黒王女の失態
ある日、黒王女は失態をおかした。
ヘインリッヒと白王女サラが楽しそうに町で歩いている姿を見て、嫉妬心にかられ、家でアルコールであるドリンカンケンを大量に飲んでしまったのだ。
酔っ払った黒王女エレーザは町中をふらふらとさまよった。
それを皆が怪しがり、「やはり、黒王女はこの国にはふさわしくない」「なんてざまだ。白王女サラ様はいつも皆に笑顔であたたかいのに」と批判した。
しかし、物事には影と光は対で存在する。影を担うエレーザの存在があってこそ、光のサラが輝き、国の精霊が栄えていたのだ。そんなことは誰も知らない。
エレーザが場末の屋台で酔いつぶれてると聞いたギルドの長であるヘインリッヒがかけつけた。ヘインリッヒにこんな姿を見られるなんて、エレーザには耐えられなかった。
「ついてこないで頂戴。私がどうなってもあなたには関係ないことでしょ」
「そんなことはありません」
ヘインリッヒは強い口調で言った。
「それは、どういう意味で」
とエレーザがいいかけた時、白王女サラがかけてきた。
水や薬草を手に
「エレーザ、これを飲んで、しっかりしなければだめよ」と声をかけた。
それを見かけた町の人達は口々に
「同じ王女でも大違いだ」
「この国の王女は白王女だけでいいな」
とつぶやいた。
ヘインリッヒもサラの姿に感動した様子で、エレーザはさらにつらい気持ちになり、一人、ふらふらと塔へ戻っていった。