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見てらんないんですよね



行き交う人の声やざわめきの、真ん中を歩いているはずなのに、どこか遠く感じた。


先程の光景が、目に焼きついて離れない。


浮気されたそれ自体より、またそういう男を選んでしまったということが、ショックだった。


「麗さん」


しばらくぼんやり歩いていたら、頭上から名前を呼ばれて、秋が隣にいたことを思い出した。

元彼に言い放ったあたしの肩を抱いて、秋はその場から連れ出してくれたのだ。

咄嗟にあんなことを言ったものの、足がすくんでいたから……正直助かった。


「今日から僕が麗さんの彼氏ってことでいいですか?」


ニコッと何事もなかったように言われて、あたしはつい切り返してしまう。


「あっ!れは!!売り言葉に買い言葉というか!!目には目をというか…」

「そっか残念」


おおよそ残念そうにもなく、隣を歩く男はあたしを放した。


「麗さんかっこよかったなー」


慰めるでもなく、心配するでもなく、だからって浮気されたことを揶揄うでもなく。


「……帰る。」


だから、話を合わせてくれてありがとうと言うタイミングを逃してしまった。


今夜はやけ酒だ。

お酒が飲めるようになった妹の優は今日空いているだろうか。バイトと言っていた気もする。帰りは何時だろう。

それか友達を呼び出す?誰か1人くらい捕まるだろう。


いや、惨めな姿を見せながら飲みたくない。

浮気されたことをネタにして話して、爆笑しながら泣けもせずに夜がふけるのが目に浮かぶようだ。


そんなんじゃ、楽しめもせず、発散しきれもせず終わりそうだ。

だったら、強いお酒とおつまみを買い込んで自分の部屋で1人で。


「ねぇ、麗さん、今1人でやけ酒でもしようと思ってるでしょう。それか1人カラオケ」

「んなっ!?」


見上げたそいつは、笑っているようで感情が全然読めない。


「…何、よ。あたしの勝手でしょ?」

「彼氏に浮気された。だったらもっともっとしっかりしなくっちゃ。」

「な…によ…」

「見てらんないんですよね。周りに求められる自分って、たまにすごく嫌になりません?」

「何なの」

「今、本当は誰か甘えたいって、思ってません?人に甘えるのが苦手なお姉ちゃん?」


悔しかったのは、偉そうにわかったように言うからなのか、言い当てられたからなのか。


「……あんたのそういうところが嫌いよ」


グーでお腹を殴ると、その手を大きな手で包み込むようにして握り込んだ。

飲むなら付き合いますよと、秋はへにゃりと笑みを浮かべた。





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