋。木の壁はギシギシ鳴り、屋根からは雪がつららみたいにぶら下がっている。


出迎えた老婆が囲炉裏の火をくべながら言った。

「こんな吹雪は、“山の主”のせいだろうねえ」


さらに声をひそめる。

「それに……真っ白な娘の影を見たって話もあるんだよ」


「雪女!?」ミーナの目が輝いた。


「たとえ相手が雪女でも、誠実に向き合えばいい」

ライが真顔で答え、場が凍る。


「いやいやいや!」

ロイスとミーナが同時にツッコミを入れる。


バルドは茶をすする音を立てながら、ぼそりと落とす。

「雪も恋も、降れば積もる……若様の連敗記録のように」


「……勝手に積もらせるな」

ライが苦い顔をしたところで、囲炉裏の火がパチッと弾けた。


笑いと不安が入り混じる夜が、静かに更けていった。



いかがでしたか?

ライの雪かきがまるで芸術品みたいだったり、ロイスが早速「雪だるま」扱いされたりと、今回もお腹を抱えて笑える場面を詰め込みました。


でも笑いの裏では、「山の主」という新たな強敵が待っています。

さらに「真っ白な娘の影」の噂まで出てきて……雪女の登場を予感させますね。

ここから物語は大きく動き出します。


次回も楽しみにしていただければ幸いです!

ブックマークや感想をいただけると、作者の励みになって雪かき以上に心が温まります☃️✨


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楽しんでいただけましたか?

ぜひ☆評価で作者のやる気が上がります!

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まとめサイトはこちら!

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