みんなが僕を無視する法律が出来たのでHな事をたくさんしちゃう♪
「デュフフフフ!」
突然。教室に入ってきたハゲデブ親爺は柱谷。
世界無視法によって存在を消された男。
「……」
教師も生徒も何事も無かった様に振る舞う。
そりゃそうだ。世界無視法に逆らって柱谷に話しかけたりしたら一家皆殺しにされるんだから。
「ミカちゃあん。おじさん。ずーっと君のこと気になってたんだぁ……ふぅ。ふぅ」
「ひっ!」
ミカっ!
柱谷は俺の双子の妹のミカの後ろから胸をもみしだいた。
「乳首ちゃんも触っちゃうよぉ?ふひっ!ふひっ!」
クソジジイ!殺してやる!
「ひーひっひっ!この先みーんな僕のことを無視するならHな事いーっぱいしてやるんだい!」
・
・
・
「ミカぁ!」
部屋の扉を開けて入るとベッドの上で全裸になって寝かされているミカと汗だくで服を着替えている柱谷がいた。
「おに……いちゃん」
ミカの瞳に光はない。ヤラれちまったのかよ。
「はぁ。スッキリしたよぉ。お・に・い・ちゃん♪ふぅ〜。おじさんの初めてミカちゃんにあげちゃった♪初めてなのに僕すっごい上手に出来たよぉ?」
テメェ。テメェテメェテメェ!
柱谷ぃぃ!!
「……これはひとり言だ。あくまで俺のひとり言だ」
「ふひっ?」
「いつかテメェに直接『礼』してやっかんな……」
「ふひひひひひ!楽しみにしてるよーーん!」
・
(君たちに金は無いのだろう?)
(……)
(じゃあ仕方がない。勝手にやってしまおう。今ならば自由に。金を貰わずにやってしまっても協会も警察も誰も何も言わない。不幸中の幸いという奴だね)
(……)
・
『世界無視法を廃止する!』
無視法が廃止されたこの日。多くの死刑囚が生まれた。
無視された人間はみんな。無視法を盾にして好きにやり過ぎた。
……たった一人を除いて
・
私は古びた医院にSPも着けずにやってきた。
SPなんかいなくてもいまやここは世界一安全な場所だろう。
彼を崇拝するありとあらゆるプロフェッショナルや権力者がここに集っているのだから。
私もその一人になるわけか。
「はーい。次の方。どうされましたか?」
「……先生」
何十年かぶりに見る柱谷先生の笑顔はあのときと変わらない。
「おや?これは世界大統領。こんな場所に何か御用で?」
私は号泣しながら先生の前に跪いた。
「先生!」
・
(『触診』の結果。やはりミカちゃんの胸には新種の腫瘍が出来ている。かなりの悪性で一刻も速く手術せねばならない)
(……)
(私にやらせてくれ。確かにこの病気の手術は禁止されている。私にとっても初めての手術だ。だが私は医師としてミカちゃんを見捨てる事なんて出来ない)
(……)
・
「……先生がいなければミカは死んでいました」
「ああ。何だ。君はあの時の?世界大統領になったか。すごいねぇ」
先生は全世界から無視され続けながらも『Hなこと(HELP)』を止めなかった。
……何の見返りも求めず
「……やっと約束通り『直接お礼を』言えます」
先生はニッコリ笑い。私が(きっとこう言うだろう)と予測した言葉をそのまま言った。
「なぁに医師として当然のことをしただけだよ」