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完璧侯爵様、恋するとお腹が痛いんです —恋すると腹がキリキリする侯爵様の100連敗—  作者: ヨーヨー
第1章 貴族令嬢 クラリス

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第1話 若様、恋するとお腹が痛い!?

はじめまして!作者のヨーヨーです。

この作品は「有能すぎるのに恋愛だけポンコツな侯爵家の跡取り息子」が、誠実に、でも毎回コメディみたいに失敗しながら恋に挑む物語です。


主人公ライは剣も魔法も経済も完璧、でも「顔が怖い」&「恋を意識するとお腹が痛くなる」という致命的な弱点持ち。

それでも「政略結婚には逃げず、誠実に好きな人へ告白する」と決めて突き進みます。


第1話では、舞踏会で運命の令嬢と出会うシーン。

……が、もちろん一筋縄ではいきません。

コメディ多めですが、最後まで読めばちょっと切なくて応援したくなるはず!

ぜひ肩の力を抜いて読んでくださいね!


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王都の朝は、いつもにぎやかだった。


パン屋からは香ばしい匂いが漂い、商人は「今日こそ特売だ!」と声を張り上げる。子どもたちは広場を走り回り、にぎやかに笑っている。


だが、その中でひそひそ声が広がっていた。


「ライ様って知ってる?」

「剣も魔法も学問も一番なんだってさ」

「でも、顔が……怖いんだよな」

「にらまれたら気絶するって話だぞ」


そんな噂話をしているとき、その“ライ様”がちょうど通りに現れた。



---


ライオネル・フォン・グランツ。

17歳、侯爵家の跡取り。愛称はライ。


背は190センチ近く、長身で姿勢は完璧。

歩き方も立ち方も、教科書から抜け出したみたいにきれいだ。

学園でも首席で、剣も魔法も経済もトップ。

なんとも“完璧超人”と呼ぶにふさわしい。


……ただし、顔以外は。


目が釣り上がっており、眉が鋭く、口元がちょっと歪む。本人は優しく笑ったつもりでも、他人から見ると「ぎゃあ! 怒ってる!」と勘違いされるのだ。



---


この日もライは有能っぷりを見せていた。

兵士に剣の型の教えを請われれば、シュッと一太刀。風が地面を切り、兵士たちは「すげえ!」と拍手。


また、通りで商人の荷台が崩れそうになれば、地面に魔法の式を描いてふわっと安定させる。

商人は「助かった!」と頭を下げ、ライは「今日は祭りの前日ですから、値段を下げて数を売った方が得です」と冷静に助言。

商人は「なるほど!」と喜んで走り去った。


ここまでなら完璧だ。


だがその直後――助けた子どもに微笑んだ瞬間。


「ぎゃああああああああ!!」


子どもは大泣き。通りの人々も「やっぱり顔が……」とざわつく。

ライは「笑っただけなのに」と肩を落とした。



---


「若様、今日も立ち居ふるまいは百点。しかしお顔は……仕様でございますな」


後ろから落ち着いた声が飛ぶ。

執事のバルドだ。

白髪交じりで背は低いが、背筋はピンと伸びている。六十を超えているのに現役の兵士のように歩き、毒舌でズバッと斬ってくる。だがライを誰より理解しており、幼い頃から支えてきた存在だ。


「仕様って言うな」

ライがため息をつくと、バルドはひげをなでながら小さく笑った。



---


「安心してください! 今夜の舞踏会で運命の出会いがありますよ!」


元気いっぱいに声をかけたのは侍女のミーナ。

14歳、庶民出身。

ライの恋を応援するのが趣味みたいになっていて、毎回おせっかいを焼いては空回りする。

小柄で明るく、思ったことをすぐ口にするため、よくバルドに「空気を読め」と叱られている。

でも根はとても優しく、失恋したライを必ず「次は絶対うまくいきますよ!」と励ましてくれる。


「花びらまき要員も雇っておきました!」

「やめろ」

ライが即答すると、バルドもすかさず。

「若のお顔に花びらは、むしろホラーでございます」

「せっかく準備したのに!」ミーナがぷんぷん。



---


そのやり取りを眺めながら、ライの肩から小さな竜が顔を出した。

手のひらサイズの小竜、モフドラ。

ふわふわした毛に包まれ、性格はのんびり屋。

特技は“あたため”で、ライがお腹を痛めると腹に乗っかって、ほかほかの湯気を吹いてくれる。


「こいつは大事な腹あたため係だ」

ライがつぶやくと、モフドラが「ぷしゅ〜」と湯気を吹いた。

「火竜だーっ!!」

通行人が大騒ぎ。水を運べ! と叫ぶ人まで出てきて、現場は大混乱。

「違う! 湯気だ!」ライは必死に説明したが、誰も信じてくれなかった。



---


「ところでライ様。“恋腹”って本当なんですか?」

ミーナがズバッと質問した。


「……本当だ」ライはうなずいた。


恋腹――それは、恋を意識した瞬間にお腹が痛くなる奇妙な体質。


最初は“ムズムズ”する。


次に“キリキリ”痛む。


最後は“悶絶”して動けなくなる。



その様子を正確に測るのが、ライがポケットに入れている銀の懐中時計だ。

普通の時計と違い、時間を示さない。

代わりに、ライの鼓動に反応して針が動く魔具である。恋を意識すると鼓動が速くなり、針がぐんと上がる。ライにとっては「恋腹メーター」そのものだ。


今もその針が、ピクリと跳ねた。

角で見つめ合うカップルをちらりと見ただけで、もう“ムズ”。

ライは腹を押さえ、モフドラが慌てて「ぷしゅ〜」と湯気を追加。

通りの人々はまた「火竜だ!」と大騒ぎ。



---


夜、屋敷で舞踏会の準備が始まった。

ライは黒マントのほつれを自分で縫い、薬箱を確認。ミントの葉やハーブティー、包帯まで完備。

「若、まるで戦場への支度でございますな」

「恋も戦だ」ライはまじめに答えた。


ミーナはハート型の巨大な飾りを持ってくる。

「これをつければ恋愛運アップです!」

「やめろ」

「若のお顔にハートは、情報量オーバーですな」

バルドの冷静なツッコミにミーナはむくれた。


鏡の前でネクタイを直しながら、ライは小さくつぶやく。

「今日はうまく話せるといいな……。誠実に、短く、ちゃんと」


バルドは腕を組んでにやりと笑った。

「若様、礼儀は最強の武器。顔は……盾でございます」


ミーナが「盾って!」と吹き出しながら、3人と1匹は舞踏会へ向かっていった。



舞踏会の会場は、王都でも一番大きな広間だった。

壁には金色の飾りがぎっしり、天井からは巨大なシャンデリアがきらめき、床は磨かれて鏡みたいに反射している。ドレス姿の令嬢たちと、燕尾服の青年たちが音楽に合わせて踊り、会場は華やかな熱気で包まれていた。


ライオネル・フォン・グランツ――通称ライは、扉のそばで背筋を伸ばし、深呼吸を一つ。

(よし、今日は“短く、誠実に”。それだけだ)


と、その時。


「きゃっ!」


階段の上から、小柄な少女の声が響いた。

薄桃色のドレスを着た令嬢が、裾を踏んでバランスを崩す。今にも転げ落ちそうだ。


「危ない!」


ライは長い足でスッと駆け上がり、片腕で令嬢を支えた。

腕に収まったその少女は、大きな瞳をパチパチさせながら、驚いたようにライを見上げる。


「だ、大丈夫ですか」


「……ありがとうございます、ライオネル様」


その令嬢の名はクラリス。王都でも評判の可憐なお嬢様だ。

小鳥みたいにやわらかい声で礼を言われ、ライの心臓がドクンと鳴った。


カチリ、と胸ポケットの懐中時計が開く。

銀色の時計の針――“恋心針”が「ググッ」と二目盛りほど上がった。


「……っ」

お腹がムズムズする。これが“恋腹”の第一段階、“ムズッ”だ。


ライがそっと腹に手を当てると、肩から飛び降りたモフドラが「ぷしゅーっ」と湯気を吹きながら、ライの腹にぺたんと張りついた。

温かさがじんわり広がり、少し楽になる。


だが周りの貴族たちは青ざめた。

「ひ、火竜!?」「危ないぞ!」「広間が燃える!」

「ちがう! 湯気だ! ただの湯気だ!」

ライは必死に叫ぶが、ざわつきは広がるばかり。


そして、さらに追い打ち。


「今こそロマンチック演出です!」


元気な声とともに、ライの侍女ミーナが飛び込んできた。

小袋を高々と掲げ――


「花びらシャワー、いっきまーす!」


バサーーーーッ。


しかし、会場の空調を完全に無視していた。

桜の花びらは美しく舞い上がり……次の瞬間、クラリスとライのいる反対方向へ吹き飛ばされた。


「ぎゃあ!?」「スープが桜味に!」

「デザートに花びら混入です!」

テーブルに直撃し、料理は台無し。料理長が頭を抱える。


「す、すみません! 風の裏切りです!」

ミーナが慌てふためく。


クラリスはクスクスと笑い、ライを見上げた。

「ふふ……でも、さっき助けてくださって、本当にありがとうございました」


「いえ。転ばなかったのなら何よりです」

ライは真剣に答えたが、表情が固すぎて

「やっぱり怖い顔だな」と周囲がざわつく。


(だめだ……ここで挽回しなければ)


ライは一歩踏み出し、思いきって声をかけた。

「クラリス様。もしよろしければ、後ほど少し……お話を」


クラリスは一瞬驚いたが、すぐに小さく頷いた。

「はい……」


その返事を聞いた瞬間、懐中時計の針がさらに「ピクッ」と上がる。

お腹が“キリキリ”。第二段階に突入だ。


「……っ」

冷や汗が流れる。


ライは必死に耐えたが、腹がねじれるように痛い。これ以上は危険だ。

「す、少し失礼を……」

短く礼をして、壁際に下がる。モフドラが腹を温め続け、ミーナが大慌てで「ミント茶持ってきますか!?」と叫んでいる。


クラリスは首をかしげながら小さくつぶやいた。

「……不思議な方」



そんなドタバタの場面に現れたのは執事のバルド。

燕尾服姿で背筋を伸ばし、ひげを整えたその姿は、年齢を感じさせない。

ライを幼い頃から支えてきた彼は、いつものように毒舌混じりの助言を投げかける。


「若様、本日も仕様どおりの始動でございます。助けて、湯気って、花びらスープ」


「……会話聞いてたのか」


「ええ。最後に退いたのは百点満点でございます。ですが、お顔が近距離に迫ると……威圧感は千点ですな」


「そこは減点方式で頼む」


モフドラが「ぷしゅー」と同意の湯気を出す。

ミーナは「次は絶対成功ですから!」と花びらを拾い集めながら必死に言い訳をしていた。


ライは遠くで友人たちと笑っているクラリスを見て、小さくつぶやく。

「誠実は、最短の近道じゃない。でも、唯一の道だ」


バルドはにやりと笑った。

「若様、その道はたいへん長うございます。腹巻きは二枚重ねでまいりましょう」


こうしてライの恋の第一戦――舞踏会は、コメディたっぷりに幕を閉じたのだった。


笑ってもらえたらブックマーク! 作者の腹筋が鍛えられます!

第1話は「ライってどんな人物?」を一気に紹介する回でした。

顔は怖いけど本当はめちゃくちゃ優しくて誠実、でも恋となると腹痛でダウン……。そんな彼の“仕様”を楽しんでいただけたら嬉しいです。


次回は、いよいよヒロイン・クラリスとの「お茶会」回!

ライの知識が炸裂する……はずが、やっぱり腹痛が……?

どうぞお楽しみに!


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楽しんでいただけましたか?

ぜひ☆評価もお願いします!!

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― 新着の感想 ―
主人公のキャラと体質の設定がとてもユニークだと思いました。
恋腹の設定面白いと思います! まぁでも、ドキドキしすぎてお腹痛くなることは普通にあるかも?
恋腹――それは、恋を意識した瞬間にお腹が痛くなる奇妙な体質。 過敏性腸症候群のワタシには理解できます。 そして、お腹を温めてくれるモフドラは、うらやましいです。 「恋腹メーター」も欲しいです。 針…
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