お姫様じゃない
あたしはお姫様じゃない。
何度そう思ったことか。
小さい頃いろんなおとぎ話に出てくるお姫様に憧れていた。
可愛らしくて、素敵な王子様に愛されるお姫様。
よく幼稚園の友達を巻き込んで、お姫様ごっこをしたものだ。
でも、大人になるにつれて、あたしは気付く。
あたしはお姫様じゃないんだなということに。
女王様や王子様。騎士様。
そういう役回りだ。
真ん中の妹の優みたいに、気立がよくて安心感を与えるわけでもないし、末の妹の愛みたいに天衣無縫で誰にでも愛されるわけでもない。
長身と長い手足と、メリハリのある女らしい丸み。
鼻梁はすっと通っていて、吊り目がちなくっきり二重。ぽってりした紅い唇。
気分で変えている髪型は、今はショートボブでアッシュグレーのインナーカラー。
外見や才能には、恵まれたのだと思う。
小さい頃から可愛いだ美人だと持て囃されてきた。
ティーンズ誌のモデルとして活躍もしたし、そのままモデルは続けたくなくて会社勤めも嫌で、右も左もわからないままWeb広告の会社を立ち上げた。モデルの人脈と経験を活かして若い女性向けのWeb広告会社として、周りの助けが大きくて、上手くやっている。
だけど、恋愛で言うと、散々だ。
派手な見た目が災いしているのか、そういう女と見える要素が他にあるのか。
アクセサリー感覚で麗を見せびらかしたいなんてまだマシで、度重なる浮気や、付き合ってるつもりなのはあたしだけだったり、避妊せずヤろうとしたり。
叩かれそうになったりモラハラ発言には持ち前の気の強さで返り討ちにしたが、女王様と崇めて虐められたいM男には戸惑った。
…あれ、思ったより酷いな。
男運がないと思っていたが、これだけ重なると原因は自分なんだろうと察せるくらいには冷静だ。
悔しい想いもたくさんしているし、人一倍努力もしているはずなのに、評価されるのは外見と才能ばかり。
優のように控えめで誰に対しても人当たりがよければ、大切に扱われるんだろうか。
愛みたいに可愛げがあって甘え上手なら、ワガママも許されるのだろうか。
あーあ、いくら羨ましいと思ったところで、あたしはあたしでしかいられないのに。