王宮の晩餐会
アレストラでは年に一度、王室で大晩餐会が開かれる。
王の前に2人の姫、白王女サラと黒王女エレーザが席についた。実は2人は母親の異なる姉妹だ。
姉であるエレーザの母は王とは早くに離縁し、今は妹のサラの母が王妃をつとめている。
この国には、精霊と言われる不思議な力が溢れていた。エネルギーとでも言い換えればよいか。
その根源をなすのは王族の代々続く血であるとされる。
王、サラ、エレーザが今はその役目を担い、精霊を居心地良く国に集めている。その力を用いて、町に集った職人、ギルドたちは剣をつくり、他国に売りさばいて財を成している。
王族としてのサラの人気は高まる一方だった。いつも笑顔で人々と交流し、明るい。その反面、エレーザの静かで暗い、孤立した様子に人々は不信感を持っていた。
「このままでは長女であるエレーザが次の王位を継いでしまう」
「あんな何を考えてるかわからない黒王女に国は任せられない」
そんな声も聞こえてきた。
そして、晩餐会の夜、王は、次のことを発表した。
「この国は精霊に守られし国。ギルドの剣をつくる力あっての国。ギルドの長と結婚したものを次の王位とする」
集まっていた人々はざわめいた。
サラはヘインリッヒを連れて発表した。
「ギルドの長、ヘインリッヒと私サラは結婚いたします」
会場が拍手に包まれた。サラの母である王妃は満足げだった。
エレーザはつぶやいた「私に王位などつとまらないので、サラにお譲りします。私は静かにこれからも精霊のために祈ります」
みなは、こそこそとなにか話していた。
その夜、エレーザの住む塔に召使いの剣士、エデンが来て伝えた。
「早く逃げて。サラのためにあなたが邪魔になると考えた人たちがあなたをこの塔から突き落としに来る。早く逃げて」
エレーザは近づく炎が見えた。慌てて身の回りの物を取ってエデンと国を出て逃げていった。
塔についた人々は「遅かったか」「まあいい、エレーザがいなくなればサラ様は安心して王位をつとめられる」と話していた。
このあと、エレーザなきアレストラにどんな不幸が襲うとも知らずに。