僕には言えないこと? -sideアキ-
ちょっといい感じなんじゃない?と思っていたら、落とされる。
それって、今までにも何度もあったことで。
会えなくて残念だったなと麗さんの会社から帰る途中、公園のブランコで1人、ボーッとしている麗さんを見かけた。
声をかけても、長いまつ毛で勝気な瞳は隠されたまま、心ここにあらず。
それは、気付いて慰めた方がいい?気付かないフリをするのが正解?
「何でもないってば!」
その、困ったような、泣きそうな表情は、何。
「麗さん!?」
身に覚えがない。
買い物に行った日は、いい感じだった。
スニーカーも履いてくれてるってことは、少なくともちょっとは気に入ってくれてるんでしょう。
でも、このタイミングで拒絶されるのは、わからない。
「……麗さんいないんですね。」
「何したのぉ?」
「何もしてない…と、思うのですが。」
底なしに明るくて、エネルギーと自信に満ち溢れていて、しんどいときですら気丈に振る舞うのに。
逆風でも、それを追い風にして楽しむくらいの人なのに。
仕事に没頭するのはいつものことだけど、そうやって必要ないことまでやるときって、何かプライベートであったとき。
何があった?僕何かした?
僕には言えないこと?
それはそうか。だって僕はーーー
「そーだ、この前、麗さんの元カレが来ましたよぉ。麗さんいなかったし、追い払ったけどぉ」
「え…」
「麗さんにそれとなく聞いたけど、会ってはいないみたいだから安心してくださーい」
「……浮気しといて未練たらたらって、最低だな……」
「ホーント、麗さんの唯一の欠点はオトコを見る目がないトコ」
肩をすくめる亜由美さん。
腑が煮え繰り返るとはこのことか。
「それから気になることがあってぇ」
「気になること?」
「麗さんのSNSにメッセージ来てて、あ、これほぼアタシが動かしてるんですけどぉ。元カレっぽくてぇ」
「……へぇ?」
亜由美ちゃんは丁寧に巻いた髪を指に巻きつけて、紅い唇が綺麗な弧を描く。
「探る感じが違和感あって、ちょっと調べたんですけどー、N社の副社長のお気に入りみたいですねぇ。元カレはそこに行ってる営業サン。」
「…N社って、この前一悶着あったところでしたっけ。」
「そうですねぇ。競合なのでこちらの手のうち知られたら不利になりますねぇ。N社が契約取ると、その元カレの売り上げにもなるんじゃないですぁ?」
「…クズが…」
「N社って確か、秋くん繋がりありましたよねぇ?」
僕はスマホを取り出して父親の連絡先を呼び出した。
「N社…父と仲良くしてる人が。父に連絡します。」
「理解がはやくて助かりますぅ」




