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完璧侯爵様、恋するとお腹が痛いんです —恋すると腹がキリキリする侯爵様の100連敗—  作者: ヨーヨー
第1章 貴族令嬢 クラリス

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第3話 若様、庭園で花見と白鳥バトル!

舞踏会、お茶会に続く第3戦!

今度の舞台は王都でも人気の庭園です。

花やハーブの知識でライは大活躍――のはずが、花粉と恋腹がダブルで襲いかかる!?

果たしてライはクラリスに「誠実さ」を伝えられるのか、それともまた腹痛で退散か……。


★【ブックマーク】★してくれたら、ライの腹痛も少し和らぐ……かも?


王都の外れにある大きな庭園は、朝の光でキラキラしていた。

季節の花が並び、池の水面には白い鳥が浮かんでいる。今日は「学問庭園」の特別貸し切りの日。学園や貴族の若者が教養の一環で花を見たり、植物を学んだりする場所だ。


「見てください! じゃーん!」

門の前でミーナが得意げに取り出したのは、一枚の厚紙。

表にはでかでかとこう書いてある。

――『二人きりで静かに花見できます、これであなたも恋人ゲット券』。


「……名前が長い」

ライが顔をしかめる。

「字面がうるさい券ですな」バルドがすかさず切り捨てた。

「ちょっと! せっかく徹夜して作ったんですよ!」


門番がその券を見て目をぱちくり。

「ふ、二人きりで……んんっ??な、なんて書いてるんだ……?」

あまりに説明が長すぎて途中で詰まる。


ライが冷静に「許可証です」と言い直して、やっと通してもらえた。

クラリスは苦笑しながら「助かりました」と小声でお礼を言った。



---


庭園に入ると、さっそくミーナが袋を広げた。

中にはピンク色の花びらがぎっしり。

「ここで花びらをまけば、ロマンチック度マックスです!」

「だめだ」

ライがすぐ止めると同時に、警備兵が飛んできた。

「花びらの持ち込みは禁止です! 植物に悪影響があります!」

「えっ!? 美は異物じゃないのに……」

「本日の最大の異物は、あなたの演出ですな」

バルドの一刀両断に、ミーナはしょんぼり肩を落とした。


クラリスはそんなドタバタを見て、クスクス笑っていた。

「にぎやかで楽しいです」



---


花の小道を歩くと、白いバラが並んでいた。

「白いバラは“尊敬”という意味があります」ライが言う。

彼は実際に水差しを手に取り、根元へ少しずつ水を注いで見せた。

「葉っぱにかけすぎると弱るんです」

「へえ、知らなかったです」

クラリスが素直に驚く。


彼女が水差しを受け取ろうとすると、ライの手とほんの少し触れそうになった。


その瞬間――

懐中時計の針が、カツンと一目盛り上がった。

恋腹“ムズッ”。

ライはすかさず一歩引いて深呼吸。

服の中でモフドラが「ぷしゅ〜」と小さく湯気を吹く。

幸いクラリスは気づかず、楽しそうに水やりを続けた。



---


次に立ち寄ったのはハーブ区画。

ライは葉を一枚摘み、クラリスに差し出した。

「これがミントです。僕の腹痛の……非常用の薬です」


クラリスは葉の香りをかいで微笑んだ。

「かわいい秘密ですね」

その言葉に、また針がカツンと跳ねた。


モフドラがあわててお腹を温める。

バルドはチラッとモフドラを睨んで

「出力を下げなさい」と無言の圧。

モフドラは「ぷしゅ…」と湯気を小さく絞った。



---


温室の前に出ると、掲示板に大きな札が出ていた。

『本日、花粉多め。くしゃみに注意』。

ライは眉をひそめてつぶやく。

「風も出てきたな。気をつけよう」


「ロマンチックには、これ!」

ミーナがいきなりシャボン玉を吹き始めた。


庭園の係が飛んできて「割れると…床がすべります!」と怒られ、すぐにストップ。

バルドは小さくため息をついて

「ロマンは泡とともに消えましたな」。

クラリスは手で口を押さえ、笑いをこらえていた。



---


小さなトラブルのあと、花壇の前で子どもが木札でできた名札を抜こうとしていた。

ライはしゃがんで優しく声をかけ、抜かれた木札をしっかり固定した。

そばで見ていたバルトが無言で親指を立てる。

クラリスはその光景を見て、静かに言った。

「子どもへの声のかけ方もやさしいんですね」


懐中時計の針がまたコツンと跳ねる。

ライは心の中で(落ち着け、僕は完璧だ。恋以外は…)と唱え、深呼吸した。



---


一旦外に出て池の見えるベンチに腰を下ろすと、クラリスが隣に座った。

距離はほんのわずか。

ライのお腹はまた“ムズッ"と反応したが、ミントをかじってごまかす。

モフドラが控えめに「ぷしゅ」とお腹を温める。


通りすがりの少年がライの笑顔を見てビクッと固まる。

母親に手を引かれて逃げていった。

「すまない……」ライが小声で謝ると、クラリスは笑って首を振った。

「私は大丈夫ですよ」


その笑顔に、また針がひとつ上がった。



---


ちょうどそのとき、風が強くなり、木に吊るされた「花粉多め」の旗がバタバタ揺れた。

「次は花のトンネルですよ!」

とミーナが張り切って先導する。

バルドは静かに一言。

「若様、本日最大の敵は、恋でも顔でもなく、花粉でございます」


ライは腹当てを軽く叩き、立ち上がった。

次なる試練を前に、針はまだ静かに揺れていた。



王立庭園の奥は人が少なく、さっきまでの花粉まみれの空気よりは少し楽だった。

ライとクラリスはベンチに腰を下ろす。二人の距離は、ほんの少し近い。

横でミーナは、なぜか袋をゴソゴソしている。嫌な予感しかしない。


「風が気持ちいいですね」

クラリスがそう微笑んだときだった。突風がまた吹き、彼女の髪飾りが空へ舞い上がった。


「危ない!」

ライはすばやく立ち上がり、長い腕でひょいっとキャッチ。

おお、完璧に決まった。クラリスはぱちぱちと目を瞬かせ、にっこりと微笑む。


「ありがとうございます。落ちてしまうところでした」


バルドが小声でぼそっとつぶやく。

「若様、今のは百点満点でございますな」


ライの胸に、少しだけ自信が宿る。

だが、横でミーナが「今だ!」とばかりに奇妙な筒を取り出した。


「静音花火吹雪チューブです! 雰囲気作りに最適!」


シュボッ! と火花が走り、花びらが舞った。

いや、正確には花粉が巻き上がった。

ライの鼻がむずむず……そして――。


「へっくしょん!!」


強烈なくしゃみ一発。

花びらも花粉も一緒になって、まるで爆発のように散った。

ミーナのスカートがばさっと舞い上がり、

「ちょ、ちょっと!」と悲鳴をあげる。

通りかかった庭師がビクッと固まった。


「な、なにかの襲撃か……!?」


バルドが慌てて説明する。

「いえ、違います。ただの……仕様でございます」


クラリスは笑いをこらえ、ハンカチで口を押さえている。ライの顔は熱くなるばかりだった。



---


そのとき、池から白鳥がすーっと近づいてきた。

純白の羽、長い首。美しい鳥だ……が、白鳥はライの黒マントの裏地の赤色に目を留めた。


「……」

白鳥のくちばしがマントをツンッ。さらにツンツン。


「なっ……やめっ……」

ライは反射的に体をひねり、クラリスを後ろにかばった。結果だけ見れば、完璧なナイトムーブだ。

クラリスは「まぁ……」と赤くなったが、白鳥はそんな空気を読まない。靴までペチペチ攻撃してきた。


ミーナが叫ぶ。

「白鳥さん! 空気読んで!」


「白鳥に空気は読めませぬ」

バルドが冷静にツッコむ。


結局、ライは池の周りを少し小走りで追いかけられる羽目になった。

モフドラは肩でぷしゅーっと湯気を吹き、さらに誤解を招く。遠目の子どもが叫んだ。

「ママみて! 火竜と白鳥が戦ってるー!」



---


なんとか白鳥が去り、池のほとりに再び静けさが戻った。

クラリスが心配そうにのぞき込む。


「だ、大丈夫ですか?」


「ええ……少し、体調が……」

ライは深呼吸し、ポケットからミントの葉を取り出して口に含む。

さらに祖母の手縫いの腹当てを押さえると、モフドラがちょこんと乗ってじんわり温めてくれる。

しかし懐中時計の針は、ぐんと上がって「キリキリ」ゾーン。恋腹はごまかせない。


それでも、今がチャンスだとライは思った。

「クラリス様、もしよろしければ――」


だが声は震え、顔は“いつもの怖い顔”に固まっていた。


そのとき、近くの少年が「お兄ちゃん! 帽子が!」と叫んだ。

池に帽子が浮かんでいる。ライはすかさず糸の魔法を操り、帽子をスッとすくい上げて渡した。


「すげー!」少年は大喜び。

クラリスも目を細めて、「本当に頼りになるんですね」とつぶやいた。


……その言葉でまた恋心針が跳ね、ライのお腹は再びきりきり。

「きょ、今日は……案内できてよかった……」


クラリスは心配そうに首を振った。

「無理なさらないでください。お優しいのは伝わっていますから」


そのやさしさが胸に響く。だが、同時に胃も響いた。



---


退場の前に、ミーナがクラリスへ小物を差し出した。

「これ、押し花のしおりです! 運命って書いてあります!」


ライがすぐ取り上げ、裏に「ありがとう」と小さく書き直して手渡した。

クラリスは柔らかく笑って受け取る。


「次は“運命(大)”で作ります!」ミーナは胸を張る。

「まずは空気の大きさを測るのが先でございますな」バルドの一言で空気は締まった。


帰り際、白鳥がもう一度近づいたが、ライがじっと目を合わせただけでスッと引いていった。

最後に「へくしょん!」ともう一発くしゃみ。

花壇が揺れた。



---


夜、ライは独りつぶやいた。

「今日の花は散った。けれど、気づかいは残った」


バルドの声が背後から響く。

「若、花粉は敵。ですが“気づかい”は味方でございます」


ミーナが元気に言う。

「じゃあ次こそ、空気づくりで勝ちましょう!」


「まずは空気を読むところからでございますな」

バルドの落ち着いた声が、庭園の夜に響いた。


庭園デートはロマンチックどころか、くしゃみと白鳥のツンツン攻撃でまさかの大混乱。

それでもクラリスはライの優しさを確かに見てくれました。

ただし、恋腹の痛みは誤魔化せず……。

一歩進んだようで後退、でも誠実さだけはブレないのがライの強み。

次回はどんな試練が待つのか、お楽しみに!


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楽しんでいただけましたか?

☆評価するといいことが三つ起こります!

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