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完璧侯爵様、恋するとお腹が痛いんです —恋すると腹がキリキリする侯爵様の100連敗—  作者: ヨーヨー
第3章 召喚少女 島津カレン

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第25話 ギャル、怖い顔の料理神!?

ようこそ、グランツ侯爵家の大台所へ。

今日のライは剣も魔法も使わず――包丁一本で敵(※行軍パン)を粉砕しております。

「怖い顔でエプロン」という、ギャップ映え選手権なら世界ランク1位の姿に、ギャル・カレンも庶民もメロメロ……かどうかはご確認ください。


なお、このお話を気に入っていただけましたら、ブックマークで「胃袋陥落」させていただけると嬉しいです!感想もお待ちしております✨


王都・グランツ侯爵邸の大台所は、朝から湯気でもうもうとしていた。


長い調理台には干し野菜や燻製肉、硬い行軍パンまで並んでいる。

大鍋がぐらぐら煮立ち、木べらでかき混ぜる音が響いた。


その前に立つのは――ライオネル・フォン・グランツ。

名門侯爵家の跡取りであり、学園首席の完璧超人。

ただし“顔が怖い”以外は。


だが今のライは剣を振るうのでもなく、魔法を唱えるのでもない。

黒エプロンをきゅっと結び、真剣な顔で鍋をのぞき込んでいた。


「干し根菜はぬるま湯で戻す。刻んで油で炒めて……次は行軍パンを砕いて入れる」


無駄のない動作。包丁の刃がコンッと軽く音を立て、硬いパンは見事に粉々。

スープに溶かし込み、最後に香草をパラリ。

ふわっと広がる香りに、使用人たちが思わず「おいしそう……」とつぶやいた。


その瞬間、入口から金髪のギャル――カレンがひょっこり顔を出した。

「え、ライくん……エプロン……やば、ギャップえぐっ!」


両手で口を押さえ、ぱちぱちとまばたきする。

周りの使用人も

「確かに……」

「顔は怖いけど、手元は神業だ」

とざわついた。


ライは平然と答える。

「これは救貧院に持っていく保存食の試作だ。腹に優しく、長持ちするように」


カレンはスマホを取り出す――もちろん圏外。

だがシャッターを切る真似をして「はい映えー!」と満足げにポーズを取った。


その横で、ライの銀の懐中時計がカチリと音を立てる。

針がわずかに上がり、腹がムズッ……。

モフドラが「ぷしゅー」と湯気を吹きながらライのお腹に張りついた。


「火事!?」

「違う、湯気だ!」


大台所にまた勘違いの声が飛ぶ。



---


昼下がり。

侯爵邸の前庭にテーブルが並べられ、無料の試食会が始まった。


並んだメニューは三つ。

・ほろほろパン粥(保存パンのスープ仕立て)

・干し野菜の甘酢マリネ

・塩漬け肉のほぐし


庶民たちが列を作る中、カレンが器を手に取る。


「ちょっと待った! 名前がダサすぎ! “パン粥”とかウケないから」

「……じゃあ、どう呼ぶんだ」ライが首をかしげる。


カレンは人差し指を天に突き上げた。

「ギルティーブレッド☆ はい、決まり!」


ミーナが吹き出す。

「急に強そうになりました!」


バルドは眉をひそめる。

「胃袋を責める罪深き名前……ある意味正しいやもしれませぬ」


彩りのために干し果物をふちに飾りつけるカレン。

「ね、見た目大事でしょ? 食べる前から“おいしそう”って思わせるのが映え!」

ライは素直にうなずく。

「視覚による初期判断。理にかなっているな」


こうして庶民たちに配られていく。

カレンは「はいギルティー一丁!」と元気に声をかけ、ミーナは必死に皿を並べ、

バルドはチェックをして回る。


「お盆、ふき忘れておりますぞ」

「バルドさん厳しい!」ミーナが青ざめる。


行列の人々はスプーンを口に運び、顔をほころばせた。

「やわらかい!」

「これならお年寄りも食べられる」

「腹にしみるなあ」


庶民の声に、ライは小さくほっとした。


カレンは横目でライを見て、ぽそり。

「ライくんの包丁さばき……職人すぎ。……ギャップ萌えだわ」


懐中時計の針がググッと跳ねる。

ライは冷や汗をにじませ、モフドラは「ぷしゅー」と全力で湯気を増量した。


子どもたちがモフドラに群がる。

「わー! あったかい! ドラちゃん、湯たんぽみたい!」

モフドラ「きゅるる」――まんざらでもない顔だった。



---


そのとき――。

走り回っていた子どもが鍋にぶつかり、鍋がグラッと揺れた。


「危ない!」

ライは瞬時に障壁魔法を展開。透明な壁が鍋を支え、一滴もこぼれない。

子どもも無傷で、庶民たちから拍手が起きる。


「さすが侯爵家の若様だ!」

「怖い顔でも、やっぱヒーローだな」


カレンも思わず赤くなり、手を胸に当てる。

「……やば。顔こわいのに、マジかっこいい」


懐中時計の針がカチリ。

ライの腹はキリキリと痛み、モフドラが慌ててぺたりと張りつく。


ライは深呼吸し、カレンに小さな器を差し出した。

「……これを、君にも食べてもらいたい」


カレンはスプーンを手に取り、ひと口。

「……うわ、優勝。ライくん……料理神」


思わず笑みがこぼれ、顔がほんのり赤くなる。

ライは痛みに耐えながらも、真っ直ぐ答えた。

「君が喜ぶなら……それだけで、報われる」


カレンは一瞬ドキリとし、しかしすぐに笑顔で手を振った。

「でもさ、独り占めしちゃダメ! 映えはシェアで完成すんの!」


ライは小さくうなずく。

「……そうだな。君の決断を尊重する」


こうして鍋はすべて空っぽになり、庶民の笑顔で前庭がいっぱいになった。



---


カレンは両手を腰に当て、得意げに叫んだ。

「今日の学び! 保存食でも――ハートは盛れる☆」


ライは静かに付け加える。

「食べ物は栄養だけじゃない。見た目も、香りも、物語も……全部が力になる」


バルドはひげをなでながら総括した。

「本日の結論。若様の顔は硬派、料理は軟派、心は温派。……三拍子そろえば、胃袋は陥落ですな」


「やかましい」

ライは小さくため息をついたが、どこか満足げでもあった。


侯爵邸の庭は、すっかり食事の余韻に包まれていた。

長机の上には空になった鍋と皿だけが残り、庶民たちはお腹をさすりながら帰っていく。


「ふぅ……記録をまとめておこう」


ライは革表紙のノートを取り出し、料理の分量や改良点をびっしりと書き込んでいた。

真剣な横顔は戦場の司令官そのもの。


「ちょ、なにそれ!? 料理のレポート!?」


カレンは目を丸くする。

ノートをのぞき込むと、「塩ひとつまみ=指二本でつかんだ分量」「火加減=ろうそく三本分の明るさ」など、異様に細かい図解が並んでいた。


「……ガチすぎて怖っ! でも……やば、尊い……!」


カレンはスマホを取り出すが、やはり「圏外」。

仕方なく自分のチークでほっぺにハートを描き、「映えメモとツーショット!」とライのノートを抱きしめた。


ライは一瞬止まった後、真顔で言う。

「返すときはページを折らないように頼む」


「ノリツッコミないんかーい!」


庭に笑い声が響く。


そこへ侍女のミーナが片付けの盆を抱えて通りかかり、こっそりつぶやいた。

「……こういう細かすぎるところを“ギャップ”と呼ぶのでしょうか」


カレンは振り返り、力強くうなずく。

「そう! それが一番映えるとこなの!」


バルドはヒゲを撫で、くすりと笑った。

「若様。顔の威圧に、几帳面のスパイス。これは……庶民泣かせのレシピでございますな」


ライは首をかしげながらも、懐中時計をそっと押さえた。

針はじわりと跳ね上がり、お腹がムズムズとうずき始めていた。



---


 片付けが進む中、ふいに空気が変わった。

 カレンがライのエプロン姿をじっと見つめ、頬を赤らめる。


(顔こわいのに……ほんと、やばイケメン。……え、これ恋ってやつ?)


 ライも彼女の視線に気づき、銀の懐中時計の針がピクリと揺れた。

 お腹にキリッと痛みが走り、モフドラが慌てて「ぷしゅー!」と湯気を吹き出す。


「ぐぅ……!」


「ライくん、あーし……その……」


 カレンが言いかけた瞬間、ミーナがすっと横から割り込む。

「ライ様! 今こそ愛のポエムを朗読すべきです!」


「空気読んでよーーーっ!」


カレンの告白チャンスは秒で粉砕。

顔を真っ赤にして叫ぶカレンの横で、バルドが眼鏡を押し上げて苦笑した。

「若様。愛の詩は胃薬より効き目がございますかのう」


---


 夕暮れの庭園。

 片付けを終えたライが、静かにカレンへと向き直る。


「君が笑ってくれたなら……料理を学んだ甲斐がある」


 その誠実な声に、カレンの心臓がドキンと跳ねる。

「……もう、イケメンすぎ。ギャップ萌えで死ぬんだけど」


 ライは腹の痛みに耐えながら、言葉を絞り出す。

「君のことを……」


 だが再び“恋腹”が発動し、モフドラが大噴射。視界は真っ白。


「ぷしゅーーー!」


 思わず笑い転げるカレン。

 涙がにじむほど笑ってから、手をひらひら振った。


「もー、タイミング! ……でも、まずは友だちから、ね?」


 ライは深く息を吐き、真剣にうなずく。

「……君の決断を尊重する。友だちから、だな」


 その姿に、カレンはまた胸をきゅんとさせるのだった。



---


「胃袋を掴めば恋も掴める――と申しますが」


 バルドが腕を組み、皮肉げに言葉を落とす。


「若様の場合、胃袋は掴めど……同時に腹痛も掴まれるようでございますな」


 ライはお腹を押さえ、カレンは吹き出し、モフドラは「きゅるっ」と鳴いた。

 夕暮れの庭に、笑い声が響いていた。



いかがでしたか?

今回のライは「胃袋を掴む=恋を掴む」を実践しようとした結果……掴んだのはやっぱり腹痛でした。

庶民の胃は満たされても、侯爵様の胃はキリキリ。料理は温派、顔は硬派、心は……恋に弱派。これぞ“完璧超人のレシピ外”ですね。


ブックマークや感想で「今日のギャップはここだ!」と教えていただけると、ライの次回の腹痛も少しは和らぐはずです

さて次は――映えか、恋か、それともまた胃薬か? どうぞお楽しみに!


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楽しんでいただけましたか?

ぜひ☆評価で作者のやる気が上がります!

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まとめサイトはこちら!

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