大日本帝国児童教育漫画社
架空の大日本帝国における教育・研究機関が活躍する架空戦記です。
日本帝国児童教育漫画社。
大正から昭和にかけて存在した会社です。
社名通り、児童に漫画により分かりやすく教育することを目的としています。
現在の「学習漫画」の先駆けと言えるでしょう。
この会社の特異なところは、自社が出版した本を無料で全国の小学校に配布していたことです。
現在のフリーペーパーのように本に載せている広告で収入を得ていたようですが、慢性的な赤字経営だったと思われます。
経営者は大正末期から昭和六十年代にかけて活躍した実業家で、重工業が本業であり、そちらで得た利益で赤字を補填していたようです。
そこまでして、児童向けの学習漫画を出版し続けた理由は、実業家が何も言い残さず、昭和の終わりに死亡しているので不明です。
しかし、私はひとつの仮説を立てました。
実業家は絵は描けませんでしたが、たまに漫画の内容を指示することがありました。
その一つに「兵隊ごっこ」というのがあります。
学習漫画の合間に挟まれた息抜きのための今で言うギャグ漫画です。
昭和の初め頃に発表されました。
ストーリーは、子供たちが二つのグループに分かれて「兵隊ごっこ」をするという。当時の子供たちがよくしていた遊びをテーマにしていました。
敵に撃たれて負傷した(もちろん、ごっこ遊びの設定)子供が降伏して、捕虜になることを申告します。
捕虜になった子供は「捕虜は敵に名前と階級を答えるだけでいいと、国際法で決まっている」と言い、さらに「捕虜は虐待してはならず。衣食住を敵は提供しなければならないのだ」と言います。
そして、捕虜になった子供は、敵のグループのリーダーの子供の家(見た目で分かる金持ちの家)に押し掛け、オヤツと夕食をご馳走になり、豪華なベッドで眠るのです。
リーダーの子供の「図々しいやつだ」というセリフの落ちで終わっています。
ほのぼのとした子供の日常のような漫画ですが、私は重要な内容が含まれていると、考えています。
捕虜になる権利と義務について描かれているのです。
この漫画の後に国際法について子供向けに詳しく描かれた学習漫画が載っていました。
第二次世界大戦時、「捕虜になることは恥辱であるから捕虜になるな」という訓示を当時の陸軍大臣が出そうとしたことがあります。
しかし、この漫画の影響で捕虜についての国際法が一般に知られていたため、取り下げられました。
もし、その訓示が出されていたら、捕虜にならないために兵士が自決したり、捕虜になった場合どうすれば分からず。敵に機密情報をペラペラしゃべってしまうということが起きたかもしれません。
他の漫画に「スパイごっこ」というのがあります。
子供たちが町に出て、無作為に通行人を尾行して、スパイの気分を味わうというものです。
子供たち数人が外国人の大人の男性二人組を「敵のスパイ」に見立てて尾行します。
二人組は会話をしますが、外国語のためほとんどの子供たちは分からないため、尾行に飽きてきます。
しかし、子供たちの一人が外国語を勉強していました。
二人組の会話から強盗グループの一味と分かった子供は交番に駆け込みました。
強盗グループは一網打尽となり、子供は警察から表彰されました。
この後、外国と仲良くなろうとするならば、外国語を学ばなければならず、敵対するならば、なおのこと、外国語を学ばなければならないことが漫画で描かれます。
第二次世界大戦時、敵対国の外国語を禁止しようとする動きがありましたが、取り止めになりました。
このように、日本帝国児童教育漫画社の出版した漫画は、少なからぬ影響を日本に与えていると私は考えます。
もし、これらの漫画が存在しなかったとしたら、歴史が変わっていたでしょう。
昭和20年3月に、日本は連合国に降伏することはなく、本土が壊滅するまで戦うことになっていたかもしれません。
児童教育漫画社は、終戦直後に解散しています。
経営者である実業家が本業である重工業で、軍需工場を経営していたため、占領軍により公職追放されたためでした。
実業家は公職追放が解かれると、出版業を本業として復帰しました。
学習漫画だけではなく、娯楽としての漫画をメインとしていました。
実業家は新人漫画家の発掘に熱心で、彼が推薦した漫画家は全員ヒットしています。
実業家が特に推薦した二人組の漫画家は新人の時に、引き受けた大量の仕事のほとんどが締め切りに間に合わず落としてしまい。二人は業界から干されました。
彼らは漫画家として廃業寸前でしたが、実業家は支援を続けました。
実業家は「私が支援をしなくても二人が漫画家として復活するのは分かっているが、万が一がある。彼らの作品が読めなくなるのは悲しい」という謎の言葉を残しています。
実業家が愛読した二人の漫画は、未来から来た青い猫型ロボットの漫画と独特な笑い声の販売員の漫画です。
青い猫型ロボットの漫画は、現在でも毎年映画が公開されていますが、原作者が死去したため、オリジナルの話が多くなっています。
原作者が書いた映画で、実業家が一番好んだのは、記念艦「長門」に主人公たちが見学に訪れ、そこに地球への侵略者があらわれ、猫型ロボットの未来の道具で宇宙を飛べる戦艦に改造した「長門」と立ち向かう話です。
クライマックスでは射撃の名手の眼鏡の少年が、「長門」の主砲を操りラスボスに命中させます。
実業家は「前回は、この映画はなかった。私の影響だな」とやはり謎の言葉を残しています。
アメリカに接収され、原爆実験の標的となって沈んだ戦艦「大和」を宇宙戦艦に改造して、宇宙からの侵略者と戦う有名なアニメがありますが、それよりも先に青い猫型ロボットの映画の方が先に公開されています。
実業家は昭和の終わりごろに亡くなっていますが、最後に「青い猫型ロボットの誕生を早めた。どんな影響が未来にあるのか見れないのが残念だ」と言い残しています。
令和XX年現在、日本は世界で最も人工知能によるロボットが発達した国となっております。
漫画の青い猫型ロボットが子守りロボットだったように、最初は子守りロボットとしての開発でしたが、今では人手不足のあらゆる分野に進出しています。
例えば、鉄道では人手不足により、運転車両のワンマン化、駅の無人化が一時期進みましたが、ロボットによる運転士・車掌・駅員により、利用者の利便性は向上しました。
これは漫画の青い猫型ロボットの存在が開発者に影響を与えたからだと私は考えています。
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