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第26話 世界最強の異人-①

「ぐ、ゔゔぅ……‼ な、何を使ったのですかァ‼」

「おぉ、ちゃんと効いてるね。対異人用弾丸、ちゃんと使えるじゃん」


 犯人の十八はその場でうずくまり、額に青筋を浮かべる勢いで私を睨む。

 私は普通の異人ではない。本来ならばウイルスに感染して異人となるが、私は生まれながら。先天的な異人だ。


 ママ曰く「異人は後天的になるもので、能力を使えるようにウイルスが体を作り変える必要がある。故に一つの能力しか使えない」というもの。元から能力が使えるような肉体で生まれた私なら、どんなウイルスも取り込んで、自分の物にできるのでは? と思った。

 エクセリクス、もとい能力のエネルギーは、血を作る骨髄で生成される。血にはウイルスが沢山含まれていることから、ママの記憶を見る際に十八が所持していたウイルスを既に取り込んでいたというわけだ。


 ちなみに、右腕を透明にしてこっそり後ろに銃口を向けて撃ったというわけである。


「復讐は……ワタシの復讐は、ここで止まるわけにはいかないのです……‼」

「復讐は成功させない。あんたの体、この弾丸で視聴覚室の壁みたいにしたげる」


 銃口を向けるが、十八の姿は再び夜と同化する。

 銃弾も限られているし、近くにあるものを武器にして戦うのが吉だろう。


「よし、一旦これでいいや」私は壁掛け時計と扇風機を手にして臨戦態勢へと移る。

 さすがに輝夜のお母さんだけでは抑えきれない感染者の雪崩が発生しており、こちらにもやってきていた。


 四方八方から襲い掛かってくる感染者を扇風機で薙ぎ、取りこぼしは時計で殴打。ガラス片が飛散して中身の短針と長針が飛び出すが、それをクナイのようにして敵の膝に投げる。しかし、わんこそばのように倒しても倒しても、次の感染者が補充されてゆく。


「キリがない……アイツはどこで操ってんの!」


 異人や終人と言う存在が生まれてから、それに対するための技術も発展してき、SFっぽい武器の生産も増えた。それを使っているのだろう。


 扇風機のガードを外し、火花を散らす千切れた電線にコンセントを突き刺す。超高電圧が供給されることによって、丸鋸のように高速回転するそれ振り回す。豆腐でも切っているかのように感染者は両断。


「傷つけたくないけど、あとで必ずみんな蘇らせるから! ごめんなさいっ‼」


 無関係の人を傷つけるのは心が痛い。でも、やらなきゃやられる。

 終人と協力し、大量の軍勢を倒すゲームのように感染者を薙いでいるが、キリがないのは言わずもがな。本体を倒していきたいのはやまやまだが、それを十八が許してくれるとは思えない。


(仕掛けるか……罠を)


 こちらが血眼になって探すというのは、得策とは言えないだろう。


「輝夜のお母さん、とにかく車をいっぱい持ってきてほしい!」

『……? 分かっタ』

「〝モードチェンジ・覇銃(ハンドキャノン)〟」


 合言葉的な物を呟いてみると、拳銃は変形して〝ハンドキャノン〟とやらの姿へと変える。これで威力がマシマシになるというわけだ。

 感染者の猛攻を捌きつつ、周囲にある車に弾丸を放ち、銃声をこの狂瀾怒濤の街に銃声を轟かせた。


「いッ、たぁ! 反動やばすぎでしょ……! でも、これがいい。この〝威力〟がいい‼」


 狙ったのはガソリンタンク部分。並大抵の銃ではタンクに穴をあけるのは困難らしいので、この絶大な威力が丁度いい。

 そしてタンクから漏れ出たガソリンは切れた電線から飛び散る火花で引火し、大爆発を引き起こす!


「こそこそ隠れてるのなら。不可視の墨を着こんでいるのなら……。この〝熱〟で丸裸にしてあげる」


 母親がどんどんと車の供給をしてくれるので、この炎が尽きることはなさそうだ。

 腱鞘炎まっしぐらなど知ったことか。車という鉄塊の雨を的に銃弾を放ち、銃声と爆炎の狂騒曲を奏でる。


『グルルルァアア!!』


 火達磨になりながらも突っ込んでくる感染者。近くに落ちてきたカーペットを投げて防ごうとしたが、その薄い防御壁は突破されて腕を噛まれた。


「【死亡推理(カルペ・ディエム)】!」


 こめかみに灼熱の銃口を突きつけて自害し、死に戻りで細菌の繁殖を防ぐ。死に戻りが使えるのは残り二回。

 腕が痺れて思うように動かせなかったため、噛みついて咬合力だけで感染者を宝利投げる。


「山とか近くに会ったらヤバかったかも。輝夜の能力上、生きてんなら何でも傀儡にできそうだ、しっ‼」


 感染者諸共車を爆発させ、かれこれ約五十台は廃車確定になっている。

 花火大会の季節はまだ先だというのに、今日はこの紅蓮一色の花火が目蓋の裏側に焼き付いて眠れなさそうだ。


(対異人用弾丸は残り一発。確実に当てなきゃいけない……けどこのままだと私もこんがり焼け死ぬか一酸化炭素中毒で死ぬ。早く終わらせなきゃ!)


 炎で墨が乾き、十八が歩いたであろう黒い足跡が浮かび上がっている。だが、奴の姿は一向に見えない。

 汗が噴き出て視界が滲む。


()……汗も一緒に流れてるから墨も乾きにくい……?」


 ただの汗だけではない。嫌な汗も一緒にあふれ始めた。犯人は絶対私に立ち向かってくるという前提で進めていたが、一旦距離を置いてから、炎と私が弱ってからくるのではないか?

 そんな思考が過り、一瞬たじろいで退路へと足が竦む。


「撤退、すべきかも……」と呟く。

 一歩、また一歩と業火から後退する。意識も朦朧としてきて、維持するのは困難になってきた。

 ここはもう、離れるしか――。


「――宇治梨円羽。異能力名【死亡推理(カルペ・ディエム)】。死に戻りや事件の再現をする、〝あのお方〟と同じ能力」


「っ!」と私は声にならない叫びを上げる。


「相当な体力を消耗するようですね。どうやら、我慢比べはワタシの勝ちのようですね」

「ガハッ‼」


 業火に佇む漆黒の影。その触腕が私の胸を貫く。残り一回。

 気が付かなかった、というか気が付けなかったが正しい。私が一番油断し太瞬間を待っていたんだ。私が「逃げたのでは」という思考が過った、一瞬の隙を突いてきた。

 十八は逃げたのではない。伺っていたんだ。そして賭けに勝った、と言いたいのだろう。


「見るに、使えるのは残り一回といったところでしょうか。王手、ですね」


 再び彼の口が三日月になる。しかし、負けじと「それはどうかな」と私は口を開く。


「元から、パパが帰ってくるまでに倒さなきゃいけなかったから短期決戦は必須……。にひひ、〝演技〟が効いてよかった……‼」


 私は既に、倦怠感の過剰蓄積でその場から動けない。そう、()()動けない。


「私が動けないなら、私以外を動かす。――【血鬼の苗床(ラグ・ヴァンパイア)】‼」

『ウグォャアアァァ‼』と雄叫びがどこからか聞こえ、その声の主は十八に襲い掛かる。


 私の足元には《《カーペット》》が敷かれていた。そして、さっき襲ってきた感染者に噛みついていた。

 よって、【血鬼の苗床(ラグ・ヴァンパイア)】の発動条件は満たしている!


「き、貴様……‼」

「さらに、あんたの【艶墨(グラフィック:γ)】で感染者を隠してたってわけ。セリフ、返してもらうよ。――王手」


 対異人用弾丸が込められてたハンドキャノンから銃声が響く。


「いぎゃぁぁああああああ⁉⁉」

「私が張っていた罠は炎で墨を乾かし姿を剥ぐというものじゃあない、油断したところに感染者をぶつけ、この弾丸を撃ちこむのが本命だったってわけ。にひっ、私の本命、受け取ってくれて嬉しかったよ♪」


 一発であの苦しみ様だった対異人用弾丸を、間髪入れず二発目も食らった。引き起こされるはずだ、アナフィラキシーショックに似たものが。十五年前の最初の被害者のように、苦しめ。


「よくも……よくもやってくれたなッ! 何をしている輝夜ァッ‼ 弟が死んでもいいのか――ッ‼ ワタシが死んだら助からないんだぞ⁉ このクソ女をさっさと始末しやがれェ――ッッ‼」

「ふぅん、それがあんたの本性なんだ。いいじゃん、めっちゃ似合ってる。どす黒い、真っ黒なあんたの能力とね」


 張り付いていたペルソナが剥がれ落ち、紳士さはこの揺らめく焔のように焼け落ちた。

 感染者の動きが活発になり、炎なんぞ知ったことかと突っ込んでくる。だが、もうタイムリミットだ。私は充分働いた。《《十分経った》》のだ。だからここからは任せ、魅せてもらおう。


 ――〝世界最強の異人〟の実力を。


「【赫血の鱗紋(ブラッド・モルフ)】――〝平伏しろ〟」


 最強の御前、感染者全員は頭を地面にめり込ませ、ピクリとも動かなくなった。帰還したるは最強――宇治梨玲央羽。

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