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完璧侯爵様、恋するとお腹が痛いんです —恋すると腹がキリキリする侯爵様の100連敗—  作者: ヨーヨー
第3章 召喚少女 島津カレン

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第26話 ギャル、干し肉と噴水の朝

庭の干し肉点検から始まる侯爵邸の朝。

顔こわ侯爵ライ様の几帳面さに、妹・ルチアの魔法、ギャル・カレンの自由すぎるノリが混ざり、すでに混沌の予感……!

噴水が爆発しようが、恋腹がうずこうが、コメディは止まりません。

笑いながらも「ギャップ萌え」必至の一話、ぜひ最後までどうぞ!


(※読んで面白かったら、ブックマークで応援いただけると作者の恋腹が治るかもしれません!)


侯爵邸の広い庭に、朝の光が差しこんでいた。


長い芝生の上には木製のテーブルが置かれ、そこに整然と並ぶのは干し肉と乾パン。まるで兵士たちの点呼のように、一列ごときっちり揃えられていた。

それをライが腕を組み、睨むようにチェックしている。


「兄様……干し肉にまで威圧感を与える必要、ありますの?」


椅子に腰かけてお菓子をかじっていたルチアが、冷ややかに言う。

ライは大真面目に答えた。


「管理も鍛錬の一部だ。非常時に素早く配布できることは、領民を守るうえで重要だからな」


「さすが若様。完璧でいらっしゃいますな」


執事のバルドはヒゲをひねりながら言葉こぼす。

その横で、侍女のミーナが首をかしげる。


「でも……これ、ただの非常食ですよね? なんだか軍隊の儀式みたいです」


ライは姿勢よく背筋を伸ばし、ひとつひとつの保存食を丁寧に布で包んでいく。

真面目すぎるその動きに――。


「うっわ、干し肉にまで真剣とか反則! 顔こわいのに几帳面すぎて逆に笑えるんだけど!」


庭に入ってきたカレンが、声を上げて吹き出した。

彼女は金髪に制服のへそ出しスタイルという異様な格好で、侯爵邸の芝生にラフに寝転がる。


「ここ芝生広いしさ! 絶対“映えピクニック”できるって! ね、ライも一緒にやろーよ!」


「……残念だが、まだ午前の作業が残っている」


ライは真顔で答える。

カレンは頬をふくらませて抗議した。


「ノリ悪っ! 今がギャップ萌えチャンスなのに~!」


そう言ってスマホを取り出すが――画面の上にはおなじみの文字。


「……また“圏外”!? ここって電波の墓場か何か!?」


カレンが頭を抱えて叫ぶと、ルチアはきょとんとして兄にささやいた。


「兄様、この“圏外”というのは、やっぱり異世界語ですのね。意味がまったく通じませんわ」


ミーナも小声で「魔道具の専門用語ですかね……?」と首をひねる。

ライは咳払いをして「気にするな」とだけ言った。


と、その時だった。

庭の中央にある噴水が――「ボンッ!」と勢いよく水柱を吹き上げた。


「きゃっ!」


ミーナが悲鳴を上げて飛び退く。

しかしライは眉ひとつ動かさず、水路を確認してバルブをひねり、あっという間に噴水を静めてしまった。


「水圧の調整不良だ。応急処置でしばらくは持つ」


落ち着いた声に、ルチアがふっと感心したようにつぶやく。


「……やっぱり兄様は頼りになりますわね」


「やばっ! 顔こわいのに超頼れる! ギャップ萌え爆誕じゃん!」


ずぶ濡れになったカレンは頬を赤くして叫ぶ。

その瞬間、ライの胸ポケットにしまわれた銀の懐中時計が「チリッ」と音を立て、針がググッと上がった。

同時に、ライの腹に「むずっ」と痛みが走る。


「ぐっ……」


ライがさりげなく腹を押さえると、小さな竜――モフドラがぴょんと飛び乗り、お腹の上で丸くなる。

プシューッと湯気が立ちのぼり、ほんのり温かい。


バルドはヒゲをくるりとひねり、冷静に一言。


「若様。噴水の水圧よりも……お腹の水圧調整のほうが重大でございますな」


庭に、くすくすと笑い声が広がった。


王都を一望できる高台の庭園。石造りのベンチに、ライとカレンは並んで腰かけていた。

昼の喧噪も、夜景のきらめきの前ではすっかり静まり返っている。


「ひゅー……。マジでやば。インスタ映えとか余裕で狙える景色だわ」

カレンが息をのむように見渡すと、ライは真剣な横顔のままブランケットを取り出した。


「夜は冷える。肩にかけておくといい」

「……え。顔こわいのにブランケット男子とか、ギャップ暴力じゃん!」


心臓が跳ねた。しかもそのタイミングで、モフドラがライのひざに飛び乗り、ぷしゅーっと湯気を吐き出す。

カレンは思わず両手で顔を隠した。

「顔こわい+ブランケット+小ドラゴン……コンボ決まったー! 尊死するー!」


ライの胸ポケットから「カチッ」と音がした。

銀の懐中時計の針が跳ね上がり、ライは小さくお腹を押さえる。

「……っ」

恋腹の発作だ。だがライは真剣に隠そうとする。


カレンはその様子に気づいていない。

むしろ何かを言おうと、拳を握りしめていた。


「ライ、あーし……その……」


 勇気を振り絞った瞬間――。


 ガシャーン!


すぐ横で皿が割れる音が響いた。振り向くと、侍女のミーナが赤い顔で慌てていた。

「すみません! 片付けを……でも、今のっていい雰囲気でした?」

「ちがーう! ちょっと空気読んでよー!」


カレンが叫び、ライは真面目な顔のまま続きを待とうとした。


そこへ小走りでルチアが現れる。

「兄様、門限で門が閉まりかけですわ! ……おや、まあまあ距離が近いですわね。進捗、良」


「“進捗”って言うなー!」

カレンが立ち上がって叫ぶ。


「なんでなんで!? 空気クラッシャーズ多すぎ!」


告白のチャンスは木っ端みじん。

だが、思わず二人は顔を見合わせ――。


「……笑うしかないな」

「ほんとそれ!」


夜空に笑い声が響いた。


帰り道、石段を降りながらライは未来を語った。

「街に灯りを増やせば、夜道の事故は減るだろう。安心は、人を強くする」

その横顔を見つめ、カレンは心の中で

「顔こわいけど、心はやさしすぎる」と呟いた。


 そのとき――。


カレンのスマホがふいに光った。

画面に“アンテナ1本”が立つ。しかし、すぐに「圏外」に戻ってしまう。


「あれ……今、電波入った?」

「月の反射だろう。気にするな」


ライは取り合わなかったが、カレンの胸には小さな不安が芽生える。

けれど、彼女はそれ以上深追いせず、ブランケットの温もりに身を寄せた。


屋敷に戻ると、執事バルドがひげを撫でながら出迎えた。

「若様。恋もまた灯りと同じでございますな。強すぎれば目を焼き、弱すぎれば道を見失う……今宵はちょうどよい明るさでしたな」


ライは小さく笑い、うなずいた。

「……誠実に歩むだけだ。明日もな」



今回は「干し肉管理」と「ブランケット男子」で笑いとキュンが入り乱れる回でした。

ライ様は恋に不器用すぎて毎回腹痛を起こすのに、なぜか読者の胃袋までわしづかみにしてしまう不思議な魅力……。

カレンの告白(?)は見事にクラッシュしましたが、まだまだ二人の関係は続きます。


次回もぜひお楽しみに!

ブックマーク・感想をいただけると、モフドラが全力で「ぷしゅ〜」と喜びの湯気を吹きます!

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