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ジャニ狩り

作者: 月識 隣愛
掲載日:2023/08/25

 サブタイトル

復讐対象:男性アイドル事務所の代表取締役の老人Bパート

「さあキミィ!もうわかったよね!キミィのやること何の意味もない人に迷惑をかけるだけの『お遊び』だと!自分の馬鹿さ加減と身の程を思い知ったのならさっさとボクを解放しろ!」

 

 黄昏時の、誰もいない自動車工場で、コンクリートの柱にくくりつけられた老人と一人の青年が、話しにならない話をしていた。

  

 サングラスに、質の高い生地で作られたお洒落なカジュアルファッションを着こなしていたであろう老人が、全身青痣だらけでコンクリートの柱に縛り付けられて、うるさくわめいていた。

 

 青年は、黒い詰襟つめえり軍服調の装いをしていた。身長180センチはあろう鍛え上げられた身体に、鴉の塗れ羽色の長髪は一房に結って腰にまで伸び、長めの輪郭に肌の色は月明かりに照らされる雪のよう、冬の空のような灰と青の混じった瞳は生気を失った幽鬼のようだった。

 

「そうだ!キミィの大事なあの少年の具合も吸い付くように良かったんだ!身長が高いのは減点だが、キミィの具合もきっといいに違いない!どうだあ、ボクに愛されてみないかい?今なら全ての罪を見逃して、ステージのセンターに立たせてあげる!キミィのそのルックスならきっと世の女性たちがこぞって金を出す金の卵を産む鶏に「あ、虫」


 ぐぎゃああああああああああああああ!!!


 青年が、虫の生殖器官を杭を打つように踏みにじった。虫のかすれた野太い喚き声が木霊する。青年はさらにぐ~りぐ~りと煙草の火を消すように踏みにじる。



「ほらさあ、虫を踏みつぶす感触って嫌なもんだろう?かといってちゃんと踏みつぶさないと、意外と生きていたりするからちゃんと踏まないとダメだし、るならしっかりしないと」



 助けて!やめて!と虫が鳴き声を上げているが、青年はもう一分ほどぐりぐりしてから解放してあげた。

そしてガチャガチャと後ろの金属の資材の山から細長い棒みたいなものを取り出す。青年は、取り出した棒からなにか光り輝くものを抜き放った。


 それは、刀だった。振り回すのに邪魔にならないぐらいの長さで、波紋もなく、ただ武骨なにび色の金属の板に、殺傷力のある鋭利な刃がつくように研いだだけの代物だった。


 青年は刀を小枝のように振るい、虫のうしあしの膝から10センチぐらい上を骨ごとすぱっと両断した。


 虫がさっきよりもひと際うるさく鳴き喚いた。青年がタライを用意して、虫の切れた断面部分からでる赤い体液が床を汚しすぎないようにした。


「あーあ、つい、やっちゃったなぁ…血液コレってなかなか掃除しづらいのに…」

 

 しっぱい、しっぱい、と悪びれもなくいい、忘れていたとばかりに刀を振り上げ、下ろし、残った前肢まえあしを切ってあげた。

 

 いつの間にか、虫は生きてはいるけど、声を出さなくなっていた。

 

 最後に赤い泡を吹いて、ずれたサングラスから眼が魚みたいにぎょろっとしている頭部を、首の部分から仲間外れにしないようにしてあげた。

 勢いよく出ている蛇口に手を入れたときのように、虫の赤い体液が拡散した。


 


「さてと、これを水で晒して、タオルで拭いて、あとは…」


 青年は使い捨てのゴム手袋をして、老人だったものにホースの水を出しっぱなしにして掛け続けるようにすると、死臭のする部屋とは別の部屋に行き、その部屋にあったデスクトップパソコンを立ち上げた。


 青年の趣味ではない気取った装いのスマホ、ガラケー、今では珍しい、デジカメをパソコンに繋げてからデータを取り出す。


 パソコンを操作し一つのフォルダのアイコンにマウスのカーソルを当てて開くと、

 

           裸 裸 裸 裸 裸 裸 裸 裸

           裸 裸 裸 裸 裸 裸 裸 裸

           裸 裸 裸 裸 裸 裸 裸 裸

 

 年の若い、若すぎる少年たちが裸で、先ほどの解体された老人という虫に身体をぴったりとくっつけられたり、しかかられたりした画像が大量に、本当にありえないくらいに大量に出てきた。


 青年は眼を細めてゆっくりとその画像のフォルダを閉じ、他のフォルダを開いていく。同じような裸の少年たちの画像が出てくる。そうして、あるフォルダを開けたときに、青年は眼を見開いた。


 その画像は、中学生にまだなっていないような幼い年ごろに、くせ毛のある黒髪、線の細い美少女と見間違うような美少年が、後ろから両の手を掴んで引かれ、反りあがって突き出た腰に虫の股間を醜く当てられていた画像だった。美少年は泣きはらしてリンゴのように顔が真っ赤になっていた。

 

「クソ虫めが…」

 

 青年は、荒塩の塊を奥歯でぎりぎりとみ潰したような顔でそう言った。


 さらに下に少しスクロールしていくと、その美少年の画像がまとまって出てくる。


 美少年は最初の画像の方では、恐怖の顔と嫌悪の眼で口を閉じていた。

それが下の画像になるにつれ、だんだんと、ハッハッと息を荒げる犬のように口を開けるようになり、温かいシャワーに打たれるようにまぶたを閉じ、やがてスポーツで全力を出して楽しく遊べたときのような顔をするようになった。

 そうなっていくと同時に、髪の毛を白のような薄い金髪にめていき、化粧も濃く、派手になっていった。


 最期の方の画像になると、さっきつぶした虫だけでもなく、同年代のグループの少年、先輩のような青年に、事務所の取引相手やOBであろう大人たちとも同じような行為がされるようになっていった。

そう、それはまるで…

 

 ダンッ!


 デスクが乱暴に叩きつけられた。


「ごめんな…間に合わなくて、助けて、あげられなくて…」


 青年は、食いちぎるほど噛んだ唇と乱暴に打ち付けた拳から漏れる血を気にする様子もなく、パソコンを操作する作業に戻っていった。そうして、一通りの作業を終えてキーボードのエンターキーを押すと、その部屋の隣の部屋から機械がぶおんと音を立て始めた。

 

 そして、青年は死臭のする部屋に戻り、ばらばらにして流水に浸して体液の出なくなった虫の死骸を、機械音が鳴った部屋に運び込み、そこにあった台の上に頭部のパーツを乗せる。


 その次にパソコンの部屋に戻り、キーボードとマウスで遠隔に機械を操作した。レンズの付いた棒状の黒い機械からレーザーが、頭部パーツのひたい部分に照射され、当たった部分が煙を立てて黒く模様が焼き付けられていく。

 

 やがてそれは、日常でおなじみのスマートフォンのカメラで読み取る、正方形に打ち込まれた黒のドットで出来た模様で電子情報を表示する『二次元バーコード』になった。


 青年はその作業を、次に右前肢、その次に左前肢と、ばらばらにした虫の死骸のパーツそれぞれ全部にするように繰り返していった…



 そうして、夜も更けるころに作業が全部終わり、青年はビニール袋に前もって買ってあったぬるい缶コーヒーを取り出して飲み、やっと、一息をついたのだった。


                   *


 生きるのが精いっぱいなくらいに厳しい夏の暑さがなくなり、半袖を箪笥たんすにしまおうか悩むぐらいに涼しくなった秋の朝、都内の各地の駅で騒ぎが起こっていた。


 駅の地下通路の壁、ショッピングモールの入り口、電車内の中吊り、ホームに出る階段のサインボード、コンビニのファッション雑誌売り場、それぞれに老人の遺体の一部が吊るされる事件が発生した。

 それだけでも猟奇事件で恐ろしいことに間違いはないが、その部分に人々の注目は多くはなかった。

 

 それよりももっと、人々の眼を引く話題があったからだ。

 

 その遺体の身元は、国内で長年男性アイドルを輩出している有名なジャニムズ事務所の創設者にして代表取締役、芸能界の重鎮、『ジャニムズ苦多ぐた川』であるということ。

 

 その遺体に焼き付けられた二次元バーコードから、ジャニムズ苦多ぐた川が隠蔽してきた賄賂や脱税などの悪事の数々、なによりも、事務所所属の男性アイドルにデビュー前から行っていた性虐待のこと細やかな詳細のデータが発見されたからだ。


 その情報は生活に浸透しているソーシャルネットワーキングサービスを通して拡散され、ネット上で大きな話題となった。

その話題の中心となった男性アイドル事務所は、ネット上の人々の手により大々的に攻撃された。


 だがテレビでは意外なほどに、この事件の二次元バーコードの部分や青年アイドル事務所の悪事は報道されなかった。


 せいぜい、アナウンサーがニュースのテロップを読み上げるだけで終わるか、要約すると『猟奇的な事件が起こりました。犯人は捕まってないのでみなさん気を付けてください。犯人はひどいやつだ』みたいな味気のないことしか報道されてなかった。


 現実では、警察や司法の手が入ることはないのかもしれない…入ったとしても、軽い刑罰で済まされる。


 けれども、熱しやすく冷めやすい人々はすぐに別の話題に夢中になって、あるいは眼をそらして、本当に厳罰されるべき悪人の罪をすすごうとしない。


 その結果、悪人をみそぎもしないけがれた身体とたましいのまま、ベッドの上で安らかに永眠させる。

 一番にやってはいけない悪事のボランティア活動をしてしまうことで、自分たち自身も穢れていっていることを理解できないのだ。

 そうして、今日も娑婆しゃばは廻る。


                   *


「ま、こんなもんか」


 都内の広い公園で、一人の青年がベンチに座ってスマホのネットニュースを眺めていた。青年はどこにでもいそうなサラリーマンの恰好をしており、自分の横の席に鞄と缶コーヒーと取っ手と蓋の付いたとう編み製のバスケットを置いていた。

 

 青年はスマホを鞄に入れ、バスケットを開ける。バスケットには色とりどり、種類とりどりの専門店で買ったかのようなドーナツたちが詰められていた。

 

 青年はバスケットからそれを一つ指でつまんで、ぱくっと一口食べた。そして、粘土を食べた子供のような顔をした。


「やっぱり、うまくないなぁ…でも、腹が減っては戦はできないし…次作るときは前のレシピに戻してみるか」


 そういって一口食べたドーナツの残りを口に入れ、ぬるい缶コーヒーで一気に流し込む。


 食べ終わったら青年はすぐに荷物を纏めて、ベンチから去っていった。舗装され感情のない顔と声で独り呟く。


「まずは一人目。やるべきこと、為すべきこと、この世にいてはいけない相手はまだまだいる。ひとつひとつ、ていねいに、ていねいに、っていこう」


 復讐者の狩りは、始まったばかりだ。


ここまで読んでくださりありがとうございます!

 書いたはいいものの、いろいろと怒られそうです。まあ、書くし書いたけど。R-18表現に引っかからないといいなあ。


 パートBにしたのは、本当は連載の中でキノの旅みたいにパートAを途中で出す予定でしたが、作者は作品の途中の展開を考えるのが時間がかかるので、ひとまず短編にしました。


 筆も早くはないけど短編を増やしていきたい。その中でうまく伸ばせれるのがあったらやってこうかなと思っています。


蛇足:QRコードって愛知県の会社さんが作った日本の技術で商標名だと知らなくて書くときびっくりました。

 

 


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