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完璧侯爵様、恋するとお腹が痛いんです —恋すると腹がキリキリする侯爵様の100連敗—  作者: ヨーヨー
第3章 召喚少女 島津カレン

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第28話 ギャル、消えゆく線と残したい気持ち

王都の朝は静かに始まったはずなのに……またも侯爵家の面々はドタバタ大騒ぎ!

今回はカレンの「透け現象」が本格化してしまいます。

笑いあり、不安あり、そして少し切ない雰囲気も混じる回です。

「彼女はどうなってしまうのか?」と気になる方は、どうぞ最後までお付き合いください!

(よかったらブックマークや感想で応援していただけると、作者のお腹も恋腹みたいに“キリキリ”して喜びます!)


王都の朝。


侯爵家の中庭はひんやりと静かで、噴水の水音がやさしく響いていた。


その中心で、みんなが集まっていた。


「よし、チェックするわよ」

ルチアが胸を張って取り出したのは、白と黒の縞模様が描かれた板。

「影チェック板」と自作の名前まで付けている。


カレンがその前に手をかざすと――。


「……あ」

縞模様が、指のすき間からうっすら透けて見えた。


「これ……まじで透けてる?」

カレンは自分の手をじっと見つめ、ふざける余裕もなくなっていた。


ルチアはきゅっと唇を結ぶ。

「段階一ね。輪郭が薄くなり始めてる。でも声や動きにズレはないから、まだ初期段階よ」


モフドラがカレンの手にちょこんと乗った。

「ぷしゅ〜」と湯気を吹くと、カレンの指先で湯気がちょっと揺れ、向こう側に抜けた。


「おお……湯気スルー現象!」

ミーナが目を輝かせて叫んだ。すぐにノートを取り出し、勝手に「湯気かわいいメーター」と書き込んでいる。


「ふざけてる場合じゃない」

ライは渋い顔でミーナの額を軽く小突いた。

「……進行はまだ浅い。だが、早めに手を打たねばならない。学園の古文書を調べに行く」


「了解です!」

ミーナは敬礼。だが手元のノートには「レベル1:うす透け、レベル2:おばけ、レベル3:透明人間」とふざけた図が描いてあった。


バルドは咳払いして一歩前に出る。

「若、冗談はさておき準備は整えてございます。埃よけのマスク、ランタン、胃薬……そして、万が一に備えて毛布も」

「……ありがとう」

ライは小さくうなずいた。


その時だった。


カレンのスマホが「ピコッ」と鳴り、画面のアンテナが一瞬だけ立った。

……すぐに「圏外」に戻る。


「ん? 今、電波立ったくない?」

カレンが目を丸くする。


ルチアはすぐに手帳に時刻を記録した。

「二度目……やっぱり偶然じゃない」


ライは言葉を少し飲み込み、それでも短く言った。

「急ぐぞ。図書塔だ」



王立学園の奥にそびえる図書塔。

禁書区に入るため、分厚い扉の前で彼らを待っていたのはアグネス老魔女だった。


白髪を後ろでまとめ、細い杖をついた姿は、まるで歩く歴史そのもの。

「ふん……黒魔術の妹君が連れてきたと聞いて来てみれば。若いのに顔がやたら怖い坊っちゃんまでいるとはねえ」


「……仕様です」

ライが深くため息をつくと、ルチアは

「兄上の顔はさておき、中をお願いします」

とぴしゃり。


アグネスは小さく笑い、杖で地を叩く。

重厚な扉がギギギと開き、埃の匂いとともに冷たい空気が流れ出た。


棚には革の装丁の本がぎっしり。蜘蛛の巣の張った巻物も並んでいる。

ミーナは「うわ、アレルギー出そう!」とマスクを二枚重ね。

モフドラは「ぷしゅっ」とくしゃみして湯気を飛ばした。


「……本に湯気は敵でございます」

バルドが静かにハンカチで本を拭う。



アグネスが分厚い古文書を開き、黄ばんだ紙に指を走らせる。

「おや、こんな記録があるよ」


ライとルチアが横から覗き込む。


「“線は太ければ太いほど、戻しの力も強い”」

ルチアが読み上げた。


「線……?」

カレンが首をかしげると、アグネスは机の上に紙コップを二つ置き、糸でつなげた。


「世界と世界のつながりは、この糸電話の糸みたいなものさ」

アグネスは糸をピンと張り、コップを揺らす。

「糸が太ければ、引っぱる力も強い。召喚の時に光が強すぎた……つまり線が太かったんだろうねえ」


「だから、あーしのスマホがたまに“圏内”になるのか」

カレンが手を打つ。


「そう。向こうの世界の信号が“こぼれ出す”現象だろう」

ライは真剣にうなずいた。


さらにルチアが次の行を読み上げる。

「……『薄くなる時、からだより先に“魂”が向こうへふらつく』」


カレンの笑顔が、少しだけ止まった。

「え、魂だけ戻るとか……ホラーじゃん」


アグネスは眉をひそめて続ける。

「ただし、完全に消える前に“送り環”を開けば、体も魂も一緒に帰れる。昔の術者はそうやって安全に帰していたそうだ」


ライは深く息を吸った。

「つまり――まだ間に合うということだな」


「おお、まとめ方うまい!」

カレンが軽く親指を立てるが、すぐに

「でも、あーしまだ帰りたくないんだよね……」

と小さくつぶやいた。


ライは視線を落とし、懐中時計を軽く握る。

針がほんのわずか震えた。


バルドが小声で呟く。

「若……笑顔と涙は、保存がきかぬものでございます」


ライは顔を上げ、短く答えた。

「必ず、普通の状態で帰れるようにする。……その上で、残る方法も探す」


アグネスは杖をつき、にやりと笑った。

「ならば、急いで調べるんだね。線は、待ってはくれないよ」


こうして一行は、図書塔の奥で“薄くなる”正体を知り、次なる行動を決めたのだった。



中庭の石畳に、黒い線で描かれた魔法陣が浮かび上がった。

描いたのはルチアだ。彼女は長い髪をかき上げ、小さく深呼吸をしてから呪文を唱える。


「……これで“線”の力を抑えられるはず」


カレンの手の甲がゆっくりと黒い光に包まれる。

透けかけていた指が、わずかに色を取り戻した。


「……お?」

カレンが自分の手を眺める。


ライも見守る。

息をのむように、光の変化を目で追った。

だが、ほんの数秒後。

すっと黒い光が弱まり、指先はまた淡く透けていく。


「……やっぱり長くは持たないか」

ルチアが肩を落とした。


「でも、一瞬は戻ったよな!」

カレンは強引に笑顔をつくった。

けれどその声の奥に、かすかな不安がにじむのを、ライは見逃さなかった。



---


そのときだ。

カレンの膝に置かれたスマホが「ピコッ」と音を立てた。

画面に、一瞬だけ“圏内”の文字。


「きた! 今度こそ!」

カレンが慌てて画面をスクロールしようとするが、二秒もたたないうちに“圏外”に戻ってしまう。


「……」

ルチアは表情を引き締める。


「線が強まっている証拠。長く続けば続くほど……魂の方が先に引っぱられる危険が高まる」


「魂か……」

ライは低い声で問い返した。


「もし……魂だけが先に戻れば、肉体はこの世界に取り残される。器だけの抜け殻になる」


重たい沈黙が降りる。

ミーナも口をつぐみ、バルドはひげを指先でなでながら壁の時計を見上げた。


カレンは一瞬だけ目を伏せたが、すぐに顔を上げ、明るく言った。

「ま、ゾンビ系女子とかウケるんじゃね?」


その無理やりな冗談に、みんなが少しだけ笑った。

だがライの目は笑っていない。


「……必ずこちらに残れる方法を見つける」

短く、強い声だった。


その言葉に、カレンの耳まで赤く染まった。

モフドラが「ぷしゅ〜」と湯気を吐き、まるで空気を和ませるようにライの肩にすり寄った。



---


やがて場は落ち着きを取り戻し、全員で作戦を練り直すことになった。


ルチアは術式の再調整を担当。

ライは学園の禁書区で追加の古文書を調べる。

ミーナはカレンの体調を記録し、日常の支えをする。

バルドは安全管理と薬の準備だ。


「……でも、あーし、ほんとまだ帰りたくないんだよね」

カレンが小さな声で本音をもらす。


「ライやみんなと過ごすの、マジ楽しいし」


その言葉にライは一瞬ためらったが、真剣な顔で答える。

「残る方法を……探す。必ずだ」


ルチアは小声で

「兄様、顔が怖いと誓いが台無し」とつぶやく。

バルドは「若、心は百点。お顔は……いつもどおりでございます」と穏やかに締めた。



---


その夜。

塔の鐘が遠くで鳴り響く。

月明かりに照らされた回廊で、カレンのスマホが再び「ピコッ」と光った。


“圏内”。


ほんの一瞬。

誰も声を出さず、ただカレンがその光を見つめて、静かに笑った。


不安と希望を同時に抱えたまま、夜はゆっくりと更けていった。




今回はコメディの中にシリアスを混ぜてみました。

カレンの軽口が空気を救う一方で、少しずつ深まる“不安”も描いています。

「透ける」というギャグっぽい現象を、仲間たちが本気で受け止める――そこに彼らの絆を入れたかったんです。

次回はさらに核心へと近づきます!どうか見届けてくださいね。


ブックマークで応援していただけると、まるで“アンテナが立った瞬間”みたいに作者に電波が届きます!

どうぞよろしくお願いします!

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楽しんでいただけましたか?

ぜひ☆評価で作者のやる気が上がります!

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まとめサイトはこちら!

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