第14話 発明少女、爆発しても安心!?
王立工房学院から突きつけられたのは「事故多発につき研究費カット」という残酷な通達。
アメリアは大慌て、ライは冷静、そしてバルドは皮肉。
挽回のチャンスはただ一つ——「安全なのに派手」な公開実験!
果たして爆発を“安心”に変えることはできるのか?そしてライの恋腹は今日も……。
王立工房学院の作業場は、今日もドタバタしていた。
歯車、工具、そしてアメリアのメモ書きが机いっぱいに広がっている。本人だけは「ここが混沌の秩序!」と言って平気だが、周りから見ればただの散らかし放題だ。
そこへ、事務係の男が「通達書」を手に現れた。きっちりネクタイを締めた堅物で、いかにも「書類で人を困らせるのが趣味です」と顔に書いてある。
「アメリア嬢。これが学院からの正式な通知だ。――事故が多すぎるため、研究費をカットする」
カサッと紙が机に置かれる。
「ええぇぇぇ!? 事故なんて実験のスパイスでしょ!」
アメリアは目をむき、机に突っ伏した。
工具がガチャガチャ落ちて、床にナットが転がっていく。
周囲の学生たちがひそひそ声を交わす。
「やっぱり…」
「前回の爆発のせいじゃ…」
「あれで教授のカツラ飛んだからな…」
ライは通達書を手に取り、眉を寄せた。
「“研究の価値が低い”と判断されたわけではない。ただ、いろいろあって信頼を失っている」
冷静な声が作業場に響く。
横でバルドが腕を組んで一言。
「要するに“財布の口が閉じた”のでございます」
「わかりやすいけど、嫌な言い方!」
アメリアがすぐに突っ込む。
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アメリアは工具をカンカン叩きながらぶつぶつ文句を言う。
「せっかくの改良計画がパーだよ! あたしの夢がネジ一本で止まるなんて!」
机の端に置いてあったお菓子――ナット型のビスケット――がポロッと床に落ちた。アメリアはそれを拾ってポリポリかじりながら、完全に「やけ食いモード」に突入。
「……信頼とは、積み上げるものだ」
ライが静かに言うと、アメリアが首をひねった。
「信頼ってネジみたいなもの?」
「違う、ネジは締めるものだ」
「じゃあ信頼は?」
「……積み上げるものだ」
かみ合っているようで、かみ合っていない。作業場に微妙な笑いが広がる。
机の上でモフドラが「ぷしゅ〜」と湯気を出した。
アメリアはびっくりして工具を落とす。
「ちょっと! 火事!?」
「違う、いつものだ」ライが即答した。
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ライは改めて通達書をじっと見つめる。
「“事故が多い=不安”を払拭できれば、研究費は戻るはずだ。いや、むしろ増えるかもしれない」
アメリアが目を丸くする。
「増える!? でも安全実験なんてつまらないよ。誰も見ないって」
ライは口元をわずかに歪めて、にやりと笑った。
「安全をアピールするには、“失敗しても安心”を見せればいい」
「なるほど……! わざと派手に見せて、でも被害ゼロ! そうすれば“安心”を売りにできるってことね!」
アメリアは机の上に飛び乗らんばかりにガッツポーズ。
バルドが鼻で笑った。
「若、つまり“爆発芸人”になるわけですな」
「芸人じゃない」
ライは真剣に返す。
アメリアはすでにノートを広げて、次の実験のアイデアを書き殴っていた。
「よーし! 次はド派手にいくわよ!」
ガシャーン!
勢い余ってハンマーで棚を倒す。工具や部品が床に散乱した。
ライはこめかみを押さえながらため息をつく。
「……その前に、まず片付けから始めようか」
作業場に、笑いとため息が入り混じる空気が広がった。
王都の広場に特設ステージが組まれていた。
観客席には商人やスポンサー、それから冷やかしの市民たちまで集まっている。
目的はひとつ——アメリア・スレートが作った発明品の「安全実験」だった。
「みんなー! 今日は“安心・安全”を証明するからね!」
ゴーグルをかけた少女アメリアがスパナを掲げ、元気いっぱいに宣言した。だが、そのスパナはなぜかススで黒く焦げている。
観客の中から
「おい、また爆発するんじゃ…」
とひそひそ声。空気が微妙にざわつく。
ライは舞台袖から見守っていた。
冷静に一歩踏み出す。
「……爆発しても被害がなければ“安全”は証明できる。僕が守る」
その顔の迫力に、近くの子どもが「うわ、こわっ」と泣きそうになる。
——相変わらず、外見だけは誤解を招く。
実験開始。
ボイラーがゴウンゴウンとうなりを上げ、次の瞬間——
「ボンッ!!」
派手な火花と煙! 観客が「うわあっ!」と悲鳴をあげかけたその瞬間、ライが片手を上げた。
透明な障壁魔法が展開し、火花は風船の中に閉じ込められたようにパチパチと跳ねるだけ。観客席には一切届かない。
アメリアは胸を張ってにかっと笑った。
「ほら、ちゃんと安全!」
観客はぽかんとしたが、次第に
「……あれ? 本当に危なくない?」
とざわめき始める。
だがその直後。
実験装置の鉄板が「ギィィィッ!」と悲鳴を上げ、ガタガタ揺れだした。
スポンサーの一人が顔をしかめ、
「やっぱり危険じゃないか!」と叫ぶ。
「え、ちょ、なんで!?」
アメリアは慌ててスパナを回すが、逆回しだった。
ガタガタがガタガタガタガタッに進化していく。
「逆だ、逆!」
ライが冷静に叫び、風の魔法を展開。
「圧力を横に逃がす!」
アメリアはその声に従い、バルブを思い切り叩いた。
「理屈より実験だーっ!」
「ゴオオオッ!」
大量の蒸気が噴き出す! 観客席に向かうかと思いきや、ライが風向きを変えたので——ちょうど横に立っていたロイスの方へ。
ロイスの金髪がバチバチ静電気で逆立ち、見事なライオンヘアーに。
「またかよ!」
観客が一斉に大爆笑。
ロイスは少し赤くなりながらも、何も言えずに髪を押さえていた。
会場の空気が一気に和らいだ。
怖がっていた市民も
「……逆に安心するな」と笑い始める。
スポンサーの眉も少しだけ上がった。
やがて装置は安定し、実験は終了。大きな拍手が巻き起こる。
「被害なし!」
「本当に安全だ!」
と声が飛ぶ。
子どもたちは「もっと爆発してー!」と叫んでいた。
スポンサー代表がライに歩み寄り、手を差し出した。
「見事だ。資金は続行だ。
いや、それどころか少し増額しよう」
ライは力強く握手を交わす。
「やったー!」
アメリアはスパナを振り回してぴょんぴょん跳ねた。
その勢いでライの肩をポンポン叩く。
ライは思わず口を開いた。
「君の努力は……誰よりも輝いている」
腹が、きりきりっ。
恋腹が発動し、こめかみに汗がにじむ。
アメリアはケロッとした顔で、
「ありがと!でもまずは実験の領収書まとめてから!」
と工具箱を抱えて走り去った。
残されたライはそっとお腹を押さえながら、真顔を崩さないよう必死だ。
バルドが横に並び、にやりと笑った。
「若、財布は厚く、期待は薄く——世の中そういうものでございます」
観客の拍手と笑い声の中、ライの銀の懐中時計の針は、今日も恋心で大きく振れていた。
ご読了ありがとうございます。
今回はアメリアの“事故を武器にする発想”と、ライの“誠実な支え”がかみ合った回でした。
ロイスの髪がライオンになるというオチで、緊張感も笑いに変わり、観客も読者もホッとできたのではないでしょうか。
「安全は退屈ではない。工夫次第で安心と驚きを同時に届けられる」――そんなメッセージを仕込みつつ、ライはまたも告白タイミングを逃しています。
次回も楽しみにしてください!
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