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完璧侯爵様、恋するとお腹が痛いんです —恋すると腹がキリキリする侯爵様の100連敗—  作者: ヨーヨー
第1章 貴族令嬢 クラリス

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第2話 若様、悲劇!紅茶より熱い恋腹

舞踏会でなんとか「第一歩」を踏み出したライ。

次なる舞台は――お嬢様クラリスからの直々のお茶会招待!

紅茶でスマートに振る舞うかと思いきや、もちろんそんなに甘くはない!?

ライのお腹とプライドが危険信号を鳴らす、波乱のお茶会が開幕します!


★【ブックマーク】★はライの恋心より軽い!ぜひポチッとしてね!

王都の昼下がり。


太陽はちょうど頭上にあり、空は雲ひとつない青さを見せていた。

そんなとき、グランツ家の屋敷に、一通の手紙が届いた。封筒は白地に小花の模様があしらわれており、なんとも可愛らしい。


「若様。クラリス様からでございます」

バルドが封筒を差し出す。


ライは指先で封を開け、真剣な顔で中を読む。

そこにはこう書かれていた。


――「先日の舞踏会で助けてくださったお礼に、ささやかですがお茶会にお招きしたいと思います」


その一文を読んだ瞬間、ライの心臓がドクンと跳ねた。

ポケットから銀の懐中時計を取り出すと、針が「ピクリ」と跳ね上がっていた。


これは普通の時計ではない。

“恋心針”とも呼ばれる魔具で、持ち主の鼓動の速さを針で示す仕組みになっている。

つまり、針が動いたということは……「恋腹」の前兆。

ライは腹を押さえ、少し青ざめた。


「イタタ……やはり来たか」

ライがうめくと、すかさずモフドラが肩の上から「ぷしゅ〜」と湯気を吹き、ライのお腹をあたためようとする。


「火竜だーっ!!」

通りがかりの使用人が叫び、慌ててバケツの水を運んでくる。

「違う、湯気だ! モフドラは火を吹かない!」ライが必死に否定するが、まったく信用されない。



---


そんな慌ただしさの中、ミーナが勢いよく飛び込んできた。

手には真っ赤な布が。

そこには大きく「運命です!」と書かれている。


「お茶会にこれを掲げれば、

クラリス様も『あっ、運命なんだ!』って気づいてくれるはずです!」


「没収」ライが手を伸ばすより早く、バルドがすかさず横からひったくった。

「若様のお顔に“運命”など、混ぜたら劇薬です。むしろ遠ざけますぞ」

「ひどい!」ミーナが叫ぶが、バルドは涼しい顔で丸めてゴミ箱にポイ。


「だいたい、恋というものはですな……」

バルドが語り始めると、ミーナがすぐに割り込む。

「わかってますよ! でもライ様は誠実すぎて動きが地味なんです! インパクトが必要なんです!」

「地味……」ライは肩を落とした。



---


しかし、落ち込んでばかりもいられない。

お茶会は戦いだ。恋腹との戦いでもある。


ライは机の上に旅用薬箱を広げ、ミントの葉、ハーブティーの茶葉、包帯をきっちり並べる。

さらに祖母が手縫いしてくれた腹当てを腰に巻きつける。刺繍は少しほつれているが、ライにとってはお守りのような存在だ。


「若様、完全武装ですな。お茶会というより、戦場に赴く兵士でございます」

「恋も戦だ」ライは真顔で答えた。


その横でミーナはこっそり何かを仕込んでいる。

ハート型の大きな飾りを取り出し、ライの胸に当てようとしたのだ。

「これを胸につければ、恋愛運アップ間違いなしです!」

「やめろ」

ライがバシッと払いのける。

バルドは冷静に言い放つ。

「若様のお顔とハートの組み合わせは、情報量が多すぎます。処理落ちしますな」


「処理落ちって何だ!」

ライがツッコむと、ミーナはケラケラ笑った。



---


出発前。

ライは姿見の前に立ち、表情を整えようとする。

「これが……普通の笑顔だ」

鏡には、眉がつり上がった恐怖の顔が映っていた。


「きゃっははは! こわっ!」

ミーナが腹を抱えて転がる。


「若様、それでは紅茶の前に相手が逃げますな」

バルドも冷静に追撃。


ライは深く息を吸い込んだ。

「今日こそ、誠実に、短く、ちゃんと伝える……」

その決意を胸に、ライたちは馬車に乗り込み、クラリスのお茶会へと向かっていった。



クラリスの屋敷の庭に通されると、白いテーブルクロスの上に上品なティーセットが並んでいた。

バラの花が咲き誇る庭園で、鳥のさえずりまで聞こえる。いかにも「優雅なお茶会」という雰囲気だ。


「ライ様、どうぞ」

クラリスが微笑んで席をすすめる。

その仕草に、ライの懐中時計の針がカチリと揺れた。


――“ムズッ”。


さっそく恋腹の第一段階だ。

ライは腹を押さえ、モフドラが「ぷしゅ〜」と小さく湯気を吐く。

クラリスは「あら、今の音は?」と不思議そうに首をかしげる。

「……お茶が熱いのでしょう」バルドが即座にごまかす。



---


紅茶が注がれ、会話が始まると、ライの知識がさく裂した。

「この茶葉は南方の山岳地帯で栽培されたものです。朝の気候が冷たいと、香りがより深くなるんです」


「まあ、詳しいのですね!」

クラリスの瞳がきらりと輝く。


さらにライは礼法の小ネタをさりげなく披露する。

「砂糖を入れるときは、時計回りに三回混ぜると香りが立ちます」


クラリスは感心して「なるほど」と笑顔を見せた。


ここまでは完璧。

バルドもうなずき、ミーナは

「やっぱり今日こそ運命!」と小声でガッツポーズしている。



---


しかし、その瞬間だった。

クラリスがカップを口に運んだとき、ライの心臓が再び高鳴る。


――針が「ぐんっ」と上昇。


“キリキリ”。第二段階。

ライの手が細かく震え始め、持っていたティーカップが「カタカタ」と音を立てる。


「だ、大丈夫ですか?」

クラリスが首をかしげる。

「だ……大丈夫。ちょっと冷えてきた、だけだ……」

ライは必死に取りつくろうが、震えが止まらない。


次の瞬間、カップが傾き――こぼれた紅茶がテーブルをつたい、クラリスのドレスにぽたり。


「あっ……!」


一瞬空気が凍る。



---


だがライは即座に反応した。

懐から小さな魔法式を刻んだ布を取り出し、軽くなぞる。

「……クリーン・ドライ!」


光が走り、ドレスのシミが跡形もなく消えた。

クラリスは驚いた顔をしたあと、ふっと微笑んだ。

「ご心配なく。すぐにきれいにしてくださって、ありがとうございます」


彼女のやさしい声に、ライの胸はまたドクンと跳ねる。

しかし同時に――「キリキリキリキリ」。

腹の痛みは限界に近づき、冷や汗がじわりとにじむ。



---


その場はなんとか収まったが、庭の端で見ていた使用人たちがヒソヒソ声を上げる。

「やはりグランツ家の跡取りは……」

「完璧なのに、なぜかどこか惜しいわね」


その声が耳に入った瞬間、ライは深呼吸をして立ち上がった。

「今日はこれにて……失礼します」

顔は真っ赤だが、姿勢はいつも通り完璧に正しい。


バルドが後ろから近寄り、小声でつぶやく。

「若様、完璧なフォローほど、恋からは遠のくものにございます」


ライは苦笑し、腹を押さえながら庭を後にした。

お茶会という平和な場でも、ライにとっては戦場そのもの。

紅茶の香りよりも、クラリスの笑顔の方が強烈で、ついに「恋腹」大暴走。

完璧なシミ抜き魔法を披露できたのに、距離はなぜか縮まらず……。

誠実に振る舞うほど、恋が遠のくライの苦難はまだまだ続きます。

次回もどうぞお楽しみに!


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