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そういうところも好きなんだけど -sideアキ-



テーブルに突っ伏して、やけ酒で赤くなった頬に、閉じられた目尻からポロリと伝った涙を拭う。

手入れされた綺麗な肌にそっと触れる。


「僕でいいじゃないですか」


異性との線引きをしっかりしている彼女が、こうやって無防備に眠ってしまえるのは、僕が気心の知れた“恋愛対象外の後輩”だからだ。



胸の痛みにも慣れた。

彼氏の惚気も愚痴にも。


それを、何でもないフリをして聞き流すのにも。



恋愛対象にしてもらいたいなら、からかうのもやめて優しくしたらいいのに。

女王様然とした出たちの彼女の綺麗な顔が、怒ったようにしかめられるのも、呆れるように睨まれるのも、困ったように眉を下げるのも、可愛くて。

顔を見たら、またそんな表情を見せてほしくなって。


不毛だ。あまりに不毛だ。

何度か、女の子にアプローチされて付き合ったこともあった。

「忘れられない人がいてもいい」って言うから。

楽しかったしそれなりに好きだったけど、結局なんか虚しくてお別れしてもらった。

妬くどころか、無邪気に「どんな子?」と聞かれるのがしんどかったのも、ある。



幸せ!!ってオーラを出してくれたら僕だって幸せを願えるのに、いつだって出てくるのは麗さんを大切に扱ってない奴の話ばっかり。


外見に寄ってくる奴と付き合うからそうなるんだ。

そんな奴と付き合うくらいなら、僕と付き合ってよ。誰よりも大切にする自信あるのに。


いざ告白しようとすると、図ったかのようにいい人がいるとはにかんで報告される。

ずるいな。狙ってるだろ。

そんな顔されたら、奪おうなんて気も起こせない。


「ふぅん、今度は長続きするといいですね?この前は何週間でしたっけ?」なんて思ってもないことを言って、麗さんが怒るまでがいつもの流れで。


諦めて、片想いを謳歌することにした。

「麗さんが幸せになるまで」という、漠然とした期限で。

誰かと付き合って虚しい思いをするより、好きな人を想って傷付いている方がマシだった。


専門からの悪友には会うたびに「まだやってんの」と笑われる。

「いいように扱われている」に関しては、好きで勝手にやっているのでしっかり否定して。

なんだかんだ心配してくれているのだ。



仕事は好きだし、一生独身でも、それなりに楽しくやっていけるんじゃないかなって希望的観測で。

もしかしたら、麗さんより好きになれる人に出会うかも、しれないし。

そこに関してはちょっともう自信ない。



「でぇ?麗さんのことはいつから好きなんですかぁ?」

「……バレバレ?」

「バレバレですよぅ。」


麗さんの会社の副社長兼社長秘書の亜由美さんにはすぐにバレて全て吐かせられたというのに、恋愛経験値が高いだろう麗さん本人はまったく気付く気配もない。

いや、気付いてスルーしている可能性もあるのか。


気にはかけてくれているらしく、麗さんがいないときに進捗を聞かれる。

今回も、こうやって。


「特等席で見てるのに、進展なくてつまんなぁい」

「…ハハハ…」

「この前の『おデェト』はどうだったんですぅ?麗さん、彼氏と別れたんですよねぇ?」


ゴテっとしてネイルの乗った指を僕に突きつける亜由美さん。

こんな喋り方で派手なネイル、金髪の巻き髪がよく似合う派手な見た目の美女だが、亜由美さんは創業期からずっと麗さんを支えているだけあって、マメで仕事も早いし無駄がない。そしてこういうところも抜け目がない。


「あー…まあ、楽しく服選んでもらいましたよ。」

「ほーほー。今日のそのおしゃれなコーデは麗さんチョイスなわけですね!そーれーでぇーーー?」


いい空気だったとは思う。

からかって怒らせることもなく、楽しそうだった、し。

靴も…嫌がってはいなかった…と、思う。

頬を赤く染めて、シンデレラみたいなんて可愛いことを言うから。

王子っぽく?返してみても、たぶん、喜んでいた…と思う。

そんな照れたような顔、僕にしてくれたの初めてなんじゃないかな。思い出してニヤけそう。いけない。


「あぁもぉ!なんでそこでその流れで告白しないかんですかぁ!クライアントとの間でのらりくらりして契約取るコミュ力の使い所は、そーこーだーぞぉ!このヘタレ王子!」


大袈裟に呆れて見せて、ポカポカと僕の背中を叩く亜由美さん。


言いたいこともわかる。

でも。でもさ。

彼女、会う相手に合わせて服装変えるんだよ。

好きな男に会うときや女友達と遊ぶときは、短いタイトスカートとか露出度高めだったり、女性らしい可愛いカッコをするのに、それ以外の男か目上の人と会うときはパンツスタイルかジャケットでクールにまとめてくる。

僕と会うときはきっちり後者。今回も、もれなく。


そういうところも好きなんだけど、気付いてしまう自分が忌々しいんだけど。


その意思表示を知って無視するには、ちょっと彼女は近すぎた。




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