第16話 発明少女、段階点灯の奇跡!?
夜の王都が突然の停電に包まれた――パン屋も鍛冶屋も兵士も大混乱!
そこに現れたのは、発明少女アメリアと“顔が怖いけど頼れる”侯爵子息ライ。
足こぎ発電、魔法メーター、そしてお約束のモフドラ点火係。
人々を巻き込んだドタバタの復旧作戦が始まります。
果たして王都の灯りは戻るのか?そしてライの恋腹は耐えきれるのか?
夜の王都が、突然「バフッ!」という音とともに真っ暗になった。
街灯も家の明かりも一斉に消え、月明かりだけが頼り。あちこちから「ぎゃー!」「足踏んだ!」と叫び声が飛び交う。
だが、その中でひときわ目立つ光があった。
広場の片隅に、ピンク色のハート型照明がギラギラ。しかも回転しながらビカビカと光っている。
「どうですかライ様! 真夜中でも愛の告白チャンスは逃さない仕様です!」
ミーナが胸を張る。
「……止めよう。そいつのせいで周りの電力が足りない」
ライは無言で主電源のコードを引き抜き、闇が完全に戻った。だが、電気が復旧しない。
広場は騒然。
パン屋のおじさんは
「明日の朝パンが焼けない!」
と泣き、鍛冶屋は
「炉の送風機が止まったら鉄がダメになる!」
と頭を抱え、兵士たちは
「真っ暗じゃ夜盗が入り放題だ!」と右往左往する。
そこへ、ゴーグルをかけた少女が登場した。
アメリア・スレート。王立工房学院の発明っ子だ。
彼女は計器をのぞき込み、すぐに状況を言い当てた。
「発電はできてる。
でも街に送る“道”が詰まったか、逆に食いすぎ!」
いつもの口癖「理屈より実験!」を抑え、冷静に現状を見極めている。
ライは落ち着いて広場の石畳にチョークで大きな地図を描いた。
「電気は水と同じだ。
太い道に少しずつ流す。あふれさせない」
子どもや大人が覗き込む。
ライは分かりやすい言葉で説明する。
「“段階点灯”は一気につけず順番に。一気に点けるとダメになる」
「わかりやすい!」と町人がうなずく。
ちょうどそこにロイスが帰ってきた。
月光に照らされる金髪はやけにキラキラしている。
「僕の前髪は非常灯だ。連絡係は任せたまえ」
人々の緊張が少しゆるむ。
ライは優先順位を発表する。
「まず診療所と井戸ポンプ。
次に交差点の灯り。最後にパン屋と鍛冶屋の送風だ」
「明るさは足でも作れる!」とライが言うと、アメリアが「それいい!」と目を輝かせた。
学院の体育器具を改造した足こぎ発電スタンドが持ち込まれ、子どもが試しにこぐとポッとランプが点いた。
「ゲームみたいだ!」と子どもたちがはしゃぐ。
町人が少し笑い、空気が和む。
その間、ライの銀の懐中時計の針は少しだけ上を指していた。
アメリアがライの肩に顔を寄せ、メモをとるたびに、油と金属の匂いがふわりと鼻をくすぐる。
ムズッと腹が締まる感覚。だがモフドラがライの腹に乗って「プシュー」と湯気を出し、じんわりと温める。
「助かる……モフドラ」
小声でつぶやくライ。
最後に、ライは地面に小さな光の護符を刻んだ。もし過負荷になれば自動で遮断される“魔法ヒューズ”だ。
「電気も恋も、逃がし方が肝心でございます」
バルドがうまいことを言い、みんなの緊張がまた少しやわらぐ。
ロイスは猫を抱き上げて月光の下でモデル立ち。
「どうだ、キラキラだろう。今夜の主役は僕だよ」
クスクスと笑い声が広場に広がる。
ライはアメリアと目を合わせてうなずいた。
「段階点灯、開始だ」
バルドが締める。
「若、ブレーカーも心も、一気に上げず段階が肝要。——では、一本目、参りますか」
王都の真夜中。いよいよ復旧作戦が始まる。
広場の片隅に置かれた大きな木箱。
その中には、王立工房学院で使う「ミニボイラー」と「簡易タービン」、そしていくつかの余り配管がぎゅうぎゅうに詰め込まれていた。
これが今日の主役——“臨時発電所”だ。
アメリアが工具袋を肩からぶら下げながら、地面にチョークで線を引いていく。
「ここから熱を送って、こっちで回転! そしてここでバイパス! 理屈より実験!」
勢いよく書かれる線はほとんど落書きに見えるが、本人は大真面目だ。
ライはその横で箱から黒い装置を取り出す。
スイッチが十個も並ぶ「負荷分け箱」だ。
「電気を分ける道具だ。これで灯りの道を管理できる」
子どもたちが目を丸くし、
「タコ足コンセントのデカいやつだ!」と大喜び。
さらにライはビー玉みたいな小さな光球を道ごとに置いていく。
これは“魔法メーター”。電気を多く食べると明るく光り、少なければ薄暗くなる。
「おー、夜店のくじ引きみたいだ!」と、子どもたちのテンションが一気に上がる。
役割分担も決まった。
ロイスは人の誘導係。立って手を上げるだけで、みんなが止まってしまうそのイケメン顔面インパクトは信号機より強い。
ミーナは列整理。けれど例の「告白照明」をまだ持ち出そうとするので、ライが没収してため息。
子ども隊は足こぎ発電班。ペダルをこぐと電気が作れる仕組みだ。
鍛冶屋たちは水と砂を用意し、ボイラーが熱暴走したときの保険にする。
そして、点火担当はモフドラ。
手のひらサイズの小竜が「くしゅん」とかわいいくしゃみをすると、ちょうどいい火花がボイラーに点く。
「我が家の子はライターより安定しております」とバルドが胸を張る。
準備が進む中、アメリアが配管を強く締めすぎて、蒸気が逆流。
空に“湯気の鯉”がふわふわ泳ぎ出した。
「今のは…想定内! たぶん!」とアメリアが言うが、ライがバルブを静かに五度戻すと、鯉はスッと消える。
いよいよ点灯開始。
まずは診療所と井戸ポンプに電気を流す。
ポンプがギギギと鳴るが、子ども隊がリズムよくペダルをこぎ、なんとか持ちこたえる。
彼らは勝手にチーム名を決めていた。「雷足」「回転焼き」「筋肉の呼吸 壱ノ型」…どれも意味はよく分からないが、盛り上がりは本物だ。
次に信号ランプを点ける。
ロイスが手を上げるだけで馬車がぴたりと止まり、商人たちが口をそろえる。
「あの人、信号よりすごい!」
パン屋と鍛冶屋にも電気を回す。
パン炉の温度計が上がり、鍛冶場の送風がブォォッと復活。
「鉄が呼吸した!」と鍛冶屋が涙ぐむ。
だが次の瞬間、負荷分け箱の針がレッドゾーンへ。
犯人は——ミーナの告白照明!
タイマーで自動点灯していたのだ。闇に浮かぶハート型の光。
「夜はロマンが命ですから!」
「命が先だ!」とライが遮断符を箱に貼り、ハートはぷしゅんと消えた。町人たちが同時に肩を落とす。
さらにボイラーの圧力が急上昇し、配管がガタガタ震える。
「合図笛に合わせて! 一・二・三・休!」
ライの指示に、子ども隊がリズムよくペダルをこぎ、広場は体育祭のような熱気に。
アメリアはバルブを半回転締め、モフドラが炎をちょっと強めにくしゃみ。針がちょうど緑ゾーンで止まった。
小さな魔導灯が一つ、また一つと灯っていく。
「うおお、戻った!」と歓声が広がる。
誰かが「二人、最高のチームだ!」と叫んだ。
ライの懐中時計の針がぐいっと上がる。腹にムズッ。
すかさずモフドラがライの腹に飛び乗ってホカホカ加熱。「助かる…相棒」
やがて広場の灯りは完全に安定し、遠くの塔の明かりまで戻った。
人々が二人にお礼を言い、パン屋はパンの耳を、鍛冶屋は鉄鍋スープを差し入れてくれる。
ライは静かに前へ出る。
「君となら、どんな夜も明るい」
ムズッ。恋腹がさらに反応するが、顔は凛々しくキープ。
アメリアはにっこり笑い、工具袋を抱えて小走りに去る。
「ありがと! でも夜明け前は測定なの!」
ロイスはミーナの設計図を取り上げ、鶴の折り紙にして子どもへプレゼント。
「ライ、告白は計画的に」
アメリアは振り返りざま、ライの腹当てをチラ見。
「やっぱり気になるな…」と小声でメモを取った。
最後にバルドがマントを揺らしながら一言。
「若、ブレーカー同様、落とす勇気も必要。恋も電気も、切るところを切って守るものを守る。…本日は満点の段階点灯でございました」
王都の夜は再び光を取り戻し、ライは空を見上げる。
「灯りは戻った。心のほうは…もう少し先か」
それでも足取りは軽い。次に速くできるデータは、もう十分に集まったのだから。
王都の停電騒ぎを、ライたちが力を合わせて切り抜ける一話でした。
シリアスな状況のはずなのに、ロイスの非常灯発言やミーナの暴走照明、子どもたちの体育祭ノリで、結局は笑いの絶えない大混乱に。
ライにとってはただの復旧作業でも、アメリアと肩を並べて奮闘する時間は特別な意味を持ちます。
「段階点灯」は電気の話でありつつ、恋心もまた少しずつ進めるのが大事だという暗示でもありました。
次もまた、胃がきりきりする展開をお届けできればと思います。
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