あれ、仲良しなのか。
あー頭がガンガンする。
気持ち悪い。
そんな感覚で意識が浮上した。
飲みすぎたなー。ええっと、昨日は誰と飲んだんだっけ。
重たい頭でぐるぐる考えていると、昨日のことを思い出してきた。
ああ、彼氏だった人に浮気されてて、やけ酒したんだった。
パチリと目を開けると、見慣れた天井。
家じゃないところで目が覚めることも想定していたので、正直ホッとした。
「うわ、きもちわる…」
服は昨日のままだ。
ストライプのシャツにお気に入りのオレンジのフレアスカート。
アクセサリーを外してくれたのは優だろうか。
全く記憶にない。
あたしはスウェットに着替えて、のそのそとベッドを出た。
「麗ちゃん、おはよう」
「おはよ…」
リビングに降りると、優がキッチンに立っていた。
あたしの酷い顔を見て、あたしを椅子に座らせると、冷たい水と、二日酔いのときにいつも飲んでいる薬を出してくれた。できる子だ。
「あたし、昨日どうやって帰ってきた…?」
「全然覚えてないの?まあ寝てたもんね」
聞くと、優はこてんと首を傾げた。
酔っても記憶を失くしても、ちゃんと自力で帰ってくるのに。寝てた?送ってもらった?
「麗ちゃんの取引先の、タツミアキさんって男の人が送ってきてくれたんだよ。」
名刺もくれたよと、優は秋の名刺を見せてくれた。
秋の前で寝て、しかも送ってもらうなんて。
「お姫様抱っこして部屋まで連れてってくれたんだから。」
「おひめさまだっこ」
「私と愛じゃ部屋まで運べないから助かった。お礼言っといてね?」
「う、うん」
重いのに。身長だってあるし体型維持のために鍛えてるし。
「タツミアキさんって、麗ちゃんがよく言ってる専門のときの後輩だよね?話したことないけどどこかでお会いしたことはある気がする。」
「……よく覚えてるね」
「そりゃあね?コンクールもすごかったし、麗ちゃんずっと仲良いじゃない」
「え?」
「だって一番名前聞いてると思うよ」
仲良い?仲良かったのか。
頻繁と言うほどでもないが、飲みにも行くし、会えば軽口を叩いて、たまに愚痴を聞いてもらって。
仕事の関係以上に信頼もしている。
あれ、仲良しなのか。秋とあたし。
「じゃあ、私行くからね。お水たくさん飲んでね?」
「うん、ありがとう、いってらっしゃい」
デートに行くらしい優を見送った。
一時期彼氏の気持ちを信じられずもだもだしていたが、最近は上手くいっているようだった。
それはそうだ、こんなに可愛くて性格のいい子、そうそういない。大事にしなかったら、あたしが殴り込みに行く。
はぁ。と、妹の幸せを喜びながら羨んで、スマホを開いた。
秋からは「二日酔い大丈夫ですか?」とだけメッセージが来ていた。
それから、元彼からの謝罪のメッセージや、不在着信が何件も。
そっちは一切読む気になれず、電源を落とした。