第23話 ギャル、市場騒動とキラキラ囮作戦
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今回は市場の焼き串から始まるドタバタ劇。なんと、ギャルの“デコ力”が盗賊退治に役立ってしまいます!キラキラ荷車 vs ゴツい盗賊団、そしてライの腹痛(?)とヒーロー感。執筆中、私自身も「これ、コメディなのかバトルなのか!?」と笑いながら書き進めました。
ぜひ読みながら「この場面、映えすぎでは!?」とツッコんでいただけると嬉しいです。
昼下がりの市場は、焼き串の香りでいっぱいだった。
屋台の鉄板でジュウジュウと音を立て、甘辛いタレが滴る。
並んでいた客が次々と串を受け取っていく中――。
「やっば! これ映えすぎ!」
金髪のギャル、カレンは焼き串を両手に持ち、顔の横にかざしてポーズを決めた。
スマホは相変わらず圏外だが、本人は気にしていない。
串を角度を変えては「カシャッ」と鳴るように押し込み、写真を撮ってご満悦。
「食べ物で遊んではいけません!」
すかさず侍女のミーナが注意する。
けれど、いつもの勢いはなかった。
カレンが「いや、これは芸術なんだって!」と主張すると、ミーナは「……はしゃぎすぎでは」と小声で返すにとどまった。
その様子を見ていたライは、ふと首をかしげた。
「ミーナ、今日は大人しいな?」
ミーナは苦笑して、視線をそらす。
「ちょっと……押され気味でして」
「え、あーしってそんな圧ある!?」
カレンが目を丸くする。周囲にいた庶民もクスクス笑い、場の空気は一気にゆるんだ。
モフドラは焼き串をじーっと見つめて「きゅるる」と鳴き、近くの子どもたちに「かわいい!」と撫でられていた。
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そのとき、ライの視線がふと市場の外れへ向いた。
屋台の並びの中で、ひときわ妙な路地がある。荷馬車が斜めに置かれ、人々が不自然に避けて通っていた。
「……あそこ。通り抜けるための“抜け道”にしているな」
低くつぶやくライに、バルドがひげをなでてうなずく。
「若様のご推察、見事でございますな。――妹様の魔方陣より、よほど胃に悪うございます」
「……証拠を積もう。下手に動けば、庶民が巻き込まれる」
ライは静かに決断した。
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細身の少年が小さな荷車を押しながら走ってきた。
焦ったように辺りをキョロキョロしていたせいで、石畳に車輪を取られ――ドサッと転倒。
麻袋が地面に転がり、中から白い穀物粉がぶわっと宙に舞った。
屋台の客たちが「雪!?」と勘違いするほどの惨事である。
「わっ、ご、ごめんなさい!」
少年は慌てて袋を押さえるが、粉で前が見えず大混乱。
そこへカレンが手を伸ばし、ひょいと引き起こした。
「大丈夫? ……って、あーしの服まで真っ白じゃん! これもう冬景色だし!」
少年は青ざめたまま、口ごもる。
そして、すぐそばでライがじっと見ているのに気づき、さらにうろたえた。
まるで“怖い顔の貴族”ににらまれたと勘違いしたようだった。
「ひっ……! い、今夜、ここで集まるって言われただけなんです!」
思わず口から飛び出した言葉に、ライの目が細くなる。
少年は盗賊に手を貸すよう脅されていた“はこび屋見習い”だったのだ。
「心配するな。君の罪は軽い。……あとは僕たちに任せろ」
ライの落ち着いた声に、少年はほっとしてうなずく。
そして粉をまとったまま駆け出していった。
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「盗賊は高級布を狙っている。囮を立てて誘う」
ライが仲間に向き直ると、一瞬の沈黙が流れた。
そして視線が一斉にカレンへ。
「え、あーし!?」
「君が一番目立つ」
ライが即答。
「……まぁ映えるしいっか!」
カレンはノリノリで、囮の荷車をデコり始めた。
リボン、ラインストーン、ハートの旗。余り布はカラフルな飾りに変わる。
「ギャル荷車、完成☆」
両手でハートを作ってポーズを決めると、周囲の人々は「祭りか!?」とざわざわ。
「悪目立ちの権化……しかし良い餌でございますな」
バルドが苦い顔でつぶやく。
ライは真剣な声で応じた。
「目立つほど盗賊は食いつく。理想的だ」
その瞬間、懐中時計の針がチリッと揺れ、ライのお腹がムズッと痛む。
モフドラが「ぷしゅー」と湯気を出して温め、ライは小さく深呼吸した。
「……囮は派手に行こう」
こうして作戦は決まり、路地裏での盗賊との接触へと向かうのだった。
昼下がりの市場は、さっきの粉騒ぎがうそのように、また活気を取り戻しつつあった。
だが、路地の奥だけは空気が張りつめている。派手にデコられた荷車――カレンの“ギャル荷車”が、わざとらしく目立っていた。
「準備はいいか。囮はその場で待機だ」
ライが短く指示を出す。
「任せて! このキラキラ、盗賊絶対くるから!」
カレンは親指を立て、ハートの旗をしゃらんと揺らした。
モフドラは荷車のへりで丸くなり、「きゅるる」とのんきに鳴く。
「若様、逃走路はこちら、追い込みはあちら。庶民の避難はミーナが担当しております」
バルドが地図を示すように指をさし、静かに報告する。
「ミーナ、頼んだ」
「はい! 露店のみなさん、こっちです! 火は消して! 串は……あ、もーらいっ――いえ、後で!」
ミーナは慌てながらも手際よく人をさばいていく。
庶民の間に、少しずつ安心の空気が広がった。
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その時、路地の暗がりから足音が近づいた。
「おい、ありゃ高級布だろ!」
「派手すぎて目が痛ぇ……でも高く売れるぞ!」
粗末な革鎧の男たちが数人、刃物を持って飛び出す。
ギラついた目が荷車に釘づけだ。
「はい来た。食いつき最高~」
カレンが小声で笑い、スマホ(圏外)をかまえてポーズを決める。
盗賊たちは一瞬ひるみ、顔をしかめた。
「なんだこの女……」
「顔の横でピースしてる……こわ……」
「怖いのはそこじゃない。武器を捨てろ」
ライが一歩前に出た。黒マントが風に鳴り、長身の影が路地に落ちる。
刃を構えた盗賊たちの足が、条件反射で半歩下がった。
「に、にげ……いや……!」
その後ろ。路地の影がぐらりと揺れた。
ドスン。
樽みたいな胸板の大男が現れる。肩幅はドア並み、腕は丸太。
片手の棍棒を地面にコツンと落としただけで、砂ぼこりがふわりと舞った。
「ビビるな。相手はガキだ。やるぞ」
「親分!」
盗賊たちが一斉に声を上げる。
「ラスボス感、つよっ!」
カレンがぽそっと言って、思わず自分で笑った。
モフドラが「きゅるっ」と合いの手を入れる。
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「荷を置け。命は取らない」
ライが落ち着いた声で告げる。
だが親分はニヤリと口の端を歪め、棍棒を肩に担いだ。
「強ぇヤツが勝つんだよ! どきな、怖ぇ顔の坊ちゃん!」
」
「……顔は仕様だ」
ライは構えを落とし、右手で剣の柄に軽く触れた。
左手は、地面近くに淡く光る魔法式――見えない障壁の準備。
懐中時計の針が、チリ、と一目盛り揺れる。
カレンの視線が横顔に刺さるたび、腹が“ムズ”と訴える。
(今は、痛みに負ける時じゃない)
ライは息を整えた。
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「いっけーッ☆」
カレンが合図のように荷車を蹴った。
荷車がくるりと半回転。リボンと旗がバサバサ舞い、盗賊の視界をふさぐ。
「ギャル流・目くらまし――“デコスモーク”!」
「技名は不要だ」
ライが小さくツッコむ。
その一瞬の隙――親分の棍棒が唸り、ライの頭上へ振り下ろされた。
ガキン!
ライの剣が、正確に棍棒の芯をはじく。重い音が路地に響いた。
火花が散り、親分の手首がぶれた。
「なっ……!」
驚く親分の脛に、ライが一歩踏み込み、柄でコツンと打ち込む。
足がもつれ、棍棒がごろんと転がった。
「武器を落とした。次は投降だ」
静かな声。だが逆らえない圧がある。
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「い、いや、まだだ!」
盗賊の一人がカレンの荷車に手を伸ばす。
次の瞬間――
「触んなコラ☆」
カレンが旗の棒をクルッと回し、盗賊の手から布を“バシッ”とはたき落とした。
棒の先には、さっき即席でつけたラインストーン。地味に痛い。
「いったぁ!?」
「なんだその派手な武器!」
「デコは正義。心にも見た目にも効く!」
盗賊たちがじりじり後退する。
路地の外では、ミーナの誘導で人の流れが完全に整理されていた。
「避難完了です! あとは、若様の見せ場!」
「見せ場という単語に、胃が反応いたしますな」
バルドがぼそり。
ライは短くうなずくと、親分の前に真っ直ぐ立った。
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「再度、言う。武器を捨てて、投降しろ。命は守る」
その声音に、親分の肩がわずかに落ちた。
周りの盗賊も互いに顔を見合わせ、とうとう刃を地面に置いた。
「……チッ。グランツの坊ちゃん、やるじゃねえか。覚えてろ」
「覚えておく。再犯なら、領の法で裁く」
ライが手を上げると、守備兵が駆け込んできて、盗賊たちを縄で縛っていく。
親分は最後まで睨みつけていたが、ライの目はまったく揺れなかった。
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静けさが戻る。
庶民の間から、ぽつりぽつりと拍手が起きた。
「グランツ様、助かりました!」
「顔は怖いけど、やっぱり頼りになる!」
カレンは、その言葉に合わせるように、ライの横顔を見た。
真面目で、ぶれない。人を守るために動く背中。
(顔こわいのに……やば。マジでヒーローじゃん)
胸の奥で“ドキン”と鳴る。
懐中時計の針が、ググッと一目盛り――ライの腹が“キリキリ”っと訴えた。
「……っ」
わずかに眉が動く。
すかさずモフドラがぴょこんと飛び、ライの腹にぺたり。
「ぷしゅ~~」
あたたかい湯気が広がり、痛みが少しやわらぐ。
庶民が「火竜だ!」と騒ぐが、バルドが即座に訂正した。
「皆さま、湯気でございます。炎ではございません」
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「ライ、ありがと。あーし、ちょっと……キュンとしたかも」
カレンが笑うと、ライは一瞬だけ視線を逸らし、すぐに戻した。
「怪我がなくて何よりだ。君の“デコ”も……役に立った」
「でしょ! デコは力! 世界救う!」
「……表現は大げさだが、否定はしない」
ミーナが小声で「恋の針、上がってます?」とバルドにささやく。
バルドはひげをなで、「ええ、見事に」と目を細めた。
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被害の確認と、商人への補填の段取りを手早く決め終える。
ライは帳面に数字を書き込み、必要な手配を守備兵に伝えた。
「補修には領の木材を。露店税の一部免除を三日。混雑緩和の柵は常設で」
「了解!」
周囲から「助かる!」と声が飛ぶ。
「兄様、ラストはビシッと決めてくださいまし」
いつの間にか横に来ていたルチアが、いたずらっぽく笑う。
「……ルチア。もう二度と人を勝手に召喚するな」
「反省はしてますわ。次は申請してから呼びます」
「申請すればいい問題ではない」
ライの真顔に、ルチアは舌を出して引っ込んだ。
周りの庶民がくすくす笑い、空気がまたやわらぐ。
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「本日の総括を申し上げます」
バルドが一歩前へ出て、軽く咳払いをした。
「盗賊退治――合格。市民の信頼――上々。ギャル殿の好感度――上昇。
そして若様の腹――継続して危険」
「最後の一行は必要か」
「必要でございます。次回までにミント葉を三倍ご用意しましょう」
ミーナが「在庫、倍プッシュします!」と元気よく答える。
カレンはピースサインで「次はデコで防具作ろ~」と笑った。
ライは小さく息を吐き、懐中時計をそっと閉じる。
(誠実は、最短の近道じゃない。でも――唯一の道だ)
午後の日差しが、ギャル荷車のラインストーンに反射して、路地にきらきらと星を散らした。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
今回の見どころはやっぱり 「ギャル荷車」。想像以上に頼もしく(?)役立ってしまいましたね。読者のみなさんは「デコは正義」派? それとも「実用こそ正義」派でしょうか。感想で教えてもらえたら、次のネタに反映するかも……?
そして、ライの「完璧さと恋腹」のギャップもますます加速中。ブックマークや感想をいただけると、ライの胃痛が少し軽くなるかもしれません
次回はいよいよ、さらなる波乱の予感!どうぞお楽しみに。
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