第15話 発明少女、間合いの試練!?
王都騎士団の訓練場に持ち込まれたのは――アメリア特製のバネ仕掛け木人形!
最初のテスト相手はロイス。華麗に挑んだものの、まさかの“前髪ロスト事件”で観客は爆笑の渦へ。
続いてライが立ち上がり、真剣な剣技と冷静な頭脳で暴走を制御するが……恋腹は今日も“ムズッ”。
笑いと緊張と恋心が入り交じる、にぎやかな実験ショーの幕開けです。
王都の騎士団訓練場は、いつもは馬のいななきや剣の音でにぎやかな場所だ。
だが今日はちょっと様子が違った。広場の真ん中には、鉄の人形みたいな大きな木人形が立っている。
腰にはバネがついていて、目の部分には赤いランプ。まるで「動きますよー」と言わんばかりに光っていた。
「これが最新式、バネ仕掛け木人形だよ!」
そう胸を張って紹介したのは、発明大好き少女・アメリア。
工具箱をガシャンと置き、にやりと笑う。彼女は王立工房学院に通う発明家の卵だ。
その横で、黒いマントをひるがえして立っているのはライ。
長身で姿勢も完璧、剣を軽く振るだけで風が切れる。子どもたちは「すげぇ!」と歓声を上げたが、同時に「でも顔こえー!」とひそひそ声も聞こえてくる。
ライは気にせず剣を収め、木人形を見つめる。
---
「この人形のテスト相手は俺がやろう」
声を張り上げて前に出てきたのはロイスだった。
金髪を光らせ、剣をクルッと回してポーズを決める。観客の女の子たちから「きゃー!ロイス様!」と黄色い声が飛んだ。
アメリアがレバーを引くと、木人形がガシャンと動き出す。
最初は腕を振るだけだったが、次の瞬間、なんと二段ジャンプ!
「なっ!?」
ロイスの目が見開かれる。
木人形は飛び上がった勢いで両腕をブンブン振り回し、まるで巨大なハエ叩き。
ロイスは必死に剣で防御するが、髪の毛が「シュッ」と切り飛ばされ、前髪がなくなった。
観客席がドッと爆笑に包まれる。
「ロイス様の髪がー!」
「それ新しい流行ヘアーですか!?」
ロイスは顔を真っ赤にして、
「こ、これは計算通りだ!」
と強がるが、剣先は小刻みに震えていた。
---
「……バネの戻りが強すぎるんだな」
ライは木人形の動きをじっと見つめ、すぐに問題を見抜いた。
剣の先で地面に図を描きながら説明する。
「反応が一拍遅れて二段動作になる。だから無駄に飛ぶんだ」
「なるほど! 理屈は任せた、実験は私に!」
アメリアは目を輝かせ、工具を取り出して走り出す。
「理屈と実験コンビだ!」
と子どもが叫ぶと、周りの観客が笑いながらうなずいた。
ライは剣を構え、魔法で木人形の動きを抑える準備をする。
「僕が動きを止める。アメリア、心臓部を直してくれ」
「了解! ネジ一本から私の武器だからね!」
緊張とドタバタが入り混じる中、次の戦いが始まろうとしていた。
観客席の隅でバルドがひげをなでながらつぶやく。
「若、木人形相手に顔芸で負けるのは避けたいところでございますな」
訓練場の真ん中。さっきロイスの前髪を吹っ飛ばした木人形が、まだギコギコと動いていた。
観客席は
「もっとやれー!」
「前髪返せー!」
と大盛り上がり。
ライは一歩前に出た。背の高い影がすっと伸びる。
「僕が相手をしよう」
声は落ち着いていたが、その顔がまた怖い。
場が一瞬しんとしたと思ったら、子どもの声が飛ぶ。
「お兄ちゃん、顔こえー!」
「うわっ出た!
グランツ家の若様の“威圧スマイル”だ!」
観客席、爆笑。
ロイスは前髪なしで胸を張る。
「ま、まだ俺もやれる!」
……が、前髪なしのおでこでは、説得力がゼロだった。
その瞬間、木人形が二段ジャンプ。
観客席に飛びかかろうとする!
「そこだ」
ライが剣を抜き、横に払った。
空気を切る鋭い音。目に見えない衝撃が木人形を弾き飛ばし、地面にドンと叩きつけた。
観客は「うおおお!」と拍手。
「すげえ!」
「でも顔こえー!」
評価は二分されたままだった。
---
木人形の胸部パネルをアメリアがガバッと開ける。
中はネジや歯車がぐちゃぐちゃに転がり、まるでお菓子箱をひっくり返したみたい。
「ライ!このネジ押さえて!」
小さなスパナを持ったアメリアが叫ぶ。
「了解した」
ライの大きな手が伸びる――が、指が太すぎて、ネジは「ピューン!」と飛んでいった。
「うわっ!」
ロイスの額にコツンと直撃。観客大爆笑。
「ロイス、今のでまた髪減ったんじゃないか?」
「やめろ!」
そこへミーナが差し入れを持って走ってきた。
「ライ様!告白成功まんじゅう、できたてです!」
――ポトッ。
まんじゅうが工具箱に落ち、モチモチがネジ穴に詰まった。
「ちょっと!なにしてんの!」
アメリアが目をむく。
ライはまんじゅうを見つめ、ふっとつぶやいた。
「……甘い香りで、逆に癒される」
恋腹“ムズッ”!
懐中時計の針がグググッと上がる。
「若様、胃に効くのは消化薬でございます」
バルドの冷静な声が背後から飛ぶ。
---
ライは集中して魔法を使い、木人形の反応速度をゆっくりにした。
アメリアはすかさず歯車をカチリと合わせる。
「これで……どうだ!」
木人形はガシャリと立ち上がり、滑らかに一礼。
会場が拍手に包まれる。
「やった!大成功!」
アメリアが飛び跳ね、ライの方を見た。
ライは真剣な顔で言った。
「君の発明に……惚れ……」
観客「おおっ……」
一瞬の静寂。
次の瞬間、アメリアはにっこり笑った。
「私の発明に惚れたのね!実験成功!」
「発明かよー!」
観客の笑いが一斉に爆発する。
ライは腹を押さえながらも姿勢を崩さず立っていた。
その横でバルドがしみじみとつぶやく。
「若様、剣も恋も、間合いは命でございますな」
読んでくださりありがとうございます!
今回は「間合い」がテーマでした。木人形との距離、観客との距離、そしてアメリアとの距離――。
ライは勇敢に踏み込みながらも、肝心なところでは一歩遅れてしまう。観客の拍手と笑い声が交錯する中で、彼の恋腹はますますキリキリに。
バルドの「剣も恋も、間合いは命」という言葉が、まさにこの回を象徴しています。
さあ、ライの恋の行方はどうなるのでしょうか!?
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
楽しめていただけましたか?
面白ければ下の評価☆5個お願いします!!
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆




